63 / 110
58
しおりを挟む
『魔吸い石』ユサーロンの国から商人が持ち込んだ、瘴気を吸う赤黒い魔石だ。
魔吸い石の実力を知った近衛騎士ラル・ローズキスと、騎士団長キル・スローガは皆が寝静まったあと。魔吸い石のランタンと、火を灯したランタンを持ちカサロの森へと入っていった。
この森に、アーシャ様がいることを確かめるため。しかし、奥に足を進めようとした、2人の前にオオカミの群れが現れた。これはシシが友達のオオカミたちに肉を渡して、森の見回りをしていてもらっているのだ。
「くっ、来るなぁ!」
「おい、キル剣を抜くな。奴らを刺激せず、ここは下がろう」
「そ、そうだな。夜はこちらが不利だ……明日の朝、また来よう」
2人はオオカミに恐れて、カサロの森から逃げて帰った。――もし、ここにシシがいたら。
『2度と来るな! 誰にも、ボクのアーシャは渡さないし、指一本触れさせないよ』
と、言っただろう。
浄化の旅の間も、シシは抜かりない。
オールの森のアーシャたちは南の『迷子防止の木』まで、浄化を進めていた。迷子防止の木の下の近くで昼食をとろうと、みんなでお昼の準備中だ。
「アーシャ。さっき狩った、ピヨピヨの肉を捌くか?」
「ええ、ピヨピヨのハツ(心臓)の周りは毒があるから、捌くときに気を付けてね」
ピヨピヨはニワトリに似た、大きさがダチョウくらいある鳥。さっき、浄化した湖で群をみつけて一羽、シシに狩ってもらった。
今からさばいて串にさして、塩コショウとタレの焼き鳥にしようと思う。ピヨピヨのお肉はジューシーで、噛めば噛むほどあふれる旨味がたまらない。
「チェル。この竹の串に、切ったお肉をさしてね」
「わかった。ママ、お肉をこうするの?」
「そう上手いわ、チェル」
「チェル、上手だぞ」
喜んで小さなお手で、一生懸命にお肉をさすチェル。それを見ながら私は、カマドでお肉を焼く。その横でコメを鍋で炊いていた。
「チェル、シシ! まだコメは炊けないから、先に焼けた焼き鳥を食べて」
「ああ、いただくよ。アーシャ」
「いただきます」
シシとチェルに差し出した焼き鳥を持った手が、迷子防止の木から突然出てきた手に掴まれて、私は木の中へと引きずり込まれた。
魔吸い石の実力を知った近衛騎士ラル・ローズキスと、騎士団長キル・スローガは皆が寝静まったあと。魔吸い石のランタンと、火を灯したランタンを持ちカサロの森へと入っていった。
この森に、アーシャ様がいることを確かめるため。しかし、奥に足を進めようとした、2人の前にオオカミの群れが現れた。これはシシが友達のオオカミたちに肉を渡して、森の見回りをしていてもらっているのだ。
「くっ、来るなぁ!」
「おい、キル剣を抜くな。奴らを刺激せず、ここは下がろう」
「そ、そうだな。夜はこちらが不利だ……明日の朝、また来よう」
2人はオオカミに恐れて、カサロの森から逃げて帰った。――もし、ここにシシがいたら。
『2度と来るな! 誰にも、ボクのアーシャは渡さないし、指一本触れさせないよ』
と、言っただろう。
浄化の旅の間も、シシは抜かりない。
オールの森のアーシャたちは南の『迷子防止の木』まで、浄化を進めていた。迷子防止の木の下の近くで昼食をとろうと、みんなでお昼の準備中だ。
「アーシャ。さっき狩った、ピヨピヨの肉を捌くか?」
「ええ、ピヨピヨのハツ(心臓)の周りは毒があるから、捌くときに気を付けてね」
ピヨピヨはニワトリに似た、大きさがダチョウくらいある鳥。さっき、浄化した湖で群をみつけて一羽、シシに狩ってもらった。
今からさばいて串にさして、塩コショウとタレの焼き鳥にしようと思う。ピヨピヨのお肉はジューシーで、噛めば噛むほどあふれる旨味がたまらない。
「チェル。この竹の串に、切ったお肉をさしてね」
「わかった。ママ、お肉をこうするの?」
「そう上手いわ、チェル」
「チェル、上手だぞ」
喜んで小さなお手で、一生懸命にお肉をさすチェル。それを見ながら私は、カマドでお肉を焼く。その横でコメを鍋で炊いていた。
「チェル、シシ! まだコメは炊けないから、先に焼けた焼き鳥を食べて」
「ああ、いただくよ。アーシャ」
「いただきます」
シシとチェルに差し出した焼き鳥を持った手が、迷子防止の木から突然出てきた手に掴まれて、私は木の中へと引きずり込まれた。
62
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
アンジェリーヌは一人じゃない
れもんぴーる
恋愛
義母からひどい扱いされても我慢をしているアンジェリーヌ。
メイドにも冷遇され、昔は仲が良かった婚約者にも冷たい態度をとられ居場所も逃げ場所もなくしていた。
そんな時、アルコール入りのチョコレートを口にしたアンジェリーヌの性格が激変した。
まるで別人になったように、言いたいことを言い、これまで自分に冷たかった家族や婚約者をこぎみよく切り捨てていく。
実は、アンジェリーヌの中にずっといた魂と入れ替わったのだ。
それはアンジェリーヌと一緒に生まれたが、この世に誕生できなかったアンジェリーヌの双子の魂だった。
新生アンジェリーヌはアンジェリーヌのため自由を求め、家を出る。
アンジェリーヌは満ち足りた生活を送り、愛する人にも出会うが、この身体は自分の物ではない。出来る事なら消えてしまった可哀そうな自分の半身に幸せになってもらいたい。でもそれは自分が消え、愛する人との別れの時。
果たしてアンジェリーヌの魂は戻ってくるのか。そしてその時もう一人の魂は・・・。
*タグに「平成の歌もあります」を追加しました。思っていたより歌に注目していただいたので(*´▽`*)
(なろうさま、カクヨムさまにも投稿予定です)
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(りょうが)今年は7冊!
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からなくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます
れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦))
*ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。
*他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~
夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」
婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。
「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」
オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。
傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。
オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。
国は困ることになるだろう。
だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。
警告を無視して、オフェリアを国外追放した。
国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。
ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。
一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる