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鬼の散花です
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◆◆◆◆◆
散花と弥太郎を床に座ると、陰間茶屋の旦那が深く頭を下げた。驚いた二人は慌てて口を開く。
「「旦那さま!」」
二人の声が合わさって部屋に響くと、伊右衛門は少し笑って顔を上げた。そして、散花と弥太郎の顔を各々見つめると、ゆったりと言葉を発する。
「二人は同じ時期に陰間になったんやったな。随分長く『蔦屋』尽くしてくれた。今回の件もそうや。私の息子の不始末で二人には迷惑を掛けたね。堪忍してや‥‥弥太郎、散花。」
弥太郎は茶屋の旦那の言葉に応じて言葉を紡ぐ。散花は黙って弥太郎を見守る事にした。
「旦那さま、こちらこそ申し訳ありません」
「ん?なんで謝るんや?」
旦那の問に今度は弥太郎が頭を下げた。散花も慌てて頭を下げると、その動きを確認した弥太郎がゆっくりと話し出す。
「『蔦屋』の男衆として陰間を守るべきところを、守れず傷つけてしまいました。また、問題を小さく収めることができず、『桔梗屋』の旦那の顔を潰す事になり申し訳なく思っております」
「確かに‥‥文字通り『桔梗屋』の旦那の鼻っ柱をへし折ったようやな。あれは一生鼻は凹んだままやろな。」
茶屋の旦那は軽く笑うが、二人は頭を下げたまま顔をあげない。弥太郎が黙ると今度は散花が言葉を継ぐ。
「旦那さん。私は助っ人に座敷に行きましたのに、『桔梗屋』の旦那を説得できず蹴飛ばしてしまいました。陰間として恥ずかしい行為やと思っております。どうぞ、堪忍して下さい‥‥旦那さま」
「もう、ええがな。二人共顔上げてくれるか。今回の事は私の息子と『桔梗屋』旦那が全面的に悪い。二人の罪を問うことなんぞ毛頭ない。安心しいや」
旦那の言葉に散花と弥太郎は同時に顔を上げた。その姿を目を細めつつ見つめながら、伊右衛門は話し出す。
「そやけど、厄介な事に世間では散花が『桔梗屋』の旦那を殴って鼻っ柱をへし折った事になっててな‥‥。」
「えぇ!?」
「料理屋の女中が花街にそないな噂を流してもうてな。散花は鬼みたいな陰間やとえらい評判になってしもうたんや。悪いがこのまま陰間として座敷に出すことは出来んようになってしもうた。すまんな、散花」
散花は呆然としながら叫んでいた。
「『鬼の散花』やなんて!そんな名で転業やなんて‥‥雇先がありません~~~!」
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散花と弥太郎を床に座ると、陰間茶屋の旦那が深く頭を下げた。驚いた二人は慌てて口を開く。
「「旦那さま!」」
二人の声が合わさって部屋に響くと、伊右衛門は少し笑って顔を上げた。そして、散花と弥太郎の顔を各々見つめると、ゆったりと言葉を発する。
「二人は同じ時期に陰間になったんやったな。随分長く『蔦屋』尽くしてくれた。今回の件もそうや。私の息子の不始末で二人には迷惑を掛けたね。堪忍してや‥‥弥太郎、散花。」
弥太郎は茶屋の旦那の言葉に応じて言葉を紡ぐ。散花は黙って弥太郎を見守る事にした。
「旦那さま、こちらこそ申し訳ありません」
「ん?なんで謝るんや?」
旦那の問に今度は弥太郎が頭を下げた。散花も慌てて頭を下げると、その動きを確認した弥太郎がゆっくりと話し出す。
「『蔦屋』の男衆として陰間を守るべきところを、守れず傷つけてしまいました。また、問題を小さく収めることができず、『桔梗屋』の旦那の顔を潰す事になり申し訳なく思っております」
「確かに‥‥文字通り『桔梗屋』の旦那の鼻っ柱をへし折ったようやな。あれは一生鼻は凹んだままやろな。」
茶屋の旦那は軽く笑うが、二人は頭を下げたまま顔をあげない。弥太郎が黙ると今度は散花が言葉を継ぐ。
「旦那さん。私は助っ人に座敷に行きましたのに、『桔梗屋』の旦那を説得できず蹴飛ばしてしまいました。陰間として恥ずかしい行為やと思っております。どうぞ、堪忍して下さい‥‥旦那さま」
「もう、ええがな。二人共顔上げてくれるか。今回の事は私の息子と『桔梗屋』旦那が全面的に悪い。二人の罪を問うことなんぞ毛頭ない。安心しいや」
旦那の言葉に散花と弥太郎は同時に顔を上げた。その姿を目を細めつつ見つめながら、伊右衛門は話し出す。
「そやけど、厄介な事に世間では散花が『桔梗屋』の旦那を殴って鼻っ柱をへし折った事になっててな‥‥。」
「えぇ!?」
「料理屋の女中が花街にそないな噂を流してもうてな。散花は鬼みたいな陰間やとえらい評判になってしもうたんや。悪いがこのまま陰間として座敷に出すことは出来んようになってしもうた。すまんな、散花」
散花は呆然としながら叫んでいた。
「『鬼の散花』やなんて!そんな名で転業やなんて‥‥雇先がありません~~~!」
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