女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ

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 説明を受けた日から、抑制剤をサロンナばあさんは作って安く売ってくれる。オレはもう少しでなくなる抑制剤をルナール調合屋、サロンナばあさんの店に買いに来ていた。

 店に訪れて10分ほど待つと調合室の扉が開き、薬品の匂いと共に、白衣姿のサロンナばあさんが現れる。

「タヤ、お待たせ」
「ばあさん、お疲れ」
 
 オレはいつもの様に抑制剤を買おうとした。だがサロンナばあさんの顔は渋く。ばあさんの口からでた言葉にオレは驚愕(きょうがく)した。

「はぁ? この金額じゃ、抑制剤が5粒しか……買えない? 前まで30粒は変えただろう?」

「前までね」

 ばあさんは渋い顔のまま。
 オレに詳しく、その訳を教えてくれた。

「……ここ最近、仕入れ先の魔法国ピローネタ付近で戦争が起きたらしく、薬草、薬品などの輸入品が滞っているんだよ。入ってくる品は、ほとんど王都が買い上げちまって、運良く入ってきても調合に必要な魔法水が少量しか入ってこない。ここ一週間ぐらいで値段もつり上がった……こうなったら最終手段だ。ヒート抑制剤を王都にあるオメガ専門の病院に伝えて薬を貰うんだ。必要な分を貰うにはいまそれしか無い」

 オメガ専門の病院⁉︎

「マジか! それが最終手段? 王都のオメガ専門病院っていったら身分証がいるだろ? そこで薬を貰ったあと、変な奴に監視されたりしない?」

「ああ、監視はされるな」
「ううっ……」
「身分証は冒険者ギルドカードが使える。抑制剤がないと、番も、相手もいないタヤにヒートのときはキツイだろ?」

「……そ、そりゃ、そうだけど」

 抑制剤がないと、相手のいないオメガのオレはツライ。だからって、王都の専門病院に行けと? 

 サロンナばあさんは最終手段だと言うが。そこで薬が手にはいっても。一生、監視されて生きて行くなんて嫌すぎるし。知らないアルファと結ばれるのも嫌だな。……こうなったら……サロンナばあさんのところに素材が入るまで。いま手に入る抑制剤で、ヒートを乗り切るしかない――ないよりはマシだ。

「オメガ専門の病院は無理だ……サロンナばあさん! いま、あるだけ薬を売ってくれ?」
「ああ、いいよ。あるだけ持っていきな」

「それは助かる、足らない代金は熊クマ食堂の給料日に持ってくるよ」

 と言ったオレに、サロンナばあさんは首を横に振った。
 
「今回のお代はいいよ。いま準備するから待っていておくれ」

「え、いいの? ほんと助かるよ。ありがとう!」

 ばあさんの店に残っていた数粒を手に入れて、オレはルナール調合屋から熊クマ食堂に帰ってきて、奥で休む二人に話しかけようとしたが……激しく体が欲情したのを感じた。
 
(こんなときに、ヒートが……きたのかよ)
 
 ただ一人きりのヒートはむなしく寂しい。このむなしさ、寂しさを埋めたい。オレに番でもいれば……この思いは消えるのかな?

 己の欲が膨らむのを感じて、オレは2人に"ヒートが来た"と声をかけて、2階の自分の部屋に駆け込んだ。サロンナばあさん特性ヒートの匂い消しの香を解き、遮音魔法と自分を慰める為、スラックスの前をくつろげベッドに仰向けで寝転んだ。
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