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時期は秋。朝晩、肌寒く感じるようになってきた。オレが住むミリーヌは王都ルーズベルトから、かなり離れた山間の町だ。
このミリーヌに冬が到来すれば、森に出るモンスターの数は極端に減り。森、野山に雪が降り積もれば薬草は雪の下に埋もれ。ミリーヌから近い冒険者たちが集う街、ローランの冒険者ギルドで受けられるクエストが極端に減る。
ギルドで仲間を募集している、パーティーに入れてもらえればいいが……戦闘が極端に下手で、オレの種族は弱いからと、なかなかパーティーに入れてもらえないし。パーティーの荷物持ち、雑用係をするにしても力不足。
食堂の昼休み、オレは店裏で空を見上げて。
ハァ……どうすっかなぁ。と呟いた。
冬の間。冒険者としての収入が少ない、オレの資金源は熊クマ食堂のバイト代だけになる。ぶっちゃけ食べ物だとか、クマクマ食堂の二階を借りて住んでいるから、住む場所は困らないが。オレにとって必要な薬が買えなくなるのはキツイ。
(長い冬の休みに入ったら……短期集中の鉱山バイトか、倉庫で荷物運びの仕事でも探すかな……長期の仕事はできねぇし)
オレはスラックスのポケットを探り、透明な小瓶を取り出し振って中身を確認した。透明なビンの中で、白い小さな錠剤がカランカランと3粒踊った。
「ゲッ! 残り3粒しかねぇ。……マズイな、昼休みのうちに買いに行くか」
重い腰を上げて、奥の休憩室で休憩しているクマ熊食堂の、クマの獣人マヤさんに声をかけた。
「マヤさん! ルナール調合店に行ってきます」
「調合店? わかった、気を付けて行っておいで。何かあったら、その俊足で店まで逃げなさい」
「そうだ、タヤの俊足で逃げろ」
一緒に休憩していたのか大将、マヤさんと同じクマ獣人族のシンギさんの明るい声まで聞こえた。
「ありがとう、わかってるよ! 危なくなったら俊足で逃げてくる。いってきます!」
「「いってらっしゃい」」
2人に見送られ、くたびれた紺色のジャケットを羽織り、首のチョーカーを隠すように真っ白なマフラーを巻いて。顔馴染みのルナール調合店へと向かった。
いまからオレが向かう、ルナール調合屋というのは。ちょー貴重な薬師の資格を持つ、キツネ族のサロンナばあさんが営んでいる調合店。
その店の場所はミリーヌ町の中央にある、ココナ商店街の奥に建つ古びた木造の風格のある店だ。
一言で言うと単にボロい。その店の前には……招き猫じゃなく招きキツネ? の置物が置かれている。
ばあさんの店の入り口は立て付けが悪く、入るのにコツがいる店の引き戸を開けると。年代物の古い真鍮のドアベルがカランコロンと鳴り、独特の香りがオレの鼻をくすぐった。
グッ……いつ来ても、ここは薬草の匂いしかしない。まあ調合屋だから仕方がないが。オレはサロンナばあさんがレジにいるのかと探すが、姿が見当たらない――店の奥で昼寝でも、してるのか?
「サロンナばあさん? いないの?」
「…………」
(出掛けて、いていないのか?)
ばあさんの店は薬草臭いが。ココナ商店街でいち番古くレトロな造りの店。薬を量り売りするための天秤、ラベルが剥がれかけの薬の瓶、小箱が並んだ薬箱。ところ狭しと薬瓶が置かれた木製の薬棚並び。モンスターから取れる魔石を使用した、魔導具のランタンの灯がともり。店の中を鉄製の魔石ストーブが暖めている。
(いくら安全だからって、ストーブつけっぱなしで出掛けたのか? ……クンクン、今日はやけに独特な薬品と薬草の匂いがするな。もしかして調合室で薬でも作ってる?)
ばあさんは調合中か、それじゃ邪魔できないな。仕方がない……夕方で直すかと帰ろうとしたオレを、調合室から顔を出してばあさんが呼び止めた。
「待て、タヤ。もうすぐ調合が終わるから……待っていてくれ」
「ああ、わかった」
サロンナはそれだけ言うと、すぐ調合室に戻っていった。珍しく急ぎの依頼が入ったのか。……ん? オレは近くの薬棚に目をやった「メガヨクミエール」「コエガトール」相変わらずネーミングセンスにオレは微笑した。
だがサロンナが仕立てる薬はよく効くし、値段が安い。調合に必要な薬草を持ち込めば、更に安く調合してくれる。
――あの"女神より"も、オレにとっては女神的な存在だ。
(この薬はお腹が痛くナクナールか……ククッ)
今日、オレが求めに来たのは抑制剤。この国には男女のほかにα(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)という3つの性がある。その中でオレはオメガといって月一に1週間程度の発情期(ヒート)がくる。
はじめてオレがヒートになったとき――熊クマ食堂のシンギと一緒になって助けてくれて、オメガの詳しい説明をしてくれたのはサロンナばあさんだ。
このミリーヌに冬が到来すれば、森に出るモンスターの数は極端に減り。森、野山に雪が降り積もれば薬草は雪の下に埋もれ。ミリーヌから近い冒険者たちが集う街、ローランの冒険者ギルドで受けられるクエストが極端に減る。
ギルドで仲間を募集している、パーティーに入れてもらえればいいが……戦闘が極端に下手で、オレの種族は弱いからと、なかなかパーティーに入れてもらえないし。パーティーの荷物持ち、雑用係をするにしても力不足。
食堂の昼休み、オレは店裏で空を見上げて。
ハァ……どうすっかなぁ。と呟いた。
冬の間。冒険者としての収入が少ない、オレの資金源は熊クマ食堂のバイト代だけになる。ぶっちゃけ食べ物だとか、クマクマ食堂の二階を借りて住んでいるから、住む場所は困らないが。オレにとって必要な薬が買えなくなるのはキツイ。
(長い冬の休みに入ったら……短期集中の鉱山バイトか、倉庫で荷物運びの仕事でも探すかな……長期の仕事はできねぇし)
オレはスラックスのポケットを探り、透明な小瓶を取り出し振って中身を確認した。透明なビンの中で、白い小さな錠剤がカランカランと3粒踊った。
「ゲッ! 残り3粒しかねぇ。……マズイな、昼休みのうちに買いに行くか」
重い腰を上げて、奥の休憩室で休憩しているクマ熊食堂の、クマの獣人マヤさんに声をかけた。
「マヤさん! ルナール調合店に行ってきます」
「調合店? わかった、気を付けて行っておいで。何かあったら、その俊足で店まで逃げなさい」
「そうだ、タヤの俊足で逃げろ」
一緒に休憩していたのか大将、マヤさんと同じクマ獣人族のシンギさんの明るい声まで聞こえた。
「ありがとう、わかってるよ! 危なくなったら俊足で逃げてくる。いってきます!」
「「いってらっしゃい」」
2人に見送られ、くたびれた紺色のジャケットを羽織り、首のチョーカーを隠すように真っ白なマフラーを巻いて。顔馴染みのルナール調合店へと向かった。
いまからオレが向かう、ルナール調合屋というのは。ちょー貴重な薬師の資格を持つ、キツネ族のサロンナばあさんが営んでいる調合店。
その店の場所はミリーヌ町の中央にある、ココナ商店街の奥に建つ古びた木造の風格のある店だ。
一言で言うと単にボロい。その店の前には……招き猫じゃなく招きキツネ? の置物が置かれている。
ばあさんの店の入り口は立て付けが悪く、入るのにコツがいる店の引き戸を開けると。年代物の古い真鍮のドアベルがカランコロンと鳴り、独特の香りがオレの鼻をくすぐった。
グッ……いつ来ても、ここは薬草の匂いしかしない。まあ調合屋だから仕方がないが。オレはサロンナばあさんがレジにいるのかと探すが、姿が見当たらない――店の奥で昼寝でも、してるのか?
「サロンナばあさん? いないの?」
「…………」
(出掛けて、いていないのか?)
ばあさんの店は薬草臭いが。ココナ商店街でいち番古くレトロな造りの店。薬を量り売りするための天秤、ラベルが剥がれかけの薬の瓶、小箱が並んだ薬箱。ところ狭しと薬瓶が置かれた木製の薬棚並び。モンスターから取れる魔石を使用した、魔導具のランタンの灯がともり。店の中を鉄製の魔石ストーブが暖めている。
(いくら安全だからって、ストーブつけっぱなしで出掛けたのか? ……クンクン、今日はやけに独特な薬品と薬草の匂いがするな。もしかして調合室で薬でも作ってる?)
ばあさんは調合中か、それじゃ邪魔できないな。仕方がない……夕方で直すかと帰ろうとしたオレを、調合室から顔を出してばあさんが呼び止めた。
「待て、タヤ。もうすぐ調合が終わるから……待っていてくれ」
「ああ、わかった」
サロンナはそれだけ言うと、すぐ調合室に戻っていった。珍しく急ぎの依頼が入ったのか。……ん? オレは近くの薬棚に目をやった「メガヨクミエール」「コエガトール」相変わらずネーミングセンスにオレは微笑した。
だがサロンナが仕立てる薬はよく効くし、値段が安い。調合に必要な薬草を持ち込めば、更に安く調合してくれる。
――あの"女神より"も、オレにとっては女神的な存在だ。
(この薬はお腹が痛くナクナールか……ククッ)
今日、オレが求めに来たのは抑制剤。この国には男女のほかにα(アルファ)、β(ベータ)、Ω(オメガ)という3つの性がある。その中でオレはオメガといって月一に1週間程度の発情期(ヒート)がくる。
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