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〈第4章 冬、物語の意味を知るとき〉
第30話
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そんな今までを振り返った日があって、僕は来年度の高校生活の事もあって、色々悩む事はあるけれど、でも同時に目の前の事に集中してみようと思えた。その一つが金住先輩の出した課題だ。
着実に、着実に文は出来始めている。途中の文を時々読み返して他人から見てわかるかどうか、しっかりと見て修正をしている。これは、金住先輩から聞いた基本テクニックみたいなものだと言っていた。
『誰かによりわかりやすく伝えたい、と思った時は読み返すといいよ。そうしたら、わかってくれる筈だから』
実際、この読み返して修正を繰り返したら文章の完成度が着実に上がってきているなと感じたりする。
……無論、その様な修正も加えてしまっているために完成に時間が掛かっているのも事実ではあるのだが。
けれど、彼女が言っていた『一年』という期限は来年度になるまで……後輩が来るまでの間という事だ。つまり、期限は三月の終業式まで。
「頑張らないとな……」
その文書の作成は基本的に場所を問わず、時間を決めてやっていた。
友達に『課題』の事は話しているので、友達と集まっている最中でも少しだけ時間を貰って一人でその作業をしたり、帰ったら自分の部屋でまた作業をしたりと行った日々をこの三学期中は繰り返していた。
今までの生活のサイクルに、突然割り込む様に。けれど、自然にそのサイクルは僕の中で適応していった。
しばらく経つと、友人から『そろそろ時間じゃないか?』と聞いてくれたりとかもしてくれた。その時はしっかりお言葉に甘えて僕は作業を始めた。
……まあ、三学期はそのような日々を過ごしていった僕なのだけれど、それ以外の事も無視は全くせずになるべく頑張って取り組んでいった。
テスト勉強や提出物も怠ける事なく取り組んでいったし、部活動の文芸冊子製作作業もしっかり手伝っていった。
……全部抱えるのは大変なので、たまに休む日を設けたりもしたけれど。
とにかく、三学期は文化祭が終わって一息つける……訳でもなく多忙な日々だったのは間違いない。そう思う事自体が、後々痛い目を見る原因なのかもしれないけれど。
まあ、そんな感じの日々が続いてある日――
僕は改めて、『物語の意味』について考える事が一度あったのだ。
「カオル、ちょっと冊子についての作業手伝ってくれないかい?」
その日、金住先輩はいつも通りなんともない顔で部室で僕にこのように声を掛けてきたのだ。
「はい、いいですよ」
それ自体はいつも通りの事なので、僕は自然に答えてそのまま手伝いのために職員室に向かっていった。作業手伝いというのは印刷版のチェックである。
僕が入るまでは音無先輩と金住先輩が二人でそのチェックをしていたのだが、音無先輩が卒業してからは入れ替わる様に僕が担当する流れになっていった。まあ、僕には母野先輩や行村先輩の様な小説を書き続ける自信は無いのでこの仕事には不満がない。
その道中、彼女はこのような話を切り出してきた。
「どうやら、来年は顧問が変わるという話らしい」
「……えええ!?」
突然の事に反応の遅れた僕は、彼女の言った言葉の意味を理解して絶叫を上げる。金住先輩は耳を咄嗟にふさいだ。
「……いきなり叫ぶのは驚く、あまり良くないよ」
「す、すみません……突然、そんな事を言ってきたのでびっくりして」
けれど、何でそんな話が金住先輩の口から出てきたのか。
「まあ、私も確証があるわけではないのだけどね」
「え、は、はい……」
それなら心臓に悪い事を話さないでほしかった……が、彼女の事なのでこう言った細かい小言の様なものはすぐに忘れてしまうだろうけど。
「まあ、そういう話になってるのは北村先生が他の学校に行くらしいって話をたまたま聞いてね……どうやら転勤、というやつらしい」
「そ、そうなんですか……」
それなら、金住先輩が顧問が変わるという話をするのは納得である。……まあ、噂レベルなら余計に言わなくてもいい事ではないか、と思うけど金住先輩がこのような話をするのもなんとなく見えてくる。
きっと、北村先生がいなくなるのが不安なのだろう。
「金住先輩って、北村先生の事になるといつもより変な感じになりますよね」
「……それは、けなしているのかい?」
「あ……いえ、そんな事は含めてないです」
まあ、正直金住先輩があの先生の話になると、いつもより言葉遣いが変な感じになる様な気がするのは端から見たらそう認識できる事実なのだが……あれ、ということは?
「なんとなく、君の言いたい事は見えてくるが私は北村先生に恋愛的な感情を持ったことはない。倫理的な問題と、年齢差を考えてほしい」
「あ、はい……すみません」
そんな感じで彼女からの説教を食らう事になった僕だけれど、そんな会話から改めて思った事がある。
たまに……というレベルではない事もあるけれど、自分の意志では変えられない出来事に遭遇して思った。
これにも『物語の意味』は間違いなくある、と。
そう思った僕はより、あの作文の形を変える様に新たな作業を始めていく事にした。
着実に、着実に文は出来始めている。途中の文を時々読み返して他人から見てわかるかどうか、しっかりと見て修正をしている。これは、金住先輩から聞いた基本テクニックみたいなものだと言っていた。
『誰かによりわかりやすく伝えたい、と思った時は読み返すといいよ。そうしたら、わかってくれる筈だから』
実際、この読み返して修正を繰り返したら文章の完成度が着実に上がってきているなと感じたりする。
……無論、その様な修正も加えてしまっているために完成に時間が掛かっているのも事実ではあるのだが。
けれど、彼女が言っていた『一年』という期限は来年度になるまで……後輩が来るまでの間という事だ。つまり、期限は三月の終業式まで。
「頑張らないとな……」
その文書の作成は基本的に場所を問わず、時間を決めてやっていた。
友達に『課題』の事は話しているので、友達と集まっている最中でも少しだけ時間を貰って一人でその作業をしたり、帰ったら自分の部屋でまた作業をしたりと行った日々をこの三学期中は繰り返していた。
今までの生活のサイクルに、突然割り込む様に。けれど、自然にそのサイクルは僕の中で適応していった。
しばらく経つと、友人から『そろそろ時間じゃないか?』と聞いてくれたりとかもしてくれた。その時はしっかりお言葉に甘えて僕は作業を始めた。
……まあ、三学期はそのような日々を過ごしていった僕なのだけれど、それ以外の事も無視は全くせずになるべく頑張って取り組んでいった。
テスト勉強や提出物も怠ける事なく取り組んでいったし、部活動の文芸冊子製作作業もしっかり手伝っていった。
……全部抱えるのは大変なので、たまに休む日を設けたりもしたけれど。
とにかく、三学期は文化祭が終わって一息つける……訳でもなく多忙な日々だったのは間違いない。そう思う事自体が、後々痛い目を見る原因なのかもしれないけれど。
まあ、そんな感じの日々が続いてある日――
僕は改めて、『物語の意味』について考える事が一度あったのだ。
「カオル、ちょっと冊子についての作業手伝ってくれないかい?」
その日、金住先輩はいつも通りなんともない顔で部室で僕にこのように声を掛けてきたのだ。
「はい、いいですよ」
それ自体はいつも通りの事なので、僕は自然に答えてそのまま手伝いのために職員室に向かっていった。作業手伝いというのは印刷版のチェックである。
僕が入るまでは音無先輩と金住先輩が二人でそのチェックをしていたのだが、音無先輩が卒業してからは入れ替わる様に僕が担当する流れになっていった。まあ、僕には母野先輩や行村先輩の様な小説を書き続ける自信は無いのでこの仕事には不満がない。
その道中、彼女はこのような話を切り出してきた。
「どうやら、来年は顧問が変わるという話らしい」
「……えええ!?」
突然の事に反応の遅れた僕は、彼女の言った言葉の意味を理解して絶叫を上げる。金住先輩は耳を咄嗟にふさいだ。
「……いきなり叫ぶのは驚く、あまり良くないよ」
「す、すみません……突然、そんな事を言ってきたのでびっくりして」
けれど、何でそんな話が金住先輩の口から出てきたのか。
「まあ、私も確証があるわけではないのだけどね」
「え、は、はい……」
それなら心臓に悪い事を話さないでほしかった……が、彼女の事なのでこう言った細かい小言の様なものはすぐに忘れてしまうだろうけど。
「まあ、そういう話になってるのは北村先生が他の学校に行くらしいって話をたまたま聞いてね……どうやら転勤、というやつらしい」
「そ、そうなんですか……」
それなら、金住先輩が顧問が変わるという話をするのは納得である。……まあ、噂レベルなら余計に言わなくてもいい事ではないか、と思うけど金住先輩がこのような話をするのもなんとなく見えてくる。
きっと、北村先生がいなくなるのが不安なのだろう。
「金住先輩って、北村先生の事になるといつもより変な感じになりますよね」
「……それは、けなしているのかい?」
「あ……いえ、そんな事は含めてないです」
まあ、正直金住先輩があの先生の話になると、いつもより言葉遣いが変な感じになる様な気がするのは端から見たらそう認識できる事実なのだが……あれ、ということは?
「なんとなく、君の言いたい事は見えてくるが私は北村先生に恋愛的な感情を持ったことはない。倫理的な問題と、年齢差を考えてほしい」
「あ、はい……すみません」
そんな感じで彼女からの説教を食らう事になった僕だけれど、そんな会話から改めて思った事がある。
たまに……というレベルではない事もあるけれど、自分の意志では変えられない出来事に遭遇して思った。
これにも『物語の意味』は間違いなくある、と。
そう思った僕はより、あの作文の形を変える様に新たな作業を始めていく事にした。
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