22 / 110
21
しおりを挟む
薬草を摘みにカサロ湖に来ている。ここは凶暴な魔物が出る森の水辺のほとり、ほかの冒険者はあまり立ち寄らないから、珍しい薬草が生えている。
「パパ、ママ、ミル草がたくさん生えてるよ!」
「チェルは見つけるのが、早いわね」
「こら! 2人ともボクから離れるな」
いくら強いフェンリルのシシが側にいるからと。凶暴な魔物がでるカサロ森の湖に来ていることを忘れて、はしゃいでしまう私とチェル。
「チェル、待ちなさい!」
「チェル!」
私も家の外に出ると、肌にピリピリと刺すような魔物たちの殺気を感じる。それが人一倍敏感なシシは私達を守るため神経質になっている。
私と出会った頃のシシは「僕はいつ死んでも構わない、強い敵と戦いたい!」と言った。だけど、チェルが生まれたいまでは「僕は家族を守りたい」「アーシャ、チェルと過ごしたい」と言ってくれる。
(私も、大好きなシシ、チェルと穏やかに過ごしたいわ)
前を走るチェルを抱きしめて、私達を守ってくれる優しいシシに一緒に抱きついた。
「パパ、だいすき!」
「シシ!」
「アーシャとチェルが抱きしめてくれた、うれしいなぁ! さぁ、ミル草摘みの続きを始めよう」
コクンと頷き、家族で仲良くミル草を採取をはじめた。
3人で協力して、ポーションに必要な分のミル草摘みは終わり。シシとチェルは「行くぞ!」と服を脱ぎフェンリルの姿になると、カサロ湖の周りを仲良く親子でかけっこをはじめた。
「パパ、待て!」
「チェル、こい!」
「パパ!」
楽しいひとときは終わり。湖から戻ったチェルは今日のお出かけと、よほどパパとのかけっこが楽しかったのだろう。お昼ご飯中も楽しく話し、食べ終わるとウトウト、お気に入りのフェンリルのぬいぐるみと一緒にソファで眠ってしまった。
「よほど、お出かけが楽しかったんだな」
「ええ、また時間を作っていきましょう」
シシがチェルを抱っこして、部屋に寝かせに向かい。私は調合室で新鮮なミル草を使い、ポーションを作りはじめた。
ポーションはミル草をポーション壺という魔導具に入れて、魔法水と魔力を流しながら煮詰める。いまの時間から5時間くらいポーション壺で煮詰めて、冷やせばポーションが出来上がる。
(今日はたくさんのミル草が採れたから、かなりの数のポーションが作れるわ。そうだ、ポーションを入れる瓶の在庫はあったかしら?)
調合室で1時間くらい作業をしていた。――そこにチェルを寝かせたシシが、紅茶と作り置きのクッキーを持って現れる。このクッキーには魔力を回復する薬草が練られている。
「アーシャ少し休んで、ボクと変わろう?」
「ありがとう、少し休むわ」
調合室のソファーに座り、シシが入れてくれた紅茶とクッキーをかじった。すぐに魔力の回復を感じる……このカサロの森の奥にしか咲かない、珍しいショーラル花を使って作ったクッキー。
シシと交代で魔力を込めながらポーションを煮込み。――5時間後出来上がったポーションを魔法で冷やして、特殊な糸で編まれた魔道具の布でこして、専用の瓶へと移していく。そして瓶の在庫分、70本ものポーションが出来た。
ギルドの受付嬢が言っていた100本は流石に無理なので、ここから40本ほど冒険者ギルドに納品することにした。
残りのポーションは浄化の旅ようだから、さらに魔力を込めて最上級のポーションにして、区別できる様に印をつけた。
「ポーションは、これで完成ね!」
出来上がったポーションを見つめていると、ソファで休んでいたシシがそばに来る。
「アーシャ、この30本……もしかして、最上級のポーション?」
「えぇそうよ。これは納品用じゃないから、わかる様に印を付けておいたわ」
「そっかお疲れさま。……ふわぁっ、疲れたな。しばらく寝室で一緒に仮眠を取ろうか」
シシはそう言い、私を軽々お姫様抱っこすると寝室へと向かった。
「パパ、ママ、ミル草がたくさん生えてるよ!」
「チェルは見つけるのが、早いわね」
「こら! 2人ともボクから離れるな」
いくら強いフェンリルのシシが側にいるからと。凶暴な魔物がでるカサロ森の湖に来ていることを忘れて、はしゃいでしまう私とチェル。
「チェル、待ちなさい!」
「チェル!」
私も家の外に出ると、肌にピリピリと刺すような魔物たちの殺気を感じる。それが人一倍敏感なシシは私達を守るため神経質になっている。
私と出会った頃のシシは「僕はいつ死んでも構わない、強い敵と戦いたい!」と言った。だけど、チェルが生まれたいまでは「僕は家族を守りたい」「アーシャ、チェルと過ごしたい」と言ってくれる。
(私も、大好きなシシ、チェルと穏やかに過ごしたいわ)
前を走るチェルを抱きしめて、私達を守ってくれる優しいシシに一緒に抱きついた。
「パパ、だいすき!」
「シシ!」
「アーシャとチェルが抱きしめてくれた、うれしいなぁ! さぁ、ミル草摘みの続きを始めよう」
コクンと頷き、家族で仲良くミル草を採取をはじめた。
3人で協力して、ポーションに必要な分のミル草摘みは終わり。シシとチェルは「行くぞ!」と服を脱ぎフェンリルの姿になると、カサロ湖の周りを仲良く親子でかけっこをはじめた。
「パパ、待て!」
「チェル、こい!」
「パパ!」
楽しいひとときは終わり。湖から戻ったチェルは今日のお出かけと、よほどパパとのかけっこが楽しかったのだろう。お昼ご飯中も楽しく話し、食べ終わるとウトウト、お気に入りのフェンリルのぬいぐるみと一緒にソファで眠ってしまった。
「よほど、お出かけが楽しかったんだな」
「ええ、また時間を作っていきましょう」
シシがチェルを抱っこして、部屋に寝かせに向かい。私は調合室で新鮮なミル草を使い、ポーションを作りはじめた。
ポーションはミル草をポーション壺という魔導具に入れて、魔法水と魔力を流しながら煮詰める。いまの時間から5時間くらいポーション壺で煮詰めて、冷やせばポーションが出来上がる。
(今日はたくさんのミル草が採れたから、かなりの数のポーションが作れるわ。そうだ、ポーションを入れる瓶の在庫はあったかしら?)
調合室で1時間くらい作業をしていた。――そこにチェルを寝かせたシシが、紅茶と作り置きのクッキーを持って現れる。このクッキーには魔力を回復する薬草が練られている。
「アーシャ少し休んで、ボクと変わろう?」
「ありがとう、少し休むわ」
調合室のソファーに座り、シシが入れてくれた紅茶とクッキーをかじった。すぐに魔力の回復を感じる……このカサロの森の奥にしか咲かない、珍しいショーラル花を使って作ったクッキー。
シシと交代で魔力を込めながらポーションを煮込み。――5時間後出来上がったポーションを魔法で冷やして、特殊な糸で編まれた魔道具の布でこして、専用の瓶へと移していく。そして瓶の在庫分、70本ものポーションが出来た。
ギルドの受付嬢が言っていた100本は流石に無理なので、ここから40本ほど冒険者ギルドに納品することにした。
残りのポーションは浄化の旅ようだから、さらに魔力を込めて最上級のポーションにして、区別できる様に印をつけた。
「ポーションは、これで完成ね!」
出来上がったポーションを見つめていると、ソファで休んでいたシシがそばに来る。
「アーシャ、この30本……もしかして、最上級のポーション?」
「えぇそうよ。これは納品用じゃないから、わかる様に印を付けておいたわ」
「そっかお疲れさま。……ふわぁっ、疲れたな。しばらく寝室で一緒に仮眠を取ろうか」
シシはそう言い、私を軽々お姫様抱っこすると寝室へと向かった。
89
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます
れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦))
*ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。
*他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる