殿下! たべる相手がまちがっています!

にのまえ

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なな

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 フォックスとの好感度があがらない。
 ヒロイン――アルディリアは、書庫にいる私たちに突撃してきた。

「フォックス様、どうして悪役令嬢のラビットと一緒にいるのですか? 彼女といてもフォックス様の呪いは解けません!」

 ――フォックス様の呪い。

 ゲームのフォックスは幼いラビットに「その笑顔が怖い」という一言で傷付き。それ以来――笑わなくなってしまう。

 呪いというより言葉の呪縛かも。
 
 政略結婚――婚約者になったラビット。
 ますます笑わなくなった、フォックスの傷をアルディリアが癒す。

『フォックス様の笑顔が好きです』
『アルディの前なら笑えるよ』

 ヒロインとヒーローの、可愛い告白のイベントだったわ。
 

 ――私はフォックス様の笑顔が、顔が好き。

 まだ記憶がない頃の幼いラビットも、ゲームとは違い。
 ポーッと頬をそめて「可愛い」と、フォックス様をみていたとかで、お母様がお茶のときにいつもいうの。

 本人の前にでも言うから、はずかしい。
 
 でも、幼い頃ってフォックス様にお会いするたびに、彼は獣化してしまって――ラビットをナデナデ係にしてくれたのよね。

「それで、君の言う。俺の呪いとはなんだい?」

「その女が言った「笑顔が怖い」という一言で傷付いた、フォックス様は自分が嫌いなの。あと獣化したときに原種の血が濃くて元のお姿に戻れなくなるの!」

 そうそれ、ほんとうなら……獣化してしまうと。
 フォックス様のトリガーが誰にもわからず、中々戻れないのよね。

 獣化したままのフォックス様は野生化してしまう。
 二度と元の姿に戻れなくなると言われて、ヒロインは噛みつかれながらも、彼のトリガーを見つけて元に戻す。

 それもいい、イベントだったわ。

「その女? 君、俺の婚約者にそういう、ものの言い方はいけないね。それに君は俺以外にも、婚約者がいる男性にいいよっていると聞いている――やめた方がいいよ」

 ――それって攻略対象者よね。

「私はこの乙女ゲームのヒロインなの! みんなに愛されるの! フォックス様はやく私と手を取り合い、そいつから逃げましょう!」

「そいつ? 嫌だけど」

「ふえっ?」

 期待していた言葉とは違い。
 驚きで、すっとんきょうな声をだすアルディリア。


「君のことはよく知らない。悪いけど、俺はラビットだけを愛している」

「嘘よ!」

「証拠を見せようか。ラビット、俺の頬にキスして」
「ふえっ? キス、ここでぇ!」

 今度は私がすっとんきょうな声を上げた。
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