BL異聞ー吉良上野介の孫二人ー

月歌(ツキウタ)

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川遊び

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◆◆◆◆◆

蝉の声が響く、夏の川辺。
上杉家の別邸近く、山あいの澄んだ川に、二人の姿があった。

義周よしちか、危ない。そこは滑るぞ」

「わかってますって。兄上こそ、そんな真剣な顔で見張らないでくださいよ」

義周はそう言って、水面を蹴る。しぶきがあがり、吉憲よしのりの裾に飛び散った。

「……もう」

吉憲が眉をひそめると、義周はにっと笑った。
腰に巻いた布一枚。その細い体が水に濡れて、肌の線が透けて見える。

(まずい……)

見てはいけないと思うほど、目が離せなかった。
兄弟として育ち、何度も同じ湯に浸かってきたというのに、最近は妙に意識してしまう。

「兄上?」

呼ばれて、はっとする。義周がすぐ目の前まで来ていた。
細い指が、吉憲の腕をとる。

「なんだ」

「……視線が、熱いです」

「お前が――そんな姿でうろつくからだ」

声が低くなった自分に驚く。けれど、義周は怯まなかった。
むしろ楽しそうに目を細めて、すこしだけ顔を寄せる。

「じゃあ……もっと近づいたら、どうなります?」

「……やめろ」

言いながら、吉憲はその肩を掴んでいた。
濡れた肌の感触が、じかに掌に伝わる。

「やめてほしいですか?」

「……違う。やめなければ、抑えられなくなる」

「ふふ、それって……ご褒美ですか?」

義周はいたずらっぽく笑い、吉憲の胸に額を預けた。
距離が、もうなくなる。

――そのまま唇を奪えば簡単だ。
だが、兄である自分からはできない。

「……俺に甘えるな、義周」

「じゃあ、私からいきます」

そう囁いて、義周は吉憲の顎にそっと指を添えた。
まぶしい夏の日差しの中、二人の影がひとつに重なる――。

◆◆◆◆◆
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