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よん
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「フォックス殿下、アルディリアさんがお待ちですよ。いますぐテラスに戻ってください」
「あの子とは約束していない。ラビット、どうして俺から逃げる?」
「に、逃げてなどおりませんわ」
好きな顔。
好きな香り。
フォックスがラビットのそばにくるだけで好きがあふれる――これ以上はトリガーを引いてしまう。
それを、知っているはずのフォックスはさらに近付いた。
「フフ、ラビットの甘い香りが濃くなった」
「は、離してください……」
「離さない。フフ、ラビットはどこもかしこも、テラスに用意した苺のように真っ赤だ――たべてしまいたい」
目を細めて、フォックスはラビットの赤く染まる頬を、ペロッと舐めた。
「ぴゃぁ!」
「フォックス殿下!」
「やりおったにゃ」
――フォックスさまが私の頬をなめ、舐めたぁぁ!
「あ、あわわわっ……あ、ああ」
トックン、トックン……胸の鼓動が跳ねる。
好き。フォックス様が好き、好き。
「もう無理ぃ!」
ポン!
ラビットの姿は黒ウサギになり、枝の上から落ちてきた彼女のドレスはすべて、アルが魔法の箱に回収した。
「アル、アル――!」
ラビットは側近を呼んだが、離さないと抱きしめたフォックスに、猫のルフはフワリと体を浮き上がらせた。
「フォックス、意地悪はダメですにゃ」
「意地悪ですか? "そう"してしまうのは……可愛い、ラビットのせいです。国宝――聖霊獣のルフ様に言われるのはこころ痛いですね」
ルフは呆れ顔で。
「お前は顔と同じで、嘘つきにゃ」
「ルフ様は酷いことをサラリと言いますね。私ほどラビットを愛するものは"いない"というのに」
ラビットを返さないフォックスに。
「ラビットお嬢様を大切にされているのはわかっております。フォックス様、ラビットお嬢様を返してください。いくら婚約者でも――いまのラビットお嬢様に触れてはなりません!」
「うるさい。ラビットの従者アル、君にだけは渡さない!」
フォックスは目を細めて微笑み、嫌だと魔法を使い、姿をけした。
「にゃっ、消えた。奴もまだ子供だな」
「ラビットお嬢様が好きで、好きで、食べてしまいたいくらいに好きで……婚姻前の性交渉は遠慮していただきたいのですが――僕が旦那様に怒られる」
なげくアルに、ルフは無理だと首をふる。
「アイツに我慢は無理にゃ……出会ったときから一筋。魔法を使いこなし、自らも、ラビットの後を付け回す変態にゃ」
変態。フォックスにはピッタリな言葉だった。
「あの子とは約束していない。ラビット、どうして俺から逃げる?」
「に、逃げてなどおりませんわ」
好きな顔。
好きな香り。
フォックスがラビットのそばにくるだけで好きがあふれる――これ以上はトリガーを引いてしまう。
それを、知っているはずのフォックスはさらに近付いた。
「フフ、ラビットの甘い香りが濃くなった」
「は、離してください……」
「離さない。フフ、ラビットはどこもかしこも、テラスに用意した苺のように真っ赤だ――たべてしまいたい」
目を細めて、フォックスはラビットの赤く染まる頬を、ペロッと舐めた。
「ぴゃぁ!」
「フォックス殿下!」
「やりおったにゃ」
――フォックスさまが私の頬をなめ、舐めたぁぁ!
「あ、あわわわっ……あ、ああ」
トックン、トックン……胸の鼓動が跳ねる。
好き。フォックス様が好き、好き。
「もう無理ぃ!」
ポン!
ラビットの姿は黒ウサギになり、枝の上から落ちてきた彼女のドレスはすべて、アルが魔法の箱に回収した。
「アル、アル――!」
ラビットは側近を呼んだが、離さないと抱きしめたフォックスに、猫のルフはフワリと体を浮き上がらせた。
「フォックス、意地悪はダメですにゃ」
「意地悪ですか? "そう"してしまうのは……可愛い、ラビットのせいです。国宝――聖霊獣のルフ様に言われるのはこころ痛いですね」
ルフは呆れ顔で。
「お前は顔と同じで、嘘つきにゃ」
「ルフ様は酷いことをサラリと言いますね。私ほどラビットを愛するものは"いない"というのに」
ラビットを返さないフォックスに。
「ラビットお嬢様を大切にされているのはわかっております。フォックス様、ラビットお嬢様を返してください。いくら婚約者でも――いまのラビットお嬢様に触れてはなりません!」
「うるさい。ラビットの従者アル、君にだけは渡さない!」
フォックスは目を細めて微笑み、嫌だと魔法を使い、姿をけした。
「にゃっ、消えた。奴もまだ子供だな」
「ラビットお嬢様が好きで、好きで、食べてしまいたいくらいに好きで……婚姻前の性交渉は遠慮していただきたいのですが――僕が旦那様に怒られる」
なげくアルに、ルフは無理だと首をふる。
「アイツに我慢は無理にゃ……出会ったときから一筋。魔法を使いこなし、自らも、ラビットの後を付け回す変態にゃ」
変態。フォックスにはピッタリな言葉だった。
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