三十歳、アレだと魔法使いになれるはずが、異世界転生したら"イケメンエルフ"になりました。

にのまえ

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 毎日、出勤前に見る洗面所で俺は思う。

 ーーできるなら、イケメンに生まれたかったな、と。

 フツメンでは彼女ができても、優しい人と止まり。

「お前、いい奴だから、すぐにいい人見つかるって」
「ハハッ、イケメンのお前にだけは言われたくない!」

「そういうなよ。もうすぐ誕生日だろ? 仕事帰りにいい所に連れて行ってやる」
  
 笑った顔がイケメンだし、気がきく、いい奴だ。
 俺が女性だったら、惚れて、抱かれていたかもな。


 後日、仕事の後、いい酒が飲める店に連れて行ってくれた。
 さすが、モテるやつは違うぜ。


(お前ならすぐにいい人が出来るって! 可愛い彼女持ちのコイツに、何度おなじ言葉を聞いただろう?)

 まあ、原因はわかっている――女性を前にすると緊張して、
 面白く、気の利いた話と、スマートにエスコートできない。


 ――三十まで童貞だと、魔法使いになれるらしい。


 そんなことを三十になる誕生日に、会社の同僚は笑いながら俺に教えた。


 ――嫌がらせだろうが、魔法使いはいいな。
 ――いっそうのこと、俺は魔法使いになってやる!


 ってな、そんなアホな事を考えて、次の日の仕事終わりに。
 発売日のライトノベルを本屋で買った帰り、信号無視、暴走した車が突っ込んできて、俺はあっけなく逝った。



 おい、おい、おい、ち、ちょっ――――と、まってくれよぉ――! 



△△△


 
 気付いたら、赤ちゃんになっていた。

 車にひかれて、俺は異世界に転生したのかと……さっき買ったライトノベルと同じで、ベタベタな展開だと。赤ちゃんベッドの上でグルグル回る、木製の玩具をみながら考えていた。


 ーーお、誰かきた。


 ベッドに近付く足音がして、グリーンの長い髪と瞳のイケメンがを覗いた。

「ローリスは元気にしていたか?」
「うあー(イケメンだなぁ)」
「そうか、元気か」
「ええ、よく食べて、よく寝て元気よ」

 俺はローリスと言うのか……
 おお、もう一人は壮絶美女! この二人とも耳が長い――これは森の妖精エルフなのか!

(うぉおぉぉ―――きたぁ、美男美女だとすると、俺は生まれながらにしてイケメンか!)

 ぜってぇ、イケメンだ!!
 ヒャッホウ!!

 三十まで童貞だと魔法使い(エルフだけど)になるって、あの噂は本当だったんだな……




 俺が生まれたのは、サンチェという大きな森のなかにある、サグラードというエルフの村だ。

 そのサグラードの真ん中にはアルベロという樹齢何百年という、ぶっとい樹木が中央に生えている。この木の周りに螺旋階段のような階段が掘られていて、木のテッペンまで登れる。
 
 樹木はエルフの象徴で、テッペンは見張り台になっていて、大人のエルフは交代でアルベロのテッペンで、夜な夜な見張りをしている。

 ウチのラカ父さんも見張り番の板が回ってくると、樹木に登って見張りをする。五歳の時に一度だけ、樹木のテッペンまで連れて行ってもらった。

 父さんは森を見渡しながら、

「ローリスも大きくなったら、ここで見張りをするだぞ」
「うん!」

 美男美女の両親から生まれた俺はイケメン、エルフ。
 そんな俺にも欠点があった……それは極度の方向音痴だ。


 五歳までは両親と一緒にいたから、気がつかなかった。
 六歳になりエルフの学校が始まってから、それはわかった。


 六歳、一人で近くの森に遊びに行き、家に帰ろうとして森をさまよう。三日後、両親によって見つかる。

 ――コッソリ練習していた魔法(ウォーター)と、森の恵みで飢えを凌いだ。

 七歳、一キロ先の先の獣人の村に着く……初めてみる獣人に驚き、その村の戦士にホクホク顔で手を引かれて帰ってきた。

 ――獣人もイケメン、美女が多かった。

 八歳、エルフと仲が悪いとされるドワーフの洞窟に着く、ドワーフのおっちゃんと意気投合して、おもちゃの刀を貰い連れてきてもらった。

 
 おかしい、ちゃんと家まで帰っているのに、気付けば別の場所にいるんだ……不思議だよね。


 そんな俺を両親は心配した。

「あなた、ローリスがこのままだと、人間に捕まるわ」
「そうなると、不味いな」

 方向音痴の俺に両親は悩み、首にローリス、サグラード村のエルフと、書かれた迷子札をかけられて、


「ローリス、明日から隣のミチちゃんが学校と家の、送り迎えしてくれるからね」


 ーーそれはマジか。

 こともあろうか両親はお隣の幼馴染で、一つ下のミチにお願いしたいた。学校の行き帰り、俺がはぐれないようにミチと手をつないでいる。

 村のみんなが微笑んで、俺たちを見ている。
 俺――外見は六歳だが、中身は三十のオッサンなんだよ!

 最初は女の子と手を繋げる! とドギマギしていたが、歳をとるにつれて、ミチの嫌そうな顔と、周りの冷やかしも正直つらい。

 俺が十歳になると、ミチは。

「もうやだ! 今日は友達と帰る」

 そう叫び、ミチは友達と帰ってしまった。


 そうなるよね……俺のせいで友達と遊べない、ミチも年頃の娘だ、女の子達と一緒がいいよな。


(俺も一人で大丈夫だ!)

 家まで帰ろうとして何故か俺は、村一番高い、アルベロの見張り台に立っていた。

「…………ここにくる前に、気付かないのか、オレ!」

 ……ほんとう、嫌になるくらいの方向音痴だ。
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