浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。

にのまえ

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 カサロの森に戻りを、夕飯を作りながらシシとチェルの帰りを待っていた。「ただいま」と帰ってきた2人を迎えに出ると。ニコニコしながら、子フェンリルのままのチェルが、胸へと飛び込んできた。

「チェル、おかえりなさい。楽しかった?」

「ママ、ママ、すっごく楽しかった! あのね、ナナちゃんと、たくさん遊んできたよ」

 チェルが、お目目をキラキラさせて応える。
 ナナちゃんに会えて、嬉しかったみたい。

「それでね。ボクが書いた、お手紙も絵も喜んでくれた!」
 
「よかったわね」
「うん!」

 ――ああ、ウチの子かわいい。


「ただいま、アーシャ。チェル大興奮で、大喜びだったよ」

 シシは私の頬をスリスリして、人型に戻る。
 
「シシ、おかえりなさい。フフ、チェルの笑顔を見ればわかるわ。さぁ話のつづきは夕飯のときにしましょう。2人とも洗面所で、うがいと手を終わらせて、着替えてらっしゃい」

「「はーい」」

 2人が洗面所に向かったのを見送り、私はキッチンで夕飯のお肉ゴロゴロのミートソースパスタ、サラダ、スープを準備した。夕飯のあいだチェルは「あのね、あのね」とナナちゃんとの話をして、食事が終わる頃には疲れて眠ってしまった。

「チェル、疲れたのね。お風呂は明日入ればいいわ」
 
「そうだな。出会ったすぐ2人で森を駆け回って、お気に入りのぬいぐるみを見せて、お絵描きして。チェルとナナちゃんが笑うと。精霊たちも笑っていたよ」

 ――みんなが笑顔になれる森。

「精霊の地の瘴気が浄化されて。精霊たち、みんなに笑顔が戻ってよかった」
 
「ああ、よかった」

 
 夕飯の片付けを終えた後。シシからお父様とお母様へのお土産のフランをもらい、ジャム、砂糖漬け、ポプリ、チェルのお手紙、ほしい物リストと一緒に魔法ポストに入れて屋敷へ送り。今日の出来事を寝室でシシに話した。

「その助けた冒険者と商人に、顔は見られていないんだよね」

「それは、木陰に隠れていたから大丈夫。それよりも聞いて! シシの抜け毛の威力が凄かったの!」

「威力? ボクの抜け毛?」

「そうなの!」

 私は採取場での出来事を興奮気味にシシへと話した。話を聞いたシシは、一瞬キョトンとした表情を浮かべたが、いきなり大笑いしはじめた。

「シシ?」
 
「クククっ、アハハ――! ボクの毛が魔物を逃げさせた? だから寝る前のブラッシングのとき、楽しそうにボクの抜け毛を集めていたんだね」

「そうよ。丸くして紐をつけて、チェルのローブにも付けようと思ったの。危ないとき守ってくれるわ。……でも、なぜ? シシはそんなに笑うの?」

 フフッと、まだ笑うシシに聞いた。

「だってアーシャ。いくらボクでも、抜け毛に魔物を怯えさせる効果はないよ。魔物はアーシャの魔力の中に逃れる、ボクの魔力に怯えたんだ」

 ――え? シシの魔力?

「あっ、ああ――!! ……そ、そうかも」

 精霊の地の浄化で魔力を枯渇させ、シシに甘えた日を思い出した。私のいまの魔力にはシシの魔力も混じっている。――ちょっと考えればわかったのに興奮して話して……恥ずかしい。

 照れて、真っ赤になった私に。
 イジワルな笑顔で近付くシシ。

「ふ~ん、知らなかったなぁ、アーシャがボクの抜け毛を持っていたなんて。どうして?」

「……え? ……ひ、1人のときとか。寂しいときとか。採取に出たときとか、シシが側にいてくれる感じがするから、コッソリ集めたの! 私の宝物だから返さない!」

「返せなんて言わないよ。ただ嬉しいなって思ったんだ……それと。興奮して話すアーシャ。勘違いしたアーシャ。照れるアーシャ、どのアーシャもかわいい」

 シシが近付き、優しくキスをした。
 

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