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結婚相談所『寿屋』

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「ようこそ、結婚相談所『寿屋』に!」

いきなりの明るい挨拶にビビる。結婚相談所『寿屋』は、厚生労働省の管轄だ。でも、役所っぽくない。ベータ女子の職員が、にこやかに出迎えてくれた。至るところに花が飾られ華やかだ。

陰キャな俺は‥‥落ち着かない。

「あの、その‥‥予約した暁月優斗あかつきゆうとです。」

「暁月さまですね。個室でのご相談と、職員はベータ男子を希望されていますね。では、お部屋にご案内します」

ベータ女子はタブレットを操作して予約を確認すると、俺を目的の部屋に案内してくれた。案内された室内に入ると、ベータ男子が出迎えてくれた。けっこういい男だ。

「暁月優斗さまですね。私は三日月要みかづきかなめと申します。暁月さまの婚活アドバイザーとして、全力でサポートさせて頂きます。よろしくお願いします。」

「こちらこそ‥よろしくお願いします」
「では、こちらの席にお座りください」

俺は勧められるままに椅子に座る。ベータ男子はそれを確認すると、テーブルを挟んだ向かい側の席に腰を下ろしてノートパソコンを操作する。

「では、私は失礼しますね」
「あっ、はい」

俺を案内してくれたベータ女子が、挨拶の後に部屋をあとにした。俺はベータ男子と二人きりになり、少し緊張してしまった。パソコンを操作していた三日月が不意に顔を上げる。

「ベータが相手でも緊張しますか?」
「え、まあ‥‥少し」
「完全個室ではなく半個室を用意する事も可能ですが、どうされますか?」

「いえ、大丈夫です」

相手はアルファ男子じゃない。なのに緊張している自分が恥ずかしい。

「暁月さまは障害年金受給者ですね。等級は二級で間違いないですか?」

「はい、二級です」

「二級ならば結婚相談所の料金は公費で賄われますので、金額を気にせず何度でもお見合いが可能です」

「そうなのですか?」

「はい、全て公費で賄われます。ここからはセンシティブな内容を質問しますが、よろしいでしょうか?」

ベータ男子はパソコン画面と俺の顔を交互に見ながら話を進める。なんか、できる男って感じ。俺もベータ男子に生まれたかった。オメガ男子では就職もままならない。

「障害年金二級の基準を満たしていらっしゃるなら、アルファとのセックス経験はアリということで間違いないでしょうか?」

センシティブ!

「‥‥はい、セックス経験はあります。」

「セックスはアリで、うなじは噛まれていないということですね‥‥なるほど」

センシティブ!センシティブ!

「ちょっと待ってください。その、どうして番っていないと分かるのですか?」

俺の質問にベータ男子が微笑み答える。

「もしも番になっている場合には、障害年金一級と判定されますので。」

「‥‥なるほど」



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