浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と共に幸せに暮らします。

にのまえ

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 ドワーフのスノが懐から出した、手のひらサイズの真っ白な球を見て、微かだけど魔力とは別の力を感じた。スノと私の足が止まったのを見て、先頭をいくシシとアギも近寄ってくる。

「アーシャ、何かあったのか?」
「シシ、スノさんが持っている、真っ白な球を見てみて」

 シシは球を見る、私が抱っこしている子フェンリルのチェルも気になったのか、真似して一緒にのぞいた。しばらく見て、シシもなにか気付いたらしく私の瞳を見た。

(どうやら、シシも気付いたようね)

 シシは側で、アギと話すスノに。

「おい、スノ……この神球の神力がスッカラカン、切れてるぞ」
 
「お、シシも気付いたか。オレも今、スノにそう言っていた所だ」

(神球? 神力? もしかして、海の神ポストン様の力?)

 森の民と言われるエルフと巨大な怪物フェンリルは、この球に込められていた力を、神力だと言った。

「なに! 神力が切れている? ……そうじゃったから、今回の毒霧を防げなかったのだな、そうかそうか。前にポスと酒を酌み交わしたときに貰ったんじゃが、何年経ったら会いに来いと言ったかの? そのとき、そうとうわしは酔っ払っていて忘れてしもうたわ。ガハハ!」

 スノは豪快に笑った。
 そんなスノを、シシとアギの2人は「しっかりやれ」と、怒るのかと思ったが。

「やっぱり、忘れていたのか。やはり、そうか」
「あーオレも、スノの事は言えんな……すぐ何年も知らずに経っている」

「そうじゃろ。数年などあっという間じゃ」
 
 洞窟内に3人の笑い声が響いた。私は驚く――しかし、彼らは人よりも寿命が長い種族だからだろう、年数に無頓着(むとんじゃく)過ぎる。

「洞窟の点検が終わったら、すぐにでも会いに行ってやれ」
 
「そうだ。相手もスノのことを忘れているか、すごく御機嫌斜めかだな」
 
「うむ、それはありうるな。まぁ、うまい酒を持っていけば、ポスの機嫌もなおる」

 仲間のドワーフが倒れ、自分もいちばん濃い瘴気で倒れていたのに、まったく焦りが感じられない。だけどこれが、長き時を生きる者と寿命がある人との違い――今が楽しいだけに、少し寂しく感じてしまった。

「そこ――アーシャ、君たちも僕と同じだからね」

「え?」

 私の表情に気付いたのか、シシがおかしなことを言う。――あ、シシの力で生まれ、子フェンリルになれるチェルならそうかもしれない。なら、その力に助けられた私も同じ。

「僕の力で、アーシャの見た目が変わってしまったろ? いま怖くなって逃げても、逃がさないからね」

 意地悪く笑うシシに。
 私は微笑み。

「怖くなんてないわ、私とチェルは嬉しいだけよ。さぁ、洞窟の奥へ進みましょう」

 笑って、近く本音を告げた。

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