女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ

文字の大きさ
14 / 59

13

「……ハァハァ、んんっ――!」

 あの日からオレのヒートが来る周期が早まり。来るたびにあの日のフォルテの顔がチラついた。フォルテから香ったスパイスの香りに包まれて、抱きしめられたい、あの低い声で囁かれたい。

 婚約者がいると言っていたフォルテ。王族、上級貴族だし、無理だと無知なオレでもわかっている。――あのあと目が覚めると、オレは自分の部屋で寝ていた。
 
 そして近くの棚の上には、あのとき飲んだ抑制剤の瓶が置かれていた。次の日シンギに話を聞くと、フォルテは薬が効いて、眠るオレを介抱したと連れて来たと言っていた。そのときに薬も一緒に渡してくれたらしい。
 
(次会ったらお礼を言わないと)
 
 じっさい、フォルテから貰った薬は一粒噛んで飲めば一晩中、精を放ち喘がなくても眠れて。翌朝の体もダルくなくスッキリしている。フォルテがくれた抑制剤はオレではとうてい手が出ない、高級な抑制剤なんだろう。

「タヤ、お疲れ」
「おつかれさま」

「シンギさん、マヤさん、お疲れ様でした」

 今日の午後はシンギとマヤの用事で、熊クマ食堂は休み。オレは冒険者ギルドに行くつもりだ。――ヒートの翌日、動けるようになったオレはシンギとマヤに助けられて、ニャッチ十匹を無事倒してFランクからEランクに上がったのだ。

 いつもの冒険着に着替えて、オレは店にいる二人の声をかけた。

「シンギさん、マヤさん、隣町の冒険者ギルドに行ってきます」
 
「気をつけて行けよ!」
「何かあったら、すぐに帰りなさい」
 
「うん、わかってる」

 徒歩で隣街の冒険者ギルドに行き、掲示板の前で沢山の依頼の見つけたのは『ラン森。モチクサ、一キロ』の全ランクが受けられる採取依頼。モチクサは抑制剤の材料にも使われている薬草だ、余分に採取してサロンナに渡そう。

 それに、この依頼は報酬もいいな。オレが掲示板に手を伸ばすと、横からオレよりも頭一つ分以上大きく、頭からスッポリローブを被った男がその依頼を持っていってしまった。

 ――あっ、俺のクエスト。

「ま、待ってくれ、そのクエスト待ってくれ!」
 
「ん? なんだ」

 男性の低い声に躊躇したが、オレはそのモチクサのクエストを受けたい。――しかし、このクエストを二人で受けると『モチクサ、一キロ』が半分の量になる代わりに報酬も半分になる。大抵、採取クエストは一人でやる人が多い。

「依頼金はいいから……頼む、オレもそのクエストを受けさせてくれないか?」

 と、断られる覚悟で男性に頼んだ。ローブの男性はすぐいいと頷き、オレもモチクサの依頼を受けられるようになった。

「ありがとう、助かるよ」
「いや」

 近くのラン森まで移動して、モチクサを集め始めた。オレもランクがEになり採取スキルを覚えた。Fランクでもこの依頼は受けられるが、採取スキルがある無しでは終わる時間が変わってくる。

 一度、Fランクのときにも同じクエストを受けて、一日中モチクサを探したが達成できず。翌日、採取スキルを持つシンギとマヤに、クエストを手伝ってもらったことがあった。
 
 でも今回は違う。覚えた【採取スキル】を発動してサクサク、モチクサを採取し始める。一緒に来た男性はオレよりも早く動きモチクサを集めていた。

(すごい、見つける量がオレとは大違いだ。採取スキルのレベルが違うのと、他のスキルも持っているのか)

 ――クソッ、オレも負けらんね。

 やる気を出してモチクサを採取した。冒険者ギルドから借りたカゴ、半分で五百グラムになる。それとは別に抑制剤用にも薬草を集めよう。

 

 数時間後、カゴに半分以上のモチクサが集まった。

「ふうっ、終わった……」
「終わったのか?」

 えっ、とうに採取を終えてかえったと思っていた、男性はオレが終わるまで近くで待ってくれた。

「はい、終わりました」

 冒険者ギルドに戻り報告を終わらせて、約束どおり依頼金を渡して、男性にもう一度お礼を言ってオレは帰路に着いた。



 ローブ姿の男性はタヤを見送り、近くに止まる黒塗りの馬車に乗り込んだ。その馬車のなかには鎧を身につけた男性か待っていた。

「採取、お疲れ様でしたフォルテ様」
「あぁ……疲れたよ」

 フードを取ると、金色の髪ではなく黒い髪がサラリ落ちた。

「自分の抑制剤の材料は、自分で集めるのが決まりですからね」
 
「そうだな。ところで私の婚約者は今日、学園に来ていたのか?」

「いいえ。本日も体調不良でお休みされていました」
「体調不良? そうか、わかった……私は少し仮眠する」

 壁に体を預けて目を瞑ったフォルテ。まさかあの演習の時に出会った、タヤが冒険者ギルドにいるとは思はなかった。彼にもう一度会いたいと思っていたから……声をかけられた時にはバレたのかと焦った。

 だが、自分は声変えの魔導具と臭い消しのローブ、変身指輪を身につけているから――バレるわけないか。

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。番外編をちょこちょこ追加しています。

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。