伴侶設定(♂×♂)は無理なので別れてくれますか?

月歌(ツキウタ)

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伴侶契約の解消を相談中

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◆◆◆◆◆


自宅に戻った、俺と蒼汰はテーブルで顔を付き合わせ、情報のすりあわせをした。蒼汰は俺を迎えに来る途中で、ギルドに寄ったそうだ。その時に、知り合いの日本人プレイヤーを見つけ声を掛けたらしい。

「奴も俺とは顔見知りの様に接してきた。だから、俺はそいつに探りをいれた訳。俺は奴にさりげな~く、ここがゲーム世界である事を伝えた。で、知り合いを交えて、現実世界でオフ会しねーかって誘った。そしたら、そいつポカーンとした顔をして、『疲れているのか、ソウタ?』と言ってポーションくれた。これが、そのポーションだ・・」

蒼汰は、テーブルにもらったポーションを置いた。俺は実物のポーションを眺めながら、口を開いていた。

「つまり、蒼汰が死ぬ前からの知り合いのプレイヤーは、蒼汰の顔見知り設定のまま、プレイヤーではなくなっている訳だ?」

「この世界では、俺たちが異質な存在って事だ。とにかく、意識を改める必要がある。試すことは出来ないが、この世界で命を落とすとマジ死ぬ可能性が高い。しばらくは、薬草摘みも、魔物狩りも控えた方がいいと思う」

「蒼汰にしてはマトモな意見だな。でも、この家のローンはどうするの?」

蒼汰が頭を抱える。

「やっぱり、頭金をもっと貯めてから家を購入すべきだったな。せめて、俺たちに子が生まれてから、家を購入すべきだった」

俺は蒼汰の言葉に、思わず笑った。

「伴侶契約してから、一週間以内に初夜を迎えると、運営から特典を貰えるからって蒼汰は必死だったよぬ。しかし、セックスを成功させるのは、実に難しかった」

「誠アバターの、初夜練習中の動きがぎこちなくて笑ったな。まあ、セックスを成功させる為に、エンジョイ勢の誠がゲーミングPCを購入した時には・・ちょいびびったけど。キーボードでのアバター操作が難しすぎると言って、ゲームパッドまで購入してさあ。俺は絶対キーボードの方が操作しやすいけどな?」

「いや、無理だろ。まずベッドの上で四つん這いになることが、最大の難関だった。キーボード操作から、ゲームパッドに変更して、多少は動作は安定したけどね」

「・・あれ以来、セックスレスになったな」
「初夜のセックスで懲りたからね」
「俺は誠を誘ったが、断られたものな」

「いや、まじで四つん這の維持が難しいから。蒼汰アバターが、がしかし腰を振る度に、誠アバターはバランスを保つために、ゲームパッドで絶妙な操作が必要だったからね。初夜の後は、本当にセックスしたみたいに疲れたから」

「この異世界でセックスすると、どんな感じなんだろうな、誠?」

俺は蒼汰の戯れ言に付き合う気はなかった。それより、現実的な問題を解決しなければ。

「それで・・どうする、蒼汰?家を売る?ここは、王都の大通りに近いし、結構な金額で売れると思うよ?」

「誠、その後はどうするつもりだ?二人で住む部屋を探すにしても、王都の賃貸も高いぞ?」

「ギルドの冒険者用の寮を借りたらどうだ?」

「伴侶契約した者は住めないだろ?格安だが、あそこは独身寮だからな」

俺はしばらく考えた後に、思いきって提案した。

「伴侶契約を解消しない、蒼汰?」
「え?」

「蒼汰はいつも、遠征を一ヶ月間と区切って、この家に帰って来てくれていたけど、それって伴侶契約が解消されないようにするためだろ?伴侶契約すると、色々王国から優遇があるから、私は助かっていたけど・・蒼汰はもっと長く遠征に出掛けて、冒険を満喫したかったのではない?」

蒼汰はちょっと困った顔をした。

「まあ、確かに長く旅をして、様々な土地の珍しい鉱石を手に入れて、武器強化に勤しみたかったが・・」

「じぁ、伴侶契約を解消しようよ」
「いや、まて!」
「ん?」

「誠はこの世界で、一人で生きれるのかよ?薬草摘むだけじゃ、生活はやっていけない」

「実は、蒼汰には黙っていたけど、ギルドの事務職の試験を受けて合格していたんだよね。ギルド職員の免許があるから、いつでも就職は可能なんだよ。王都のギルドはむりでも、地方のギルドなら求人はあるから、生活はできると思うよ?」

「マジかー、マジかー、」
「マジです」

「その、誠はそんなにも俺との伴侶契約を破棄したいのか?」

「ふむ。それは、蒼汰がでしょ?冒険中は伴侶がいない振りをしていたのだろ?そして、娼館に通ってた。これは、明らかに浮気だよね?」

「え、誠はあの話を気にしていたのか?」

「そりゃ、伴侶だから気にするよ。気にしないとでも思ったのかよ。するよ、嫉妬を」

「あー、それは・・つまりは、俺のことが少しは好きって事か?」

「うーん?そうなるのかな?」

俺が曖昧に答えると、突然蒼汰が立ち上がった。そして、寝室を指差し宣言した。

「よし!セックスの相性でこれからの事を決めるぞ、誠!」

「え?ええー?」

俺は蒼汰に手を引かれて、寝室に向かった。



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