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水鏡に映る姿11
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◆◆◆◆◆
「ルチア、返事をしてくれ!ルチア!私の元に帰ってきてくれ、ルチア!」
「ケルスティン、一度霧から出ろ!お前の姿も外からは見えない!」
『王の書庫』の半分は、水鏡が発した濃い霧で覆われていた。ケルスティンはルチアが霧に覆われた直後に息子の後を追った。クリストフェルも学友の後を追おうとして、ギリギリで踏みとどまった。
「くそ、俺は国王だ!危険に身を晒すことは、許されない!」
クリストフェルはぎりぎりと唇を噛みしめて、自身の無力を呪った。暴君となるかも知れぬこの身だが、王国の為に捨て身にはなれない。『ゲームの駒』として生涯を捧げると誓った時から。
「ケルスティン!俺の元にもどれ!!」
霧の中で必死に息子を探すケルスティンの自由が、クリストフェルには羨ましかった。
「冷静になれ、ケルスティン!」
彼は怒りをぶつけるように、濃い霧に向かって威圧を放っていた。威圧が霧の一部を吹き飛ばした。薄まった霧の隙間から学友の姿が見えた。
「ケルスティン!」
クリストフェルは再び威圧を放って霧を蹴散らすと、露の中からケルスティンが飛び出してきた。ケルスティンは傷だらけの姿で、呆然とした眼差しをクリストフェルに向けついた。
「うっ、まて・・ケルスティン。威圧を放ったのは霧を蹴散らすためで、お前を傷付ける意図はなかった」
「この傷は霧にやられたものだ。それより、クリストフェル。威圧で霧を蹴散らしたとは本当か?霧の内部で何度も威圧を放ったが、霧は晴れなかったが?」
「・・全身が傷だらけだ、ケルスティン。ルチアは自ら望んで水鏡の霧にのまれた。ならば、自ら帰ることも可能なはずだ。水鏡の霧はルチアのみの通行を許した。お前の全身の傷が霧によるものなら、ケルスティンは水鏡の許可を得られなかったのだろう。とにかく、少し落ち着け」
クリストフェルが全て語ると、ケルスティンは無言で近づいてきた。そして、クリストフェルをおもいっきり殴った。
「ぐっ!」
クリストフェルは反動で床に膝をつきそうになったが耐えた。怒りを覚えてきつい眼差しでケルスティンを見たが、すぐにその気持ちは霧散した。
「私の無関心が息子の命を奪った。もう二度と同じ過ちはしない!クリストフェル、外部からなら、威圧で霧を蹴散らせたと言ったな?ならば、威圧を放ち続けて霧を薄めてくれ。私はもう一度霧の中に入る。お前の助けが必要だ、クリストフェル」
「そんな不安そうな顔をするな。調子が狂う。分かった。お前とライが戻るまで、威圧を放って霧を蹴散らす。必ずライを見つけろ、ケルスティン!」
不意に、ケルスティンが笑みを浮かべた。その笑みに何度絆された事か・・そんな事を考えていたクリストフェルに、ケルスティンが偉そうに命じる。
「必ず、ルチアと共に戻る」
「分かった」
「私とルチアが霧を抜けたら、クリストフェルは水鏡を破壊してくれ」
「は?」
「破壊しろ」
「いや、あれは国の宝で、代々受け継がれてきたものだ。そう簡単に破壊できるわけがないだろ!」
「ルチアと私と水鏡。大切なものを選べ」
「くそ!お前とライを選ぶ。早く行け」
「感謝する」
ケルスティンが踵を返して濃い霧に突っ込んでいく。クリストフェルは威圧を放ちながら学友の背中を見送った。
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「ルチア、返事をしてくれ!ルチア!私の元に帰ってきてくれ、ルチア!」
「ケルスティン、一度霧から出ろ!お前の姿も外からは見えない!」
『王の書庫』の半分は、水鏡が発した濃い霧で覆われていた。ケルスティンはルチアが霧に覆われた直後に息子の後を追った。クリストフェルも学友の後を追おうとして、ギリギリで踏みとどまった。
「くそ、俺は国王だ!危険に身を晒すことは、許されない!」
クリストフェルはぎりぎりと唇を噛みしめて、自身の無力を呪った。暴君となるかも知れぬこの身だが、王国の為に捨て身にはなれない。『ゲームの駒』として生涯を捧げると誓った時から。
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彼は怒りをぶつけるように、濃い霧に向かって威圧を放っていた。威圧が霧の一部を吹き飛ばした。薄まった霧の隙間から学友の姿が見えた。
「ケルスティン!」
クリストフェルは再び威圧を放って霧を蹴散らすと、露の中からケルスティンが飛び出してきた。ケルスティンは傷だらけの姿で、呆然とした眼差しをクリストフェルに向けついた。
「うっ、まて・・ケルスティン。威圧を放ったのは霧を蹴散らすためで、お前を傷付ける意図はなかった」
「この傷は霧にやられたものだ。それより、クリストフェル。威圧で霧を蹴散らしたとは本当か?霧の内部で何度も威圧を放ったが、霧は晴れなかったが?」
「・・全身が傷だらけだ、ケルスティン。ルチアは自ら望んで水鏡の霧にのまれた。ならば、自ら帰ることも可能なはずだ。水鏡の霧はルチアのみの通行を許した。お前の全身の傷が霧によるものなら、ケルスティンは水鏡の許可を得られなかったのだろう。とにかく、少し落ち着け」
クリストフェルが全て語ると、ケルスティンは無言で近づいてきた。そして、クリストフェルをおもいっきり殴った。
「ぐっ!」
クリストフェルは反動で床に膝をつきそうになったが耐えた。怒りを覚えてきつい眼差しでケルスティンを見たが、すぐにその気持ちは霧散した。
「私の無関心が息子の命を奪った。もう二度と同じ過ちはしない!クリストフェル、外部からなら、威圧で霧を蹴散らせたと言ったな?ならば、威圧を放ち続けて霧を薄めてくれ。私はもう一度霧の中に入る。お前の助けが必要だ、クリストフェル」
「そんな不安そうな顔をするな。調子が狂う。分かった。お前とライが戻るまで、威圧を放って霧を蹴散らす。必ずライを見つけろ、ケルスティン!」
不意に、ケルスティンが笑みを浮かべた。その笑みに何度絆された事か・・そんな事を考えていたクリストフェルに、ケルスティンが偉そうに命じる。
「必ず、ルチアと共に戻る」
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「は?」
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「くそ!お前とライを選ぶ。早く行け」
「感謝する」
ケルスティンが踵を返して濃い霧に突っ込んでいく。クリストフェルは威圧を放ちながら学友の背中を見送った。
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