浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。

にのまえ

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「すっかり、忘れていたわ――シシ、チェルをお願い」

 私は抱っこしていたチェルをシシに預けて、杖を取り出してオールの森を見つめた。これ以上、森から瘴気が漏れないよう、浄化魔法を使用する。

 だが、これは気休めにしかならない。
 この森の、瘴気の酷さはなに。

 ――森が、草木が、ここに住む動物が嘆いている。そして、5年前には気付かなかった別の力と、大きな力を感じた。……このオール森には精霊の地のように精霊がいるのか? 森の下には得体の知れない何が埋まっているのか。

(知りたい、そのためには……)

「もう一度、浄化魔法……」

「アーシャ、やめろ! 浄化魔法はいい……いま離れよう」

 シシも気付いたのか森を見つめ、眉をひそめた。
 そのシシの様子に。私はいま踏み込むべきじゃないと、杖をしまいコクリと頷く。

「ええ。いったんここを離れて、オールの森を詳しく調べないといけないわ。チェル、パパから離れてはだめよ」

「うん、パパから離れない!」
 
 瘴気が濃い、オールの森からいったん離れた。



 +
 


 私たちが離れた、オールの森の奥で。
 
「な、なんだ? いまの光は?」
「すこし、森の瘴気が消えたような気がします」
「我々に、助けが来たのか?」
「そうです、助けが来たのです!」
「そのモノはどこだ、どこに行ったぁ!」
 
 アーシャが放った浄化魔法は、森の瘴気をわずかだが薄くした。この濃い瘴気の中で、生き延びているモノがいた。

 

 +



 オールの森から離れてたアーシャたちは、別の原っぱを見つけ、この場所で野営とお昼ご飯を摂ることにした。今日のご飯はパンを使い、野菜と卵、お肉のサンドイッチに決めた。

 手伝おうとしたシシに頼み、オールの森の前でチェルを怖がらせたかもと。お昼が出来るまでのあいだ、チェルを連れて散歩に出てもらった。

(最後まで泣かなかった、チェルは偉いわ)

 チェルの好きな卵のサンドを多めに作ろうと。私はアイテムボックスから持ってきた調理器具と食材をだして、簡易魔法陣コンロで調理をはじめる。

 だけど、手を動かしながらも、さっきの森でのことを考えてしまう。前に騎士団がオールの森の遠征で、大型の魔物に襲われた……それを納得するほどの瘴気の濃さだった。

 そして、森には魔物のほかにも何か住んでいる。

(小説の続編を知らない、もどかしさはずっとあるけど……。ヒロイン、聖女ロローナは何をしているの? 私の浄化魔法よりも、聖女の力の方が上だと思うし。ロローナは聖女に覚醒してるはずなのだけど……)

 彼女の状況がわからないから。
 彼女への期待もできない。
 
 私でも時間をかければ浄化はできるけど、オールの森に住む何かまではわからない。――シシのあの表情は何か知っているのかな。

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