11 / 106
9話
しおりを挟む
昼食を早めに軽く取り、デリオン殿下の誕生会の準備をはじめた。ドレスの色はリボンの少ない薄水色、髪型はいつものポニーテールにサイド編み込みを入れてもらった。
「マリーナお嬢様、どうでしょうか?」
「わっ、かわいい! ありがとう、パレット」
姿見の前でくるりと回った。
(こんなに可愛かったら、乱暴者って言えないでしょう! ……多分)
パレットが下がり、私は屋敷の前で待っていた御者の手を借りて馬車に乗り込み、今から1時間半かかる王都に1人で向かう。
(少し怖いけど、王城にはお父様もお母様もいる)
デリオン殿下のプレゼントに、ウサギの刺繍を入れたハンカチも持ったし、キレイなドレスと髪型も決まった。
――行くぞ! 王城へ!
屋敷から何事もなく、1時間半かけて王都についた。王都に入る門を抜けて、中央にそびえ立つ王城へと向かう私が乗る馬車の前には、何台もの馬車が並んでいた。
(これら全て、デリオン殿下の誕生会に向かう馬車なの?)
あまりの場所の多さに、交通渋滞に驚くしかない。馬車を操縦する御者は中と繋がる小窓を開け「お嬢様、もうしばらくお待ちください」と言った。
「ありがとう。この馬車の数だもの、気にしなくていいわ」
御者はこの渋滞で、私が退屈して暴れないか心配したのかも。だが、もう前のように暴れたりしない。自分が乱暴になればなるほど周りは私を嫌い、私への対応がキツくなるはず。
そうなれば、あの日見た夢なように騎士達に捕まるかも知れない。デリオン殿下との婚約破棄後。国外追放ならまだいいが、牢屋行きとかは避けたい。
(他の乙女ゲームでたくさん悪役令嬢の悲惨な……婚約破棄後の後日談を見てきたもの)
ただ何事もなく両親とジロウ、使用人達とのんびり暮らしたい。結婚は婿養子に入ってくれる人がいれば、誰でもいい。
「マリーナお嬢様、王城に着きました」
「は、はい! ……ここまで、ご苦労様ありがとう」
乗る時と同じく御者の手を借り降りた。周りの馬車からは着飾った私と同じくらいの子供が降り、両親と手を取り中へと入っていった。
(庭園の場所が分からないし、後について行けばいいかな?)
その家族の後について行こうとしたが、城への入り口に、お母様の聖獣"ジロウ"が待っていてくれた。
《お嬢、庭園まで案内する》
「あ、」
私の"ありがとう"の言葉は、ジロウによって止められる。どうしてか分からず、首を傾げた私に。
《今、ここでお嬢が普通に話すと、変に思われるぞ》
周りを見ると他の貴族がジロジロ私を見ていた、そしてヒソヒソ話が聞こえてきた。
「あの子、カッツェ公爵家のマリーナ様じゃない?」
「あの乱暴者の?」
「マリーナ様も、デリオン様の誕生会にお呼ばれしたのね」
「誕生会で、暴れないといいが」
マリーナの酷評が飛ぶのは仕方のないこと。前のマリーナはそうだったけど――今のマリーナはそんなことしない。
「行きましょう、ジロウ(小声で伝えた)」
《ああ、行こう》
私は微笑んで会釈して、ジロウの案内で庭園に向かったのだった。
「マリーナお嬢様、どうでしょうか?」
「わっ、かわいい! ありがとう、パレット」
姿見の前でくるりと回った。
(こんなに可愛かったら、乱暴者って言えないでしょう! ……多分)
パレットが下がり、私は屋敷の前で待っていた御者の手を借りて馬車に乗り込み、今から1時間半かかる王都に1人で向かう。
(少し怖いけど、王城にはお父様もお母様もいる)
デリオン殿下のプレゼントに、ウサギの刺繍を入れたハンカチも持ったし、キレイなドレスと髪型も決まった。
――行くぞ! 王城へ!
屋敷から何事もなく、1時間半かけて王都についた。王都に入る門を抜けて、中央にそびえ立つ王城へと向かう私が乗る馬車の前には、何台もの馬車が並んでいた。
(これら全て、デリオン殿下の誕生会に向かう馬車なの?)
あまりの場所の多さに、交通渋滞に驚くしかない。馬車を操縦する御者は中と繋がる小窓を開け「お嬢様、もうしばらくお待ちください」と言った。
「ありがとう。この馬車の数だもの、気にしなくていいわ」
御者はこの渋滞で、私が退屈して暴れないか心配したのかも。だが、もう前のように暴れたりしない。自分が乱暴になればなるほど周りは私を嫌い、私への対応がキツくなるはず。
そうなれば、あの日見た夢なように騎士達に捕まるかも知れない。デリオン殿下との婚約破棄後。国外追放ならまだいいが、牢屋行きとかは避けたい。
(他の乙女ゲームでたくさん悪役令嬢の悲惨な……婚約破棄後の後日談を見てきたもの)
ただ何事もなく両親とジロウ、使用人達とのんびり暮らしたい。結婚は婿養子に入ってくれる人がいれば、誰でもいい。
「マリーナお嬢様、王城に着きました」
「は、はい! ……ここまで、ご苦労様ありがとう」
乗る時と同じく御者の手を借り降りた。周りの馬車からは着飾った私と同じくらいの子供が降り、両親と手を取り中へと入っていった。
(庭園の場所が分からないし、後について行けばいいかな?)
その家族の後について行こうとしたが、城への入り口に、お母様の聖獣"ジロウ"が待っていてくれた。
《お嬢、庭園まで案内する》
「あ、」
私の"ありがとう"の言葉は、ジロウによって止められる。どうしてか分からず、首を傾げた私に。
《今、ここでお嬢が普通に話すと、変に思われるぞ》
周りを見ると他の貴族がジロジロ私を見ていた、そしてヒソヒソ話が聞こえてきた。
「あの子、カッツェ公爵家のマリーナ様じゃない?」
「あの乱暴者の?」
「マリーナ様も、デリオン様の誕生会にお呼ばれしたのね」
「誕生会で、暴れないといいが」
マリーナの酷評が飛ぶのは仕方のないこと。前のマリーナはそうだったけど――今のマリーナはそんなことしない。
「行きましょう、ジロウ(小声で伝えた)」
《ああ、行こう》
私は微笑んで会釈して、ジロウの案内で庭園に向かったのだった。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと
淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。
第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品)
※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。
原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。
よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。
王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。
どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。
家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。
1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。
2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる)
3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。
4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。
5.お父様と弟の問題を解決する。
それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc.
リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。
ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう?
たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。
これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。
【注意点】
恋愛要素は弱め。
設定はかなりゆるめに作っています。
1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。
2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる