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第1章:エルフの国編
第13話 王室特殊兵団会議
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大和とリンが図書館を出ようとしている頃、明日のセーナ祝帰還式の打ち合わせが終わり、ケイトとヴォルドは王室特殊兵団本部の団長室で談笑していた。
「いやー最初聞いた時は驚いたよ。ヴォルドが大和に負けたなんて」
ケイトはヴォルドをからかうように笑いながら言う。
「うるせぇな、ハンデはあったとはいえ潔く負けを認めてるんだからいちいち掘り返すな!」
「ハハハ、ごめんごめん、それで?相談ってなんだ?」
ケイトは真面目な顔に切り替えてヴォルドに聞く。
「あーそうそう、大和を王室特殊兵団に入れてみてはどうかなって思ってな」
「ほーう」
ケイトは興味深そうにして、ヴォルドに話を続けるように促す。
「あいつと戦ってみてわかったんだけどよ、戦士階級で見るとAAA級はあると思う。それに要領もいいみたいで、まあ簡単に言えば天才だ。そして状況を判断する力も長けている。王室特殊兵団でさらに経験を積めば王室特殊兵団にとって、いや、この国にとってプラスだと思うんだがどうだ?」
ヴォルドが話終わると、ケイトは目を瞑り、少し考える。
「うーん・・・まあわかった。さっきお前が俺に見せてきた戦闘記録映像でもあいつの強さはわかったんだけどねー・・・」
「何か問題があるのか?」
「ああ・・・」
ケイトは少し深刻そうな顔をして話し出す。
「俺はそもそも陛下がアイツに敵意は感じられないし今後芽生えることはないだろうって仰った上、俺自身アイツは仲間だと思ってるし、問題ないと思ってる。そしてこの強さは是非とも王室特殊兵団に欲しい。だが知っての通り推薦での入団には俺と隊長格の中から過半数の同意が必要だろ?」
「ああ、そういうことか」
ヴォルドはケイトが言いたいことがわかったようだ。
しかしケイトはそのまま話を続ける。
「隊長格の中で大和を快く思ってないやつがいるのは知ってるだろ?」
「ああ」
「そいつらが納得するかなんだよねー」
「推薦会議になったとして、俺とケイト以外から最低でも3名はこちらと同意見でなければならないからな」
「そこなんだよなー。多分ジェイルとアダムは賛成してくれると思うんだけど。他がなー・・・」
ケイトとヴォルドは隊長達のことをよく知っているため、隊長達の反応を予想してみる。
「確かにそうだな。サユリはあの時は国王陛下に従ったが、それはあくまでも滞在を許すか否かの話だ。王室特殊兵団入団ともなれば確実に反対するだろうな」
ケイトとヴォルドは昨日のサユリの態度を思い返す。
「だろうね。そしてペテルは元々用心深い奴だから反対せずとも棄権する可能性はあるな」
「確かにな。マナカとルイスはどうすると思う?」
「いや、あの2人は俺でも予想出来ないな。まあでも一応2人は異世界について個人的に調べてるみたいだけどね」
「そうか」
ヴォルドとケイトは隊長達の反応を予想したが、一応2人の中では結論は出ていた。
「じゃあ推薦会議やってみるしかないな」
「そうだね。まだみんな本部にいるみたいだしね。ヴォルド、会議室に各隊長を集めてくれ」
「了解。じゃあ先に失礼するぜ」
ヴォルドは一足先に団長室を出て、各隊長に声をかけていく。
□□□□□
ケイトの招集命令により、会議室に集められていた。
この場にいるのはケイトとヴォルドとジェイル以外の5人で、現在はこの3人を待っているところだ。
「推薦会議か。久しぶりだな」
最初に口を開いたのは、イケメンマッチョな外見で、黒髪短髪の男性の6番隊隊長ルイス・ガヴァエラだ。
「しかもヴォルドの推薦とか初めてじゃないかしら?」
ルイスの言葉に返したのは、金髪のウルフカットの女性の2番隊隊長マナカ・ミドパルドだ。
「ヴォルド先輩の推薦かー、どんな人だろ」
冷静な雰囲気を醸し出している赤髪のツーブロックの青年は、7番隊隊長ペテル・コレオスだ。
「まあヴォルドのことだから問題なさそうだがね」
4番目に発言したのは、見た目は人間の40代前半程の黒髪の男性の、5番隊隊長アダム・メルファンだ。
そして、アダムの横の席で一言も話さず座っている黒髪長髪のポニーテールの女性は、4番隊隊長サユリ・ノンデムだ。
5人が待っていると、ようやく会議室の扉が開き、ケイト、ヴォルド、ジェイルの3人が入ってきた。
座っていた5人は一斉に立ち上がり、ヴォルドとジェイルは自分の席の横に立った。
「よし、みんな揃ったな。じゃあ座っていいぞ」
ケイトにそう言われると、7名の隊長は一斉に座った。
「今回はヴォルドが王室特殊兵団に推薦したい者がいるということで集まってもらった。ヴォルド、皆に説明を」
「はっ!」
ヴォルドはケイトに説明するよう言われると、自分の席を立ち話し始める。
「じゃあ早速本題に入るぞ」
他の隊長達の視線がヴォルドに集まっている。
そしてヴォルドは皆からしたら驚きの内容を話し始める。
「この度、王室特殊兵団規則第12項、団長及び隊長によるスカウト、推薦に基づき、1番隊隊長ヴォルド・ハイツの名において、ヤマト・ハナオカをす王室特殊兵団団員へ推薦を提案する」
ヴォルドがはっきりと言うと、会議室に衝撃が走った。
すると、ケイトとヴォルドの予想通り、サユリがテーブルをバン!と叩き、真っ先に反対してきた。
「なにを言ってるんですか?ヴォルド先輩!?あいつは異世界人ですよ!?仮に優れていたとしても王室特殊兵団には相応しくありません!」
「まあまあサユリ、落ち着こうよ。ヴォルドはまだ推薦に至った経緯を話していないだろ?判断は聞いてみてからでもいいんじゃないかな?」
サユリを宥めたのはジェイルだ。
サユリは少し落ち着き、ジェイルの言う通りに話を最後まで聞くことにした。
「続けていいよ、ヴォルド」
「すまねぇなジェイル。では続けるぞ」
再びヴォルドに視線が集まり、ヴォルドは説明を再開する。
「今回、大和を推薦しようと思ったのはこの戦いだ。皆に観てもらった方が早いかな」
そう言うとヴォルドは、映写魔法を使い、テーブルの中央にスクリーンを出現させる。
「今日の午前に演習場で撮った映像だ。そこで俺と大和は模擬戦をやった。先に結果を言うと、実戦初めての大和に、ハンデをつけたとはいえ俺が負けたよ」
ヴォルドが自分が負けとことを話すと、大和を推薦すると言った時よりも会議室に大きな衝撃が走った。
ただ、事前にそれを知っていたケイトは特に驚くことなくヴォルドの話を聞いている。
「まさか!?ヴォルド先輩が負けたなんてありえない」
ルイスは少し取り乱しそうになりながらヴォルドに言った。
「まあルイス、お前がそう言ってくれるのは嬉しいが、映像を見て欲しいね」
ヴォルドは指を鳴らすと、映像が
再生される。
スクリーンには、先程ヴォルドが言っていた通り、ヴォルドと大和の模擬戦の様子が映し出されている。
それを隊長達は、釘付けになるように観ている。
そして、問題のヴォルドが負けたシーンになると、隊長達は先程と同様に驚いていた。
映像が終わり、ヴォルドが皆に問う。
「まあ推薦理由はこれだけじゃないが、映像を観てどう思った?」
「正直驚きました。まさか本当にヴォルド先輩に勝ったなんて・・・」
ヴォルドの問いに最初に答えたのは、さっきヴォルドが負けたことを聞いて
信じられなかったルイスだ。
だが、彼が憧れる先輩のヴォルドが負けるのを映像で観たのだ。
なので今度は冷静に内容を判断できた。
「ヴォルド先輩、他の理由をお聞かせ願いたいのですが?」
次に言ったのはサユリだ。
どうしても異世界関係の大和を認めたくないらしい。
そしてヴォルドは説明を始める。
「ん?ああいいぜ。もう一つの理由としては、サユリ、お前にとっても悪い話ではないはずだ」
「・・・はい?」
サユリにとって悪い話じゃないと言われ、少し興味が湧いたようだ。
「皆はもう知ってるだろうが、異世界人の実例は少ない。だから元の世界に帰る方法も、別の世界に行く方法もわからない。これは王室特殊兵団の情報環境においても結果は簡単には変わらないだろう。そこで、大和を王室特殊兵団に入れて、働いてもらうことになれば、大和は王室特殊兵団の優れた情報環境を使うことができる。そうすれば元の世界に帰る方法が早く見つかる可能性が高い上、サユリのように大和の入団を認めたくないやつにとっては監視の意味がある」
「監視・・・ですか?」
サユリは興味深そうに聞く。
「ああ、そうだ。いちいち護衛ら監視の人員をこちらから出すより、王室特殊兵団側にいてもらった方が都合がいい。誰にとってもメリットが大きいと思うんだがどうだ?」
ヴォルドがそう言うと、隊長達はそれぞれ考える。
そして、ある一人が手を挙げて口を開く。
「ヴォルド、一ついいか?」
「ああ、いいぞ」
手を挙げたのは、5番隊隊長のアダム・メルファンだ。
アダムは現在の王室特殊兵団の中で、最も長くいる者で、ケイトの前任の団長が行方不明になった時、次期団長の地位をケイトと共に争った実力者だ。
そんな彼が気にしているのは、たった一つだ。
「本来は王室特殊兵団に入るには厳しい試験がある。そして、推薦やスカウトにより入団してくる者は試験を受けて入団してくる者達より優れていなければならない。確かに戦闘能力の面は申し分ない。団員の中でもヴォルドに勝てる者はそもそも少ないからな。ただ、問題は知識面だ。王室特殊兵団は軍ではなく、独立した特殊部隊のようなものだ。この世界のことを知らない者を入れて大丈夫か、ってところだけ俺は心配している」
アダムの質問、というか指摘は正しい。
だがヴォルドはその点もしっかり考慮していたようだ。
「ああ、そういうところは問題ない。戦ってみて思ったが、大和は魔法を理解するスピードが尋常じゃない。さらにそれを改良して自分の物に出来ている。それに、大和は今日の午後は図書館で本を読み漁っていたようだから、知識面も問題なくなるだろう。いや、そのうち俺らを超えるかもな」
隊長達は自分の中で結論を出す。
「じゃあ、多数決に入るぞ。それぞれ投票用紙に賛成か反対か書いて投票箱に入れてくれ。一応結果は俺しか見えないから遠慮なく自分の意思を書いてくれ」
ケイトが皆にそう言うと、隊長達は投票用紙を書き始め、書き終えた者から投票箱に入れていく。
ケイトも自分の投票用紙を記入し、投票箱に入れた。
そして、全員が投票を終えた。
ケイトが集計を始め、集計が終わると、ケイトは結果を皆に伝える。
「投票結果は・・・賛成6票、反対2票により、ヤマト・ハナオカの入団を、 王室特殊兵団として認める。会議はこれにて終了とする。皆ご苦労だった。それでは解散」
ケイトがそう言うと、隊長達はそれぞれ戻る場所に戻っていった。
こうしてリンがヴォルドに大和を推薦するように頼むまでもなく、大和の入団が会議で決まったのだった。
「いやー最初聞いた時は驚いたよ。ヴォルドが大和に負けたなんて」
ケイトはヴォルドをからかうように笑いながら言う。
「うるせぇな、ハンデはあったとはいえ潔く負けを認めてるんだからいちいち掘り返すな!」
「ハハハ、ごめんごめん、それで?相談ってなんだ?」
ケイトは真面目な顔に切り替えてヴォルドに聞く。
「あーそうそう、大和を王室特殊兵団に入れてみてはどうかなって思ってな」
「ほーう」
ケイトは興味深そうにして、ヴォルドに話を続けるように促す。
「あいつと戦ってみてわかったんだけどよ、戦士階級で見るとAAA級はあると思う。それに要領もいいみたいで、まあ簡単に言えば天才だ。そして状況を判断する力も長けている。王室特殊兵団でさらに経験を積めば王室特殊兵団にとって、いや、この国にとってプラスだと思うんだがどうだ?」
ヴォルドが話終わると、ケイトは目を瞑り、少し考える。
「うーん・・・まあわかった。さっきお前が俺に見せてきた戦闘記録映像でもあいつの強さはわかったんだけどねー・・・」
「何か問題があるのか?」
「ああ・・・」
ケイトは少し深刻そうな顔をして話し出す。
「俺はそもそも陛下がアイツに敵意は感じられないし今後芽生えることはないだろうって仰った上、俺自身アイツは仲間だと思ってるし、問題ないと思ってる。そしてこの強さは是非とも王室特殊兵団に欲しい。だが知っての通り推薦での入団には俺と隊長格の中から過半数の同意が必要だろ?」
「ああ、そういうことか」
ヴォルドはケイトが言いたいことがわかったようだ。
しかしケイトはそのまま話を続ける。
「隊長格の中で大和を快く思ってないやつがいるのは知ってるだろ?」
「ああ」
「そいつらが納得するかなんだよねー」
「推薦会議になったとして、俺とケイト以外から最低でも3名はこちらと同意見でなければならないからな」
「そこなんだよなー。多分ジェイルとアダムは賛成してくれると思うんだけど。他がなー・・・」
ケイトとヴォルドは隊長達のことをよく知っているため、隊長達の反応を予想してみる。
「確かにそうだな。サユリはあの時は国王陛下に従ったが、それはあくまでも滞在を許すか否かの話だ。王室特殊兵団入団ともなれば確実に反対するだろうな」
ケイトとヴォルドは昨日のサユリの態度を思い返す。
「だろうね。そしてペテルは元々用心深い奴だから反対せずとも棄権する可能性はあるな」
「確かにな。マナカとルイスはどうすると思う?」
「いや、あの2人は俺でも予想出来ないな。まあでも一応2人は異世界について個人的に調べてるみたいだけどね」
「そうか」
ヴォルドとケイトは隊長達の反応を予想したが、一応2人の中では結論は出ていた。
「じゃあ推薦会議やってみるしかないな」
「そうだね。まだみんな本部にいるみたいだしね。ヴォルド、会議室に各隊長を集めてくれ」
「了解。じゃあ先に失礼するぜ」
ヴォルドは一足先に団長室を出て、各隊長に声をかけていく。
□□□□□
ケイトの招集命令により、会議室に集められていた。
この場にいるのはケイトとヴォルドとジェイル以外の5人で、現在はこの3人を待っているところだ。
「推薦会議か。久しぶりだな」
最初に口を開いたのは、イケメンマッチョな外見で、黒髪短髪の男性の6番隊隊長ルイス・ガヴァエラだ。
「しかもヴォルドの推薦とか初めてじゃないかしら?」
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「ヴォルド先輩の推薦かー、どんな人だろ」
冷静な雰囲気を醸し出している赤髪のツーブロックの青年は、7番隊隊長ペテル・コレオスだ。
「まあヴォルドのことだから問題なさそうだがね」
4番目に発言したのは、見た目は人間の40代前半程の黒髪の男性の、5番隊隊長アダム・メルファンだ。
そして、アダムの横の席で一言も話さず座っている黒髪長髪のポニーテールの女性は、4番隊隊長サユリ・ノンデムだ。
5人が待っていると、ようやく会議室の扉が開き、ケイト、ヴォルド、ジェイルの3人が入ってきた。
座っていた5人は一斉に立ち上がり、ヴォルドとジェイルは自分の席の横に立った。
「よし、みんな揃ったな。じゃあ座っていいぞ」
ケイトにそう言われると、7名の隊長は一斉に座った。
「今回はヴォルドが王室特殊兵団に推薦したい者がいるということで集まってもらった。ヴォルド、皆に説明を」
「はっ!」
ヴォルドはケイトに説明するよう言われると、自分の席を立ち話し始める。
「じゃあ早速本題に入るぞ」
他の隊長達の視線がヴォルドに集まっている。
そしてヴォルドは皆からしたら驚きの内容を話し始める。
「この度、王室特殊兵団規則第12項、団長及び隊長によるスカウト、推薦に基づき、1番隊隊長ヴォルド・ハイツの名において、ヤマト・ハナオカをす王室特殊兵団団員へ推薦を提案する」
ヴォルドがはっきりと言うと、会議室に衝撃が走った。
すると、ケイトとヴォルドの予想通り、サユリがテーブルをバン!と叩き、真っ先に反対してきた。
「なにを言ってるんですか?ヴォルド先輩!?あいつは異世界人ですよ!?仮に優れていたとしても王室特殊兵団には相応しくありません!」
「まあまあサユリ、落ち着こうよ。ヴォルドはまだ推薦に至った経緯を話していないだろ?判断は聞いてみてからでもいいんじゃないかな?」
サユリを宥めたのはジェイルだ。
サユリは少し落ち着き、ジェイルの言う通りに話を最後まで聞くことにした。
「続けていいよ、ヴォルド」
「すまねぇなジェイル。では続けるぞ」
再びヴォルドに視線が集まり、ヴォルドは説明を再開する。
「今回、大和を推薦しようと思ったのはこの戦いだ。皆に観てもらった方が早いかな」
そう言うとヴォルドは、映写魔法を使い、テーブルの中央にスクリーンを出現させる。
「今日の午前に演習場で撮った映像だ。そこで俺と大和は模擬戦をやった。先に結果を言うと、実戦初めての大和に、ハンデをつけたとはいえ俺が負けたよ」
ヴォルドが自分が負けとことを話すと、大和を推薦すると言った時よりも会議室に大きな衝撃が走った。
ただ、事前にそれを知っていたケイトは特に驚くことなくヴォルドの話を聞いている。
「まさか!?ヴォルド先輩が負けたなんてありえない」
ルイスは少し取り乱しそうになりながらヴォルドに言った。
「まあルイス、お前がそう言ってくれるのは嬉しいが、映像を見て欲しいね」
ヴォルドは指を鳴らすと、映像が
再生される。
スクリーンには、先程ヴォルドが言っていた通り、ヴォルドと大和の模擬戦の様子が映し出されている。
それを隊長達は、釘付けになるように観ている。
そして、問題のヴォルドが負けたシーンになると、隊長達は先程と同様に驚いていた。
映像が終わり、ヴォルドが皆に問う。
「まあ推薦理由はこれだけじゃないが、映像を観てどう思った?」
「正直驚きました。まさか本当にヴォルド先輩に勝ったなんて・・・」
ヴォルドの問いに最初に答えたのは、さっきヴォルドが負けたことを聞いて
信じられなかったルイスだ。
だが、彼が憧れる先輩のヴォルドが負けるのを映像で観たのだ。
なので今度は冷静に内容を判断できた。
「ヴォルド先輩、他の理由をお聞かせ願いたいのですが?」
次に言ったのはサユリだ。
どうしても異世界関係の大和を認めたくないらしい。
そしてヴォルドは説明を始める。
「ん?ああいいぜ。もう一つの理由としては、サユリ、お前にとっても悪い話ではないはずだ」
「・・・はい?」
サユリにとって悪い話じゃないと言われ、少し興味が湧いたようだ。
「皆はもう知ってるだろうが、異世界人の実例は少ない。だから元の世界に帰る方法も、別の世界に行く方法もわからない。これは王室特殊兵団の情報環境においても結果は簡単には変わらないだろう。そこで、大和を王室特殊兵団に入れて、働いてもらうことになれば、大和は王室特殊兵団の優れた情報環境を使うことができる。そうすれば元の世界に帰る方法が早く見つかる可能性が高い上、サユリのように大和の入団を認めたくないやつにとっては監視の意味がある」
「監視・・・ですか?」
サユリは興味深そうに聞く。
「ああ、そうだ。いちいち護衛ら監視の人員をこちらから出すより、王室特殊兵団側にいてもらった方が都合がいい。誰にとってもメリットが大きいと思うんだがどうだ?」
ヴォルドがそう言うと、隊長達はそれぞれ考える。
そして、ある一人が手を挙げて口を開く。
「ヴォルド、一ついいか?」
「ああ、いいぞ」
手を挙げたのは、5番隊隊長のアダム・メルファンだ。
アダムは現在の王室特殊兵団の中で、最も長くいる者で、ケイトの前任の団長が行方不明になった時、次期団長の地位をケイトと共に争った実力者だ。
そんな彼が気にしているのは、たった一つだ。
「本来は王室特殊兵団に入るには厳しい試験がある。そして、推薦やスカウトにより入団してくる者は試験を受けて入団してくる者達より優れていなければならない。確かに戦闘能力の面は申し分ない。団員の中でもヴォルドに勝てる者はそもそも少ないからな。ただ、問題は知識面だ。王室特殊兵団は軍ではなく、独立した特殊部隊のようなものだ。この世界のことを知らない者を入れて大丈夫か、ってところだけ俺は心配している」
アダムの質問、というか指摘は正しい。
だがヴォルドはその点もしっかり考慮していたようだ。
「ああ、そういうところは問題ない。戦ってみて思ったが、大和は魔法を理解するスピードが尋常じゃない。さらにそれを改良して自分の物に出来ている。それに、大和は今日の午後は図書館で本を読み漁っていたようだから、知識面も問題なくなるだろう。いや、そのうち俺らを超えるかもな」
隊長達は自分の中で結論を出す。
「じゃあ、多数決に入るぞ。それぞれ投票用紙に賛成か反対か書いて投票箱に入れてくれ。一応結果は俺しか見えないから遠慮なく自分の意思を書いてくれ」
ケイトが皆にそう言うと、隊長達は投票用紙を書き始め、書き終えた者から投票箱に入れていく。
ケイトも自分の投票用紙を記入し、投票箱に入れた。
そして、全員が投票を終えた。
ケイトが集計を始め、集計が終わると、ケイトは結果を皆に伝える。
「投票結果は・・・賛成6票、反対2票により、ヤマト・ハナオカの入団を、 王室特殊兵団として認める。会議はこれにて終了とする。皆ご苦労だった。それでは解散」
ケイトがそう言うと、隊長達はそれぞれ戻る場所に戻っていった。
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