[深海の森〜凌辱の果て〜]現代ファンタジーBL

第１話 親からの虐待

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兄さん・・その胸にもう一度抱かれたいと思う事は罪ですか？その体でもう一度愛されたいと願うのはいけない事ですか？

兄さんは、本当にあの過去を忘れる事ができたの？

兄さんが結婚した今でも、僕は過去を引きずって迷路を彷徨っているんだ。僕もいつかは、この迷路を脱出できる日が来るのかな？


◇◇◇◇

（過去の話)

兄　東條弘樹とうじょうひろき　　弟　東條正美とうじょうまさみ

「ひろくーん、まさみー、ちょっとこっちに来てくれよ」

隣の部屋から響く父さんの猫なで声に、僕はびくりと震えて兄さんに目を向けた。兄さんは父さんの言葉を無視して、テーブルに広げられた僕の宿題を見つめていた。僕は兄さんに学校の宿題を見てもらっている最中だった。

「おーい、聞こえてるだろ？弘樹。正美」

徐々に苛立つ父親の声に僕は不安を感じて、兄さんの袖を掴んだ。

「兄さん・・」

僕の呟きに、兄さんが反応を示したその時だった。いきなり、父さんは僕たちに近づいてきて、兄さんの背中を蹴り飛ばした。床に吹き飛ぶ兄さんを見つめながら、僕は呆然として動けなかった。

「うぅ・・痛い・・」

さらに父さんが兄さんの背中に馬乗りになり体重を掛ける。痛みと苦しさに兄さんの顔が歪む。父さんはにやにや笑いながら、兄さんの髪の毛を鷲掴みにした。

「手間かけさせるなよ。なあ、父さんのこと助けてくれてもいいだろ？また競馬ですっちまったんだよなぁ。お前らの給食代も外れ馬券になっちまって困っているんだよーー父さんは。だから・・自分たちで給食代と俺の酒代ぐらいは稼いでくれよ。な？」

兄さんが苦しそうに声を吐き出す。

「一週間前にやったばっかりだろ！」

「そんなのとっくに、酒代に消えたって。な、飯を食わせてる父さんを助けてくれよ？」

「子供を養うのは、親の務めだろ！」
「生意気なガキだな」
「うぐっ・・」

父さんが兄さんの脇腹を拳で殴る。呻き声をあげた兄さんに、僕は耐えられなくて駆け寄った。

「に、兄さん。早く、始めよ！僕大丈夫だから・・。父さん、兄さんを離して！！」

父さんはニヤニヤと笑うと、僕の頭を撫でて兄さんの背中から身を離す。

「正美はいい子だね。始めようね」

父さんに手を引かれ、隣の部屋に向かう。ちらりと見た兄さんの眼には涙が浮かび、背中を震わせていた。

「それにしてもいい時代だよなぁ。ガキ同士が乳繰り合ってるのを映像を撮るだけで金になるんだからさぁ。正美はいい子だよ。痛い痛いって泣く姿が、マニア心をそそるって人気だ。ほんと、お前は弘樹と違って・・いい子だよな」

父さんの手が僕の服の裾から入り込んできたとき、突然兄さんが駆け寄ってきた。

「やめろ！！」

父さんの手を払いのけると、兄さんは僕を抱きしめた。

「おお、いいねぇーー兄弟愛。さすが、俺の息子だ。弘樹、その調子で弟を犯して・・抱いて泣かせてやれ」

兄さんが泣いていた。泣きながらごめんと謝って、僕の服のボタンに手を掛ける。

僕は部屋に敷かれた万年布団に横たわり、ただ天井を見つめていた。父さんは部屋の端に陣取り、ビデオを三脚に据えると後は酒とつまみで酒盛りを始めた。


◇◇◇


ただ痛くて、苦しくて泣いて
許してって叫んで
のた打ち回って
そして兄さんが終わるのを待つ。
何時も終わると、父さんは部屋の片隅で居眠りをしていて兄さんが泣きながら僕の体を拭いていてくれた。
僕は動けなくて、ただじっと兄さんを見上げていた。

「正美・ごめん・・ごめん・・」

兄さんの謝る声を聞きながら何時も気を失うように眠った。次の日は大抵熱が出て、僕は学校を休むからクラスメートには病弱な奴って思われてしまっている。

◇◇◇

これが日常になっていて、当たり前だと思っていたある夜。

僕たちの住むアパートが全焼した。

父さんの寝タバコが原因だって、警察の人は言っていた。僕は兄さんに抱えられるようにして、アパートを出た。僕と兄さんは無事だったけど、父さんは逃げ遅れて死んだ。深酒で泥酔していたから。

今でも覚えてる。

炎で真っ赤に染まったアパートを見つめながら兄さんは泣いていた。僕はそんな兄さんにしがみ付いて、立っていた。



二十一歳になった今でも、僕はその真っ赤な炎が忘れられないんだ。

そして兄さんの事も。

僕は今も迷宮を彷徨って、出口を探している。きっと出られると信じて、今日も歩いているんだ。


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