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森から現れた人物は、近距離攻撃が苦手そうな女魔術師だった。しかも、二人組だ。何てこった!二人とは都合がいい。兄上と山分けが出来るではないか!
俺は思わずにやけてしまった。だが、それが不味かった。人間の女は警戒を露にして、俺たちを見つめ、魔法の杖をこちらに向けた。
「だっ、誰!?」
「待って、今は背後の敵に集中しないと!」
「もうダメだわ!勇者は勝手に魔王城に攻撃を仕掛けて、城に突っ込んでいったきり帰ってこないし。パーティーメンバーはバラバラ。もう生きて、この森からは帰れないわ!」
よしよし、助けが必要なようだ。俺がそう思った時、森の木々をなぎ倒して、魔物が現れた。巨大な犬が二足歩行をしていて、あれがでかくおったっている。そいつの事を、俺はよく知っていた。
あいつには、よく入浴を覗かれた。忌々しい事に、俺の存在に気がつくとブンブンと尻尾を降り始め、勃起がさらに勃起した。まったく。
「いやぁー、あの魔物、私たちに欲情してるわ!どうしよう、キャサリン!」
「魔術師として闘うのみよ、ライラ!」
キャサリンが、魔物に向かって炎で攻撃した。だが、魔力が足りない。変態犬に当たったが、毛が少し焦げただけだ。ふむ、だが俺より魔力があって羨ましい。人間の癖に。
『おい、イザベラ~。魔王城を抜け出すとは、ずいぶんと大胆だな?俺が今から、お前を牝にしてやるっ、、あぐっーー、っ!』
一撃だった。変態犬は兄上の放った魔法の矢を額に受け絶命していた。だが、兄上は更に魔法を繰り出す。死体に向かって、爆撃を食らわせ変態犬が肉隗となった。
その肉片をもろに食らった、女子二人は地面に座り込む。どうやら、二人はちびってしまったようだ。
「兄上、やりすぎです。女子が完全に引いています。それに、森の営みの為にも、肉片は残してあげましょうね?弱い魔物の餌を燃やすなんて止めましょうね?」
『駄目だ。奴はイザベラを牝にすると言った。魔物は肉片を残すと再生する可能性がある。卑しき変態犬よ、全て灰となれ!』
いつもは人間界の言葉を話すニコラウス兄上が、魔界の言葉で話している。これは、俺には止められないや。変態犬の肉片は瞬く間に燃え上がり、灰となっていく。
そして、肉片を食らった女子達の体も燃え上がった。おい~!
「兄上は何をしているのですか!」
「肉片を焼いている」
「女子が燃えています!私は、助けにいきますよ。折角の女子を逃がしてたまるか!」
俺が女子二人に近づくと、地面にしゃがんでいた二人が飛び上がり、体を燃やしたまま逃げ出した。
「キャサリン、助けて。死にそう」
「ライラ、私もよ・・」
二人がよたよたとしている。俺は精一杯の魔力で、二人に水を掛けた。二人は驚いた顔をして俺を見たが、まだ燃えている。焼け石に水!
「兄上、早く二人の火を消して!」
そう叫んだ時、突然、大量の水が天から降り注いだ。兄上が水魔法を使ったと、安堵の息を吐く。だが、違ってた。
空から水滴と共に勇者が降ってきた。
「ライヒアルト = ネアリンガー!」
勇者は無表情で、剣を俺の胸に突き刺す。
はずだったが、その場に俺はいなかった。俺は兄上の胸に抱かれ、避難していた。しかし、避難先がどうなのこれ。女子二人の背後に移動した兄上は、完全に人間を盾にしていた。
このままでは、悪者みたいじゃないか!
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