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新婚アドバイザー
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◆◆◆◆◆
「左遷されました」
「ごめんなさい、三日月アドバイザー!」
新婚のお家にやってきたのは、左遷された三日月アドバイザー。彼は一回目の婚活デートで番を許してしまった為に左遷された。
「でも、新婚アドバイザーに変わっただけだから、左遷と言うほどでもないんじゃないの?厚生労働省の管轄だし」
「まあ、確かに。暁月さま、お菓子を頂いてもよろしいですか?」
三日月は左遷の話をすると、すぐに話題を変える。そんな事を考えながら、俺はテーブルの茶菓子をすすめる。三日月アドバイザーは饅頭を遠慮なく食べた。美味しそうに食べるので、俺も饅頭を頬張る。
「ん、美味しい~」
「確かに美味しいですね」
「栄一さんが‥‥あっ、夫がこの店のお饅頭が好きでよく買ってくるから、俺もすっかり饅頭好きになっちゃった。結婚前は洋菓子の方が好きだったのに‥‥ケーキが全然欲しくなくなったのは、寂しいかな。」
「以前に言ったでしょ?アルファに番われたオメガはアルファの嗜好に染まり体を合わせていくって。ですが、それに違和感を感じているようですね。まだ完全にはアルファには馴染んではないようだ」
俺は三日月の言葉に思わず反論した。
「そんなことないよ!仲良くしてる!」
三日月は少し笑って応じる。
「わかっています、暁月さま」
「うん。三日月さんはわかってくれるよね」
「ところで夫婦別姓の件ですが、山崎さまの反応はいかがですか?」
「う~ん。まだ納得はしていないみたい。『夫婦別姓でないと婚姻は認めない』とごねたのが、俺の兄さんだしね。夫は兄さんの事が嫌いみたい。『バスターX』の件があるからかな?」
「貴方がお兄さんの意見を優先したのが気に入らないのでしょう。アルファは独占欲が強いですから。それに、アルファがアルファを嫌うのは性のようなものです。アルファ同士の離婚率は高いですからね」
「なるほど~」
俺は三日月の話を面白く聞く。
山崎アルファと番った後、すぐに婚姻話を進めてくれたのは三日月アドバイザーだ。彼は両家の間に入り婚姻話を調整してくれた。
「夫婦別姓の件で、山崎家と軋轢などは生じていないですか?」
「なんでも聞くね、三日月さん」
「新婚アドバイザーの仕事ですから」
俺とアルファの婚姻が済むと、三日月は結婚相談所『寿屋』から異動となった。本人は左遷されたと言っているが、『楽しい婚姻課』の新婚アドバイザーになっただけだから以前と変わらない気もする。
「山崎家は嫡男の婚姻に前向きだったし、夫婦別姓の件もすぐに許してくれたよ。今はそれが流行りだねって感じで。栄一さんの弟の栄二さんも悪い人じゃなかったよ」
「山崎栄二さんといえば、サイゼリヤグループの買収を断念されたようですね」
「一時の利益よりベータとわだかまりを作る方がマイナスだと、栄一さんが弟さんを説得したんだよね。あの姿はアルファな感じでかっこよかった。元々反対が多かったみたいで、栄二さんも引くタイミングを図っていたい。栄二さんに食事に誘われた時にそう言って笑ってた」
三日月がピクリと眉をあげる。
「ちょっと待って下さい。栄二さんと二人で食事したのですか?」
「あ、うん。そうだけど?」
「二人で会うのは以降は避けて下さい!」
「親族になったのに?」
「トラブル回避の為です。」
「わ、わかったよ。じゃあ、義母とも二人で会うのは反対?」
俺がそう尋ねると首を振った。そして、少し探るように聞く。
「それは反対しません。お母さまとはお二人で会ったのですか?何か聞かれましたか?おめでたはまだか‥‥とか?」
三日月アドバイザーの探る眼差しの意味はこれか。
「そんな話はされなかったよ。結婚をすごく喜んでくれた。なんかね、婚姻の素振りなくベータ男子の恋愛小説にハマる息子の事を、オメガ母は凄く心配してたんだって。同じ趣味のオメガに出会えて良かったと言ってくれた。あ、義母に夫の趣味がバレていた事は内緒だからね」
「なるほど。義母は変態趣味の息子と番ってくれたオメガに感謝していると。それは良いですね」
三日月が書類をカバンから取り出して、さっきまで話していた内容を書き込む。その用紙には俺の番号が書き込まれていた。
「‥‥‥No.Ω-1050669」
「名前も書いてありますよ。暁月優斗と」
三日月がペンの先で名前をとんと叩く。
「やっぱり三日月さんは新婚アドバイザーとして俺に会いに来たのかぁ‥‥」
「それ以外の何がありますか?」
「俺のことが恋しくて会いに来たのかと」
俺がそう言うと三日月は一瞬真顔になった。それからすぐに皮肉な笑みを浮かべて口を開く。
「まぁ、少しは恋しくはありますかね」
「またまたぁ~」
俺と三日月アドバイザーは笑い合った。新婚生活は充実している。番った後も耽美小説趣味は消えることなく、ともに本屋巡りで耽美小説コーナーを散策した。たっぷりの性愛もある。でも、こんなふうに時々三日月さんと会うのが楽しみ。これは浮気じゃない。でも、ちょっと『浮気の気分は味わってるかな?』
「暁月さま‥‥考えが言葉に出てます」
「え、マジで!」
おわり(*´ω`*)
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「左遷されました」
「ごめんなさい、三日月アドバイザー!」
新婚のお家にやってきたのは、左遷された三日月アドバイザー。彼は一回目の婚活デートで番を許してしまった為に左遷された。
「でも、新婚アドバイザーに変わっただけだから、左遷と言うほどでもないんじゃないの?厚生労働省の管轄だし」
「まあ、確かに。暁月さま、お菓子を頂いてもよろしいですか?」
三日月は左遷の話をすると、すぐに話題を変える。そんな事を考えながら、俺はテーブルの茶菓子をすすめる。三日月アドバイザーは饅頭を遠慮なく食べた。美味しそうに食べるので、俺も饅頭を頬張る。
「ん、美味しい~」
「確かに美味しいですね」
「栄一さんが‥‥あっ、夫がこの店のお饅頭が好きでよく買ってくるから、俺もすっかり饅頭好きになっちゃった。結婚前は洋菓子の方が好きだったのに‥‥ケーキが全然欲しくなくなったのは、寂しいかな。」
「以前に言ったでしょ?アルファに番われたオメガはアルファの嗜好に染まり体を合わせていくって。ですが、それに違和感を感じているようですね。まだ完全にはアルファには馴染んではないようだ」
俺は三日月の言葉に思わず反論した。
「そんなことないよ!仲良くしてる!」
三日月は少し笑って応じる。
「わかっています、暁月さま」
「うん。三日月さんはわかってくれるよね」
「ところで夫婦別姓の件ですが、山崎さまの反応はいかがですか?」
「う~ん。まだ納得はしていないみたい。『夫婦別姓でないと婚姻は認めない』とごねたのが、俺の兄さんだしね。夫は兄さんの事が嫌いみたい。『バスターX』の件があるからかな?」
「貴方がお兄さんの意見を優先したのが気に入らないのでしょう。アルファは独占欲が強いですから。それに、アルファがアルファを嫌うのは性のようなものです。アルファ同士の離婚率は高いですからね」
「なるほど~」
俺は三日月の話を面白く聞く。
山崎アルファと番った後、すぐに婚姻話を進めてくれたのは三日月アドバイザーだ。彼は両家の間に入り婚姻話を調整してくれた。
「夫婦別姓の件で、山崎家と軋轢などは生じていないですか?」
「なんでも聞くね、三日月さん」
「新婚アドバイザーの仕事ですから」
俺とアルファの婚姻が済むと、三日月は結婚相談所『寿屋』から異動となった。本人は左遷されたと言っているが、『楽しい婚姻課』の新婚アドバイザーになっただけだから以前と変わらない気もする。
「山崎家は嫡男の婚姻に前向きだったし、夫婦別姓の件もすぐに許してくれたよ。今はそれが流行りだねって感じで。栄一さんの弟の栄二さんも悪い人じゃなかったよ」
「山崎栄二さんといえば、サイゼリヤグループの買収を断念されたようですね」
「一時の利益よりベータとわだかまりを作る方がマイナスだと、栄一さんが弟さんを説得したんだよね。あの姿はアルファな感じでかっこよかった。元々反対が多かったみたいで、栄二さんも引くタイミングを図っていたい。栄二さんに食事に誘われた時にそう言って笑ってた」
三日月がピクリと眉をあげる。
「ちょっと待って下さい。栄二さんと二人で食事したのですか?」
「あ、うん。そうだけど?」
「二人で会うのは以降は避けて下さい!」
「親族になったのに?」
「トラブル回避の為です。」
「わ、わかったよ。じゃあ、義母とも二人で会うのは反対?」
俺がそう尋ねると首を振った。そして、少し探るように聞く。
「それは反対しません。お母さまとはお二人で会ったのですか?何か聞かれましたか?おめでたはまだか‥‥とか?」
三日月アドバイザーの探る眼差しの意味はこれか。
「そんな話はされなかったよ。結婚をすごく喜んでくれた。なんかね、婚姻の素振りなくベータ男子の恋愛小説にハマる息子の事を、オメガ母は凄く心配してたんだって。同じ趣味のオメガに出会えて良かったと言ってくれた。あ、義母に夫の趣味がバレていた事は内緒だからね」
「なるほど。義母は変態趣味の息子と番ってくれたオメガに感謝していると。それは良いですね」
三日月が書類をカバンから取り出して、さっきまで話していた内容を書き込む。その用紙には俺の番号が書き込まれていた。
「‥‥‥No.Ω-1050669」
「名前も書いてありますよ。暁月優斗と」
三日月がペンの先で名前をとんと叩く。
「やっぱり三日月さんは新婚アドバイザーとして俺に会いに来たのかぁ‥‥」
「それ以外の何がありますか?」
「俺のことが恋しくて会いに来たのかと」
俺がそう言うと三日月は一瞬真顔になった。それからすぐに皮肉な笑みを浮かべて口を開く。
「まぁ、少しは恋しくはありますかね」
「またまたぁ~」
俺と三日月アドバイザーは笑い合った。新婚生活は充実している。番った後も耽美小説趣味は消えることなく、ともに本屋巡りで耽美小説コーナーを散策した。たっぷりの性愛もある。でも、こんなふうに時々三日月さんと会うのが楽しみ。これは浮気じゃない。でも、ちょっと『浮気の気分は味わってるかな?』
「暁月さま‥‥考えが言葉に出てます」
「え、マジで!」
おわり(*´ω`*)
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