伴侶設定（♂×♂）は無理なので別れてくれますか？

竜騎士は紳士だった

◆◆◆◆◆


竜騎士のタイタス = ランカスターは、真剣な表情で俺に手を差し出す。だが、勿論その手を取るつもりはない。何故なら、飛竜に乗るのが怖いから！

「大丈夫です。その、タイタス様とお呼びすべきですね。私は、どこにも異常はありません。ですから、医者の診察は不要です」

「だが、貴方は孕み子だ。詐欺師に衣服を剥ぎ取られたのなら・・医師の診察を勧める」

なるほど。竜騎士は、俺が詐欺師に凌辱されたのではと、心配しているのか。まあ、詐欺師の存在事態が嘘なので、あり得ない話だけどね。

「私は普段から、孕み子だと分からないように、化粧等はせず、衣服も華美な物は身に付けません。先ほど、タイタス様が、私を男と思ったように、詐欺師も私を男と思い込んだようです。衣服は奪われましたが、何もされてはいません。お気遣い有難うございます」

俺がそう言っても、竜騎士は引き下がらなかった。そして、話は、竜騎士の過去に触れるものとなった。

「俺の幼馴染みが、孕み子だった。あまり着飾る事のない孕み子だったが、元気で愛らしい人だった。だが、ある日を境に人が変わってしまった。家から出ることが減り、俺と顔を会わせることも減った。そして、ある日、幼馴染みは湖に身を投じ亡くなった。その後、幼馴染みの両親から、遺書を見せられた。そこには、男に凌辱され、孕んでしまった事が書かれていた。俺は男の名に覚えがあった。幼馴染みに付きまとっていた男だった。だから、俺はその男を切り刻んでゴミ捨て場に捨てた。だが、そんな事をしても、幼馴染みは帰ってこない。様子がおかしいと感じた時に、医者に連れて行くべきだった。産むか堕胎するかは、本人の判断に任せるにしでも、死より別の選択肢が有ることを、幼馴染みに知って欲しかった」

話が長い！そして、話が重すぎる！美形な竜騎士にそんな説得をされては、手をとるしかないではないか！これが、乙女ゲームなら、必ず竜騎士の手をとるだろう。

しかしなぁ、今は自分自身が、どんな状態なのか分からない段階だからなぁ。即死して、転移？いや、転生か？とにかく、むやみに医師の診察とか受けて、聴診器を胸に当てられ・・心臓が動いてなかったらどうする？確実に化け物扱いだろ。もしくは、魔物か。うーん。

「やはり、医者は必要ないかと思います。その、これで失礼いたします、タイタス様」

乙女ゲーム的には、駄目な選択肢を選んだ感じがするが仕方ない。

「お待ちなさい、マコト」

立ち去ろうとする俺に、竜騎士がまた声を掛けてきた。これだけ、しつこく声かけするのは何かのフラグか？一緒に行動しないと、まずいことに巻き込まれるとか？乙女ゲームならあり得る。

そんな事を考えていると、竜騎士が突然、剣柄に手を掛けた。だが、すぐに竜騎士の様子はのんびりしたものに変わる。

「ずいぶんと、殺気を垂れ流しにして・・無作法ですよ、ソウタ？」

「垂れ流しとか厭らしい言葉を使うな。ランカスター家の王子様？」

突然現れた相手が知人と知り、竜騎士はのんびり口調になったのか。だが、双方ともに剣の柄に手を宛がったままだ。俺はごくりと唾を飲み込んだ後に、竜騎士に話しかけていた。

「タイタス様、彼は私の伴侶です。そうだよね、蒼汰？」

「ああ、お前は俺の伴侶だ、誠」

俺はここにきて、ようやく状況を理解した。どうやら、蒼汰と俺はゲーム世界に転生したらしい。


◆◆◆◆◆◆