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第一部 ヤン=ビーゲル
第3話 娼館主の息子、シノ
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◆◆◆◆◆
「ヤン、起きろ」
「っ‥、んっ、っ」
「ヤン!」
俺はハッとして身を縮こませる。情けないけどもう無理だ。もう、耐えられない。
「っ‥もう、ムリです。やめ、て‥‥」
「寝ぼけるなよ、ヤン。俺だ‥‥シノだ。客ならもう帰った。気絶してもガツガツとヤラれてたみたいだな。尻穴が腫れ上がってる」
徐々に意識がはっきりしてきて、僕は慌ててベッドから起き上がろうとした。でも、力が出なくてそのままベッド上に崩れ落ちる。
「起き上がるのも無理か。まかないのスープを持ってきたが、食うのは無理か?」
「シノ、その‥‥食欲が無くて」
「意識がはっきりしてきた様だな」
「うん‥‥はっきりしてきた」
シノは娼館主ハンスの息子だ。娼婦や男娼の世話をするのが仕事で、頻繁に顔を合わせている。
それでも裸の姿を見られるのは辛くて、ベッド上の布を手繰り寄せて体に巻き付けた。
「ヤン、公衆浴場の常駐医に治療してもらえ。ヤブ医者だが治療しないよりマシだ。その後スープを飲むといい。そうしようぜ、ヤン」
シノはそう言うと小さなテーブルの上にスープを置く。僕はその様子を見ながらシノに声を掛ける。
「治療はいいよ。金がもったいないし、薬を買って自分で治療するから。でも、お風呂には行きたい。ハンスの許可出るかな?」
公衆浴場には常駐の医者がいる。不祥事を起こして最終的にこの色街に流れてきたヤブ医者。
公衆浴場で男や女のアソコを治療して飯を食っているが、評判は良くない。
「親父には許可を得てる。じゃ、抱っこしていくぞ」
「シノ!ちょっと待って!歩けるから。抱っこはやめてくれ」
僕の抗議はあっさりと無視された。シノは布にくるまれた僕を抱き上げる。そして、左肩に乗せた。やはりこうなったか!
「シノ、僕の尻出てない?見えてない?いや、見えてるよな?半ケツの予感がする。」
「ん?まあ、半ケツだが風呂は近所だし別にいいだろ。」
シノは娼館主の息子に育ったので、裸の男や女に抵抗がない。シノもよく裸でウロウロしている時があるし、本人に意地悪をしている意図はないと思う。
でも、僕は貴族として育ったので……半ケツがすごく恥ずかしい。
「シノ、シノ!」
「なんだよ、ヤン」
「お姫様抱っこ!」
「はっ?なんでだよ。恥ずかしいだろ。なんで俺がヤンを恭しく抱かないと駄目なんだよ。第一、そんな事したらお前とデキてると思われて女にモテなくなる。嫌だ」
「僕のプライドのために、お姫様抱っこしろ!いや、してくれ!」
「無理だ。いくぞ」
「シノーーー!?」
シノの肩に乗っかったまま、娼館の部屋を後にした。娼館の大部分は娼婦の部屋で占められていて、その片隅に男娼の部屋が5室ほど確保されている。
『あっ、あ~、いい、そこっ、貫いて。ひぁ、いい。イク、イク!』
娼館の裏口に向かうには、男娼の部屋の前を通る必要がある。扉は閉じていても男達の交わりの声や音は聞こえる。
誰を抱くか悩んでいる男客が廊下で、その声に聞き入っている。そんな彼らの視線が一気にシノと僕に向かう。だから肩に担がれるのは嫌だったんだ。
「おー、穴が丸見えだな。あれは派手にヤラれてるな。」
「ヤンか。一回抱いたがけっこう締まってたぞ。また抱きてぇなあ~。」
男達の声に耐えかねてシノの肩を叩いた。
「痛っ。なんだよ、ヤン」
「恥ずかしい」
「慣れろよ……男娼だろ?」
「男娼でも恥ずかしい」
「……泣くなよ。しゃあねーなぁ」
泣いてない。
そう言いたかったが、シノが抱き直してお姫様だっこにしてくれたのでその胸に顔を押し付けた。
泣いてなんかいない‥‥。
◆◆◆◆◆◆
「ヤン、起きろ」
「っ‥、んっ、っ」
「ヤン!」
俺はハッとして身を縮こませる。情けないけどもう無理だ。もう、耐えられない。
「っ‥もう、ムリです。やめ、て‥‥」
「寝ぼけるなよ、ヤン。俺だ‥‥シノだ。客ならもう帰った。気絶してもガツガツとヤラれてたみたいだな。尻穴が腫れ上がってる」
徐々に意識がはっきりしてきて、僕は慌ててベッドから起き上がろうとした。でも、力が出なくてそのままベッド上に崩れ落ちる。
「起き上がるのも無理か。まかないのスープを持ってきたが、食うのは無理か?」
「シノ、その‥‥食欲が無くて」
「意識がはっきりしてきた様だな」
「うん‥‥はっきりしてきた」
シノは娼館主ハンスの息子だ。娼婦や男娼の世話をするのが仕事で、頻繁に顔を合わせている。
それでも裸の姿を見られるのは辛くて、ベッド上の布を手繰り寄せて体に巻き付けた。
「ヤン、公衆浴場の常駐医に治療してもらえ。ヤブ医者だが治療しないよりマシだ。その後スープを飲むといい。そうしようぜ、ヤン」
シノはそう言うと小さなテーブルの上にスープを置く。僕はその様子を見ながらシノに声を掛ける。
「治療はいいよ。金がもったいないし、薬を買って自分で治療するから。でも、お風呂には行きたい。ハンスの許可出るかな?」
公衆浴場には常駐の医者がいる。不祥事を起こして最終的にこの色街に流れてきたヤブ医者。
公衆浴場で男や女のアソコを治療して飯を食っているが、評判は良くない。
「親父には許可を得てる。じゃ、抱っこしていくぞ」
「シノ!ちょっと待って!歩けるから。抱っこはやめてくれ」
僕の抗議はあっさりと無視された。シノは布にくるまれた僕を抱き上げる。そして、左肩に乗せた。やはりこうなったか!
「シノ、僕の尻出てない?見えてない?いや、見えてるよな?半ケツの予感がする。」
「ん?まあ、半ケツだが風呂は近所だし別にいいだろ。」
シノは娼館主の息子に育ったので、裸の男や女に抵抗がない。シノもよく裸でウロウロしている時があるし、本人に意地悪をしている意図はないと思う。
でも、僕は貴族として育ったので……半ケツがすごく恥ずかしい。
「シノ、シノ!」
「なんだよ、ヤン」
「お姫様抱っこ!」
「はっ?なんでだよ。恥ずかしいだろ。なんで俺がヤンを恭しく抱かないと駄目なんだよ。第一、そんな事したらお前とデキてると思われて女にモテなくなる。嫌だ」
「僕のプライドのために、お姫様抱っこしろ!いや、してくれ!」
「無理だ。いくぞ」
「シノーーー!?」
シノの肩に乗っかったまま、娼館の部屋を後にした。娼館の大部分は娼婦の部屋で占められていて、その片隅に男娼の部屋が5室ほど確保されている。
『あっ、あ~、いい、そこっ、貫いて。ひぁ、いい。イク、イク!』
娼館の裏口に向かうには、男娼の部屋の前を通る必要がある。扉は閉じていても男達の交わりの声や音は聞こえる。
誰を抱くか悩んでいる男客が廊下で、その声に聞き入っている。そんな彼らの視線が一気にシノと僕に向かう。だから肩に担がれるのは嫌だったんだ。
「おー、穴が丸見えだな。あれは派手にヤラれてるな。」
「ヤンか。一回抱いたがけっこう締まってたぞ。また抱きてぇなあ~。」
男達の声に耐えかねてシノの肩を叩いた。
「痛っ。なんだよ、ヤン」
「恥ずかしい」
「慣れろよ……男娼だろ?」
「男娼でも恥ずかしい」
「……泣くなよ。しゃあねーなぁ」
泣いてない。
そう言いたかったが、シノが抱き直してお姫様だっこにしてくれたのでその胸に顔を押し付けた。
泣いてなんかいない‥‥。
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