この物語の意味を知るとき

益木 永

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〈第3章 秋、変わる色〉

第23話

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 その後、僕は荷物をまとめて家に帰宅する事にした。当然ながら、外は暗くなっているしこのままいても特に意味がない。

 一度文芸部の部室に戻った時も既に金住先輩たちは帰りの準備をし始めていたし、この流れなら僕も普通に返るべきだろう。

 そういう訳で帰宅する事にしたのだけれど……。

「おや、君は神代くんだね」
「あ、北村先生」

 帰る途中で顧問の北村先生と出会った。顧問の先生ではあるが、先生としての仕事が多忙な様で文芸部に来る事はそこまで多くないし、日によってはかなり短かったりする。そんな先生とこの時間に遭遇するのはとても珍しかった。

「お疲れ様です、先生」
「いやあ、わざわざ悪いね。いつも忙しくてこの時期になっても全然行けやしないというのにこんな丁寧に」

 この時期、というのは文化祭の準備期間の事を指すのだろう。

「先生がいなくても進行の方は問題ないですし、そもそも先生が顧問やってくれているお陰で部活動ができるので」
「まあ、そういう考え方もあるね。金住さんが私の代わりに仕切ってくれているのもあって、本当彼女には頭を上げれないよ」

 北村先生は、生徒を名字でさん付けする人だ。やはり数々の言い方からとても穏やかな先生らしい人だと思う。

「でも、金住先輩も北村先生には感謝していると思いますよ」
「そうかねえ。そうでしたら嬉しいとは思いますが」

 やはり、中々部活動に顔を見せられないのは罪悪感があるようだ。けれど、先生も仕事だから無理もない。

「それに、先輩方も僕も北村先生がとっても忙しいのはわかっていますし。むしろそんな中で顔出してくれるのはとてもうれしいですよ」
「そうですか。そんな風に思ってくれる生徒たちがいてくれて本当に嬉しい限りです」

 そのように北村先生は穏やかな微笑みを見せながら話す。

「それじゃあ、僕はそろそろ」
「わかりました。ではまた明日」
「はい!」

 僕は、先生と別れてそのまま下駄箱の所で靴に履き替えて学校を出て行った。


 翌日、登校した僕はそのまま教室へと入るといずみに話しかけられた。

「おはよ~!」
「おはよう」

 最初はこんなあいさつだった。直後、こんな事をいずみが言った。

「昨日、金住先輩に話した?」
「話した? ……もしかして手伝いの事?」
「そうそう。他の二人は気にしているから、早めに聞いておきたかったんだよ」

 そう。手伝いの件はメッセージアプリでは伝えていない。というのも昨日は皆、夜はちょっと用事があったのだ。塾だったり、アルバイトだったり。そんな中で手伝うと言い出してくれたのは、とっても有難い事ではあるのだが……。

「金住先輩、検討はするけど結構厳しい結果になるって言ってたな~」
「そうか~……。まあ、自分たちのリソースだけでしかできない事ってあるもんね」

 それはそうなのだ。金住先輩が厳しいと話したのもあくまで部活内での活動という事もあり、部外者となる人物がそれを手伝っていいのか? という疑問が生まれる事になる。つまり、部外者に手伝わせるのはあまりよろしくないという事なのだ。

 その直後、スマートフォンから振動が鳴る。

「あ、ちょっと確認してもいい?」
「いいよ? もしかして、先輩から?」
「多分そうかも」

 そうして通知からメッセージアプリを開くとそこにはこんな文面が。

『気持ちはありがたいが、残念ながら手伝ってもらうのは厳しそうだ。すまない』
「……ダメっぽい」
「そうみたいだね~」

 彼らにも後で伝えておかないといけない。しっかり忘れない様にしないと。


 授業中の休み時間に話す機会があったので友人に今朝来た金住先輩の返答を伝えた。二人はとても残念そうにしていたが、頑張れと励ましのエールが送られた。そこでチャイムが鳴ってしまったので解散したけれど。

 その後は何事もなく授業を受けた。そして、放課後。僕はすぐに文芸部の部室に顔を出すと、そこにはいつもあまりいないあの人がいた。

「こんにちは~」
「こんにちは、神代くん」
「……え? 北村先生」

 ドアを開けて挨拶すると、そこには金住先輩と話していたらしき様子の北村先生がいた。

「昨日ぶりだね」
「はい……今日は行ける日なんですね」

 おかげ様でね、と北村先生は答えた。すると、そこに金住先輩が入ってきた。

「北村先生、今日は最後まで入れるそうだ。今日は少し楽だ」
「すまないね、金住。結構な仕事詰め込んで」

 いえ、先生が忙しいなら私が代わりにやるだけです、と金住先輩は答えた。その後も会話が続いていたのだが……何かちょっと会話が弾んでいるようで、金住先輩が割とハキハキといつも以上の勢いで話している。

「薫君、来たみたいね」
「母野先輩っ」

 真ん中の大きい席で、北村先生の向かい側に座っていた母野先輩が声を掛けてきてくれた。彼女も早く来ていたそうだった。

「こんにちは。……なんというか、金住先輩はいつも以上に元気な気がしますね」
「うふふ、そうでしょ?」

 なんだか得意げに答える母野先輩。どこが誇らしげなんだろうと思うと、意外な言葉を投げかけた。

「北村先生はね、やすみの考え方に強く影響を与えた人なの」
「……え?」

 そう、母野先輩は切り出した。


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