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第二部 シノ=アングル
第5話 パン粥大好き!シノ大好き!
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◆◆◆◆◆
パン粥を口に運んだヤンは不意に妙な声を上げた。
「ん、んんんん!!」
目をとろりとさせたヤンは、頬を手で押さえ恍惚の表情を浮かべた。俺は驚いてヤンに声を掛ける。
「どうした、ヤン!?」
「ん~~、んん‥‥はぁう。」
「まさか、パン粥に媚薬でも入っていたのか?とにかく食べるのはやめろ、ヤン!」
俺が慌ててパン粥を取り上げようとすると、ヤンは目を座らせて静止する。
「駄目です!こんなに美味しいパン粥を取り上げないでください!鬼畜ですか、シノ。」
「鬼畜!?」
シノは再びパン粥を食べて目を嬉しそうに細めた。俺はその様子に呆れてため息をつく。
「‥‥大袈裟な奴だな」
「んん~、美味しい。」
「そんなにパン粥が好きなのか?」
「その反対です。下町で初めて食べたパン粥が最悪の味だったので、すっかり苦手になりました。ビーゲル家で食べていたパン粥とあまりに味が違いすぎて‥‥悲しくなりました。」
ヤンが熱心にパン粥の感想を口にするので、仕方なく俺はつき合う。
「そんなに違うものなのか?」
ヤンはパン粥を口に運びながら、笑顔を見せて口を開く。
「パン粥は原料のパンの質が味を左右するので、粗悪なパンで作ったパン粥は食べられたものじゃありません。でも、このパン粥はすごく美味しい!良質なパン工房のパンで作られてます!」
俺は幼馴染のルート=ナダールの顔を思い浮かべつつ返事をする。
「そのパンは色街のパン工房で作られたものだ。俺の幼馴染はそのパン工房の息子だから、お前が褒めていたと伝えとくよ。」
俺の言葉にヤンは目を輝かせてテーブル越しに身を乗り出した。
「色街にパン工房があるなら、その表には公衆浴場がありますよね?」
「パン工房の裏になら公衆浴場はある。俺の幼馴染のルートはそこの受付をしている。お前、風呂が好きなのか?」
「大好き!いずれは公衆浴場の主になるつもりなんだ。」
あまりにもニコニコと夢を語るので、俺は皮肉な笑みを浮かべてしまう。
「行倒れのくせに夢が大きいな。どうやって金の工面をするんだ、ヤン?」
俺の言葉にヤンはムッとした表情を浮かべる。俺は追い討ちをかけて言葉を放った。
「まあ、身を売っていい金づるを掴めば、一発逆転もあるかもな。やっぱり男娼をするか、ヤン?」
俺の言葉に顔を強張らせて、ヤンは力なく椅子に座る。そして、ボソリと呟いた。
「シノは意地悪だ。」
「悪いな、意地悪な上司で」
「‥‥‥‥。」
ヤンはそのまま黙り込んでしまった。これでは本物の意地悪な奴になってしまう。明らかに落ち込むヤンの前で俺の心がモヤつく。
「あ~、ヤン」
「はい、シノ」
「パン粥食ったら風呂に行くか?」
「え?」
「ルートにお前を紹介したい。お前は俺の弟分だから、公衆浴場代くらいは俺が持つ。」
「大好き、シノ!!」
ヤンの変わり身の早さに呆れながら、俺はいつの間にか大きな声で笑っていた。こんなに気持ちよく笑ったのはいつ以来だろうか?
「ほら、パン粥をしっかり食べろ。また行倒れになられては困る」
「いただきます、シノ!」
パン粥を口に運ぶヤンを見つめながら、少し心が浮き立っていた。
◆◆◆◆◆
パン粥を口に運んだヤンは不意に妙な声を上げた。
「ん、んんんん!!」
目をとろりとさせたヤンは、頬を手で押さえ恍惚の表情を浮かべた。俺は驚いてヤンに声を掛ける。
「どうした、ヤン!?」
「ん~~、んん‥‥はぁう。」
「まさか、パン粥に媚薬でも入っていたのか?とにかく食べるのはやめろ、ヤン!」
俺が慌ててパン粥を取り上げようとすると、ヤンは目を座らせて静止する。
「駄目です!こんなに美味しいパン粥を取り上げないでください!鬼畜ですか、シノ。」
「鬼畜!?」
シノは再びパン粥を食べて目を嬉しそうに細めた。俺はその様子に呆れてため息をつく。
「‥‥大袈裟な奴だな」
「んん~、美味しい。」
「そんなにパン粥が好きなのか?」
「その反対です。下町で初めて食べたパン粥が最悪の味だったので、すっかり苦手になりました。ビーゲル家で食べていたパン粥とあまりに味が違いすぎて‥‥悲しくなりました。」
ヤンが熱心にパン粥の感想を口にするので、仕方なく俺はつき合う。
「そんなに違うものなのか?」
ヤンはパン粥を口に運びながら、笑顔を見せて口を開く。
「パン粥は原料のパンの質が味を左右するので、粗悪なパンで作ったパン粥は食べられたものじゃありません。でも、このパン粥はすごく美味しい!良質なパン工房のパンで作られてます!」
俺は幼馴染のルート=ナダールの顔を思い浮かべつつ返事をする。
「そのパンは色街のパン工房で作られたものだ。俺の幼馴染はそのパン工房の息子だから、お前が褒めていたと伝えとくよ。」
俺の言葉にヤンは目を輝かせてテーブル越しに身を乗り出した。
「色街にパン工房があるなら、その表には公衆浴場がありますよね?」
「パン工房の裏になら公衆浴場はある。俺の幼馴染のルートはそこの受付をしている。お前、風呂が好きなのか?」
「大好き!いずれは公衆浴場の主になるつもりなんだ。」
あまりにもニコニコと夢を語るので、俺は皮肉な笑みを浮かべてしまう。
「行倒れのくせに夢が大きいな。どうやって金の工面をするんだ、ヤン?」
俺の言葉にヤンはムッとした表情を浮かべる。俺は追い討ちをかけて言葉を放った。
「まあ、身を売っていい金づるを掴めば、一発逆転もあるかもな。やっぱり男娼をするか、ヤン?」
俺の言葉に顔を強張らせて、ヤンは力なく椅子に座る。そして、ボソリと呟いた。
「シノは意地悪だ。」
「悪いな、意地悪な上司で」
「‥‥‥‥。」
ヤンはそのまま黙り込んでしまった。これでは本物の意地悪な奴になってしまう。明らかに落ち込むヤンの前で俺の心がモヤつく。
「あ~、ヤン」
「はい、シノ」
「パン粥食ったら風呂に行くか?」
「え?」
「ルートにお前を紹介したい。お前は俺の弟分だから、公衆浴場代くらいは俺が持つ。」
「大好き、シノ!!」
ヤンの変わり身の早さに呆れながら、俺はいつの間にか大きな声で笑っていた。こんなに気持ちよく笑ったのはいつ以来だろうか?
「ほら、パン粥をしっかり食べろ。また行倒れになられては困る」
「いただきます、シノ!」
パン粥を口に運ぶヤンを見つめながら、少し心が浮き立っていた。
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