女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ

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 サクサクに上がったシュリンフライを挟み、たっぷりのタルタルソースと、レタスを挟んだサンドイッチが出来上がった。

 昼過ぎの3時になり、熊クマ食堂は閉店した。

「シュリンサンドのおかわり、お待たせしました」
「キタキタ、待っていました!」
「オレもここに座って、食事を取っていい?」
「どうぞ、少し話しましょう」

 お嬢様はお客がいないからか、砕けた話し方になっていた。オレとしてもその方が話しやすいから気にしない。この、お嬢様は公爵令嬢ロッサ・クロニカルだと名乗った。

 公爵令嬢? かなり位の高いお嬢様だ。

 しかし、彼女はシュリンサンドイッチがそうとう気に入ったようで。美味しそうに出来上がったばかりの、シュリンサンドイッチにかぶりついた。このお嬢様らしがらぬ食べっぷり、この姿を見ていると彼女はお嬢様ではなく普通の女性に見えた。

「んん、海老フライ美味しい。久しぶりすぎて食べ過ぎちゃう」

「わかる。ここの"海老フライ"美味いよな。オレもはじめはそうだった」

 その言葉に瞳を大きくして、ロッサお嬢様はニンマリ笑った。

「もう幸せ……あと食べたいものは天むす、和風豚骨のラーメン、海老煎餅……味噌煮込みうどん、味噌おでん……」

 オレもそれに乗っかって。

「味噌牛蒡、味噌カツ、ひつまぶしとか?」
「え? 鬼まんじゅう、ういろう、喫茶店のモーニング?」
 
「クク、喫茶店のモーニングにはゆで卵、食パンにたっぷりの、あんことバターは美味かったな」
 
「フフ、あんバターはおいしいよね」

 お嬢様の赤い瞳が、またまたうれしそうに細まった。どうやら、ロッサお嬢様とオレは同じ出身のようだ。お嬢様にこの世界について詳しく話を聞いた。

「え、マジ?」
「マジよ」

 どうやら、ここは18禁の乙女ゲームの世界で、ヒーローが第一王子のフォルテ。ヒロインは熊クマ食堂で働く、回復魔法を使うオメガの黒兎の女の子だと言った。

(へぇ、ただものじゃないと思っていたけど……フォルテは王族だったのか。偶然にも知ってしまったけど、これはオレからフォルテに言うんじゃなくて、本人が伝えるまで待ったほうがいいな)

 そして、いまロッサお嬢様が話したヒロインの特長……回復魔法が使えて、ここ熊クマ食堂で働く黒兎のオメガの女の子……が、男と女違いでオレとかぶるんだが。

 あの女神、間違っていたとはいえ。
 男でもいける乙女ゲーム探したんだな。

「ねえ、タヤは転生者? それとも転移者」

「オレは転移者だな。それも女神の間違いでここに落とされた」

「え? 女神の間違い? じゃ、タヤは病気、事故で死んだんじゃないのね」

 そうだと、頷いてここまでの経緯をロッサお嬢様に話した。彼女の瞳が、みるみる哀れみを見る瞳に変わる。

「酷い話ね、でも私としては……タヤでよかった。ヒロインが電波系とか自己中だったら、絶対に話を聞いてもらえないもの」

 電波系?
 自己中?

「ハハハ……」

 ロッサお嬢様はフォルテの婚約者でヒロインが学園に入学してくると。婚約者のフォルテは徐々にヒロインと仲が良くなる。それで、ロッサお嬢様はヒロインを嫉妬から虐める悪役令嬢で、学園最後に婚約破棄されるのだと話した。


 だけど、ヒロインがいくら待っても学園に入学せず3年が経ち――このままではフォルテ殿下に婚約破棄されず、結婚となれば"確実に自分が破滅する"と言い出した。

「は、破滅?」

 コクコク頷くロッサお嬢様に手招きされて、オレは顔を近づけた。

「実は私、オメガじゃなくてベータなの……」

「えっ? ベータ?」

 乙女ゲームの話だと。ロッサお嬢様は幼い頃にフォルテ殿下の婚約候補となる。そして他の候補者と同じく性別の検査でベータだと言われた。両親は地位と金欲しさに医療機関に多額の金を払いロッサお嬢様がオメガだと、嘘の報告書を作りフォルテ殿下の婚約者になった。

「私が悪役令嬢のロッサに転生していたと気付いたのは、いまから3年前の15歳。気付くのが遅すぎて、物語は乙女ゲームと同じように進んでしまっていたの。まあ、私がベータだとフォルテ殿下に伝えればいいのだけど。よくやく見つけたオメガ、王家から高級なドレス、宝飾品が大量に贈られてね。それを受け取った両親はお金になると大喜び。それら全てを売り払い、自分達だけのものにしてしまったわ」

「うわぁ、大変だな」

「ほんと大変よ。王家に、フォルテ殿下に本当のことがバレでもしたら怖いわ。その話をするにしても両親は旅行、豪遊ざんまいで、ちっとも私の話を聞いてくれない。……だから私は私で3年間、病気だと伝えてフォルテ殿下に合わないようにするしかなかった……それの限界がきたわ」

 ロッサお嬢様はそうとう行き詰まって、ヒロインを探していたと話した。




 しずかな店内で、二人が顔を寄せ合い内緒話をしていた。店の裏口が開き、時間ができたルテがタヤを冒険に誘いに、店の裏口から顔を出した。

「シンギさん、タヤいる?」

「あ、これはフォルテ殿下……タヤはいますが。いまお客さんと話し中です」

「客と話し中?」

 フォルテが暖簾越しに覗くと、店の中で顔を寄せ合い仲良さげに、何処かの令嬢と話すタヤがいた。
 

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