22 / 33
〈第3章 秋、変わる色〉
第22話
しおりを挟む
15
「ふむ、カオルの友人が手伝いたいって言ってきたんだね?」
「はい、そんな感じです」
翌日、早速部室にやってきた僕は金住先輩に昨日あった事を相談した。一応、ではあるのだが関係あるとは言えない部活外の人が部活の作業を手伝う事は確認を通さなければいけないと思い、僕は部長である金住先輩に相談する事にしたのだが。
「なるほどね……」
「難しいでしょうか?」
「正直に言えば、手伝ってくれるのはありがたい」
けれど、と金住先輩は続けて話す。
「リクを見ればわかるが相当な重労働だ。君も共に手伝っているからわかると思うけど」
「まあ、そうですよね」
「その上安易に手伝いを増やしたらトラブルも起こる可能性がある。ただでさえ君が急に手伝うって言い出した時点でフォロー大変だからね」
「はい……」
トラブル、という言葉は強い。それが常に起こりえる危険性があるだけで、なるべくそれを避けようと、穏便に済ませようと行動するのが人間というものだ。まさに、この状況は一歩間違えたらトラブルに繋がるかもしれない。
「担当していた人が抜ける事になると、スケジュールが破綻してしまったりするから下手に手伝わせて良くない結果になるのは望まない」
「そ、そうですか……」
「リクの件に関しては前から決まってた事だし、君が入部してくれたからフォローが聞いたけれど、急なものはかなり厳しいとしか」
金住先輩に聞いてみた結果としては少し厳しい内容で返されたという事だった。しかし、金住先輩は最後に、
「一つ例外があるとしたら、急なトラブルで対応しなければならなかった時に協力を取り付けてくれたらいい筈だ」
とは言っていた。まあ、とりあえず急な手伝いは難しい側面もあるという事で今はしばらく考えさせてほしい、というのが大まかな答えだった。
これに関してはあまりにも突然な事だったので、仕方ないのかもしれないけれど。
その後は、何の問題も無く準備が進んだ。一応、今日も演劇部の方で行村先輩からの相談が入っているので途中でそちらの方へ向かう事になるのだが。
「そろそろ行ってきますね」
「わかったわ。頑張ってね」
「しっかりとそっちでもやるんだ」
時間になったので僕は先輩方に声掛けして部室を出る。二人とも、しっかりと返事してくれたのはとてもありがたい。気にかけている証拠なのだろう。
「行村先輩、ただいま来ました」
「おう。それじゃ始めますか」
演劇部の部室の方へと向かうと行村先輩と演劇部の部長さんが並ばれていた机といすに座って待っていた。多分、二人で話し合い用の席の準備をしてくれたのだろう。
「すみません、わざわざ用意していただいて」
「いいのいいの。協力してもらえるのならせめて最低限でも助けてあげなきゃね」
演劇部の部長さんは朗らかな笑顔でどうってことない、というのをアピールしている様だった。部長さんは行村先輩や金住先輩らと同じく二年生。つまり、僕の先輩にあたる人だ。
「でも、いつも準備をしてくれるのは流石に申し訳ない気が」
「もぉ~! あたしが好きでやってるからいいんだって!」
本当にそれだけでやられたら余計申し訳ないのだが……。でも、それを無下にするのも良くない。僕はあえて何も変な事を言わずに。
「それなら良いんですけど」
と返す。演劇部の部長さんは『ちょっと納得してなさそ~』と少し不満顔になる。
「そんなに感謝されたいか?」
「されたい! という訳でありがとうございますって言って!」
「ええ?!」
「無理に言わせるのは良くないぞー」
「ううぅ……」
こちらの部長さん、金住先輩とは別ベクトルで変人な気がしてきた……。
「まあこういう感じで行った方が良いと思います……あ」
話し合いを重ねて行って脚本の修正や擦り合わせをしていると、いつの間にか時間が遅くなっていたりする。そんなこんなでもう夕方になっていた。
「時間、ですね」
「それじゃあ今日はこの辺りで。修正はこの後俺ん家でしてくる」
「任せたー! いやあ、文芸部も忙しいのにありがたいね~!」
カラッとした笑顔で部長さんは言う。
「そういえば、どうして行村先輩が演劇部の舞台の脚本書くことに?」
「ああ、それねーちょっと色々あって」
「確か演劇部で脚本揉めて去年話が書けそうな人がいそうという理由で文芸部に泣きついて来たのがきっかけだったな」
ちょ、そこまで言わなくても! と部長さんは慌てだした。
「脚本揉めてたんですか?」
「皆で作って、全然方向性が定まらなかったからな。今回は急ではなく事前準備していたから去年程はキツくはない」
「色々言わないでよ後輩君からのイメージ下がっちゃう~!」
それで下がってもあんまり……いや、もし入部イベントとかで良い印象残しておかないと来てくれる人が減ってしまうからか。
「いいだろ、薫が何も言わなかったらな」
「え!? あ、はい!」
何か急に話を振られてしまった。地味に部長さんから目力で圧を掛けられているような気がする。横目で彼女の顔を見ると明らかに凄い顔でこちらを見てくる。
「い、言わないので大丈夫です」
「ホント! それじゃあよろしくね~!」
……もしかしたらこの学校の部長は中々個性派揃いなのかもしれない。
「ふむ、カオルの友人が手伝いたいって言ってきたんだね?」
「はい、そんな感じです」
翌日、早速部室にやってきた僕は金住先輩に昨日あった事を相談した。一応、ではあるのだが関係あるとは言えない部活外の人が部活の作業を手伝う事は確認を通さなければいけないと思い、僕は部長である金住先輩に相談する事にしたのだが。
「なるほどね……」
「難しいでしょうか?」
「正直に言えば、手伝ってくれるのはありがたい」
けれど、と金住先輩は続けて話す。
「リクを見ればわかるが相当な重労働だ。君も共に手伝っているからわかると思うけど」
「まあ、そうですよね」
「その上安易に手伝いを増やしたらトラブルも起こる可能性がある。ただでさえ君が急に手伝うって言い出した時点でフォロー大変だからね」
「はい……」
トラブル、という言葉は強い。それが常に起こりえる危険性があるだけで、なるべくそれを避けようと、穏便に済ませようと行動するのが人間というものだ。まさに、この状況は一歩間違えたらトラブルに繋がるかもしれない。
「担当していた人が抜ける事になると、スケジュールが破綻してしまったりするから下手に手伝わせて良くない結果になるのは望まない」
「そ、そうですか……」
「リクの件に関しては前から決まってた事だし、君が入部してくれたからフォローが聞いたけれど、急なものはかなり厳しいとしか」
金住先輩に聞いてみた結果としては少し厳しい内容で返されたという事だった。しかし、金住先輩は最後に、
「一つ例外があるとしたら、急なトラブルで対応しなければならなかった時に協力を取り付けてくれたらいい筈だ」
とは言っていた。まあ、とりあえず急な手伝いは難しい側面もあるという事で今はしばらく考えさせてほしい、というのが大まかな答えだった。
これに関してはあまりにも突然な事だったので、仕方ないのかもしれないけれど。
その後は、何の問題も無く準備が進んだ。一応、今日も演劇部の方で行村先輩からの相談が入っているので途中でそちらの方へ向かう事になるのだが。
「そろそろ行ってきますね」
「わかったわ。頑張ってね」
「しっかりとそっちでもやるんだ」
時間になったので僕は先輩方に声掛けして部室を出る。二人とも、しっかりと返事してくれたのはとてもありがたい。気にかけている証拠なのだろう。
「行村先輩、ただいま来ました」
「おう。それじゃ始めますか」
演劇部の部室の方へと向かうと行村先輩と演劇部の部長さんが並ばれていた机といすに座って待っていた。多分、二人で話し合い用の席の準備をしてくれたのだろう。
「すみません、わざわざ用意していただいて」
「いいのいいの。協力してもらえるのならせめて最低限でも助けてあげなきゃね」
演劇部の部長さんは朗らかな笑顔でどうってことない、というのをアピールしている様だった。部長さんは行村先輩や金住先輩らと同じく二年生。つまり、僕の先輩にあたる人だ。
「でも、いつも準備をしてくれるのは流石に申し訳ない気が」
「もぉ~! あたしが好きでやってるからいいんだって!」
本当にそれだけでやられたら余計申し訳ないのだが……。でも、それを無下にするのも良くない。僕はあえて何も変な事を言わずに。
「それなら良いんですけど」
と返す。演劇部の部長さんは『ちょっと納得してなさそ~』と少し不満顔になる。
「そんなに感謝されたいか?」
「されたい! という訳でありがとうございますって言って!」
「ええ?!」
「無理に言わせるのは良くないぞー」
「ううぅ……」
こちらの部長さん、金住先輩とは別ベクトルで変人な気がしてきた……。
「まあこういう感じで行った方が良いと思います……あ」
話し合いを重ねて行って脚本の修正や擦り合わせをしていると、いつの間にか時間が遅くなっていたりする。そんなこんなでもう夕方になっていた。
「時間、ですね」
「それじゃあ今日はこの辺りで。修正はこの後俺ん家でしてくる」
「任せたー! いやあ、文芸部も忙しいのにありがたいね~!」
カラッとした笑顔で部長さんは言う。
「そういえば、どうして行村先輩が演劇部の舞台の脚本書くことに?」
「ああ、それねーちょっと色々あって」
「確か演劇部で脚本揉めて去年話が書けそうな人がいそうという理由で文芸部に泣きついて来たのがきっかけだったな」
ちょ、そこまで言わなくても! と部長さんは慌てだした。
「脚本揉めてたんですか?」
「皆で作って、全然方向性が定まらなかったからな。今回は急ではなく事前準備していたから去年程はキツくはない」
「色々言わないでよ後輩君からのイメージ下がっちゃう~!」
それで下がってもあんまり……いや、もし入部イベントとかで良い印象残しておかないと来てくれる人が減ってしまうからか。
「いいだろ、薫が何も言わなかったらな」
「え!? あ、はい!」
何か急に話を振られてしまった。地味に部長さんから目力で圧を掛けられているような気がする。横目で彼女の顔を見ると明らかに凄い顔でこちらを見てくる。
「い、言わないので大丈夫です」
「ホント! それじゃあよろしくね~!」
……もしかしたらこの学校の部長は中々個性派揃いなのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる