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sideルーカス
21.
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意識を飛ばしたノアは、ぐったりと力なく俺にもたれ掛かった。今にも儚くなってしまいそうなくらい顔色が悪い。
俺はそっとノアを床に横たえた。
段々熱が上がってるのか、漏らす息がゼイゼイと苦しげだ。
あんなに喰ってしまおうと思っていたのに……。
結局、俺にはノアを殺す事はできないみたいだ………。
眉間を寄せてノアを見る。
俺が傷付けて、俺が苦しめたノア。
そっと額にかかる髪を払い、その顔を見る。
そうか。
殺せないのか…。
俺は俯き瞳を閉じた。そしてキツくキツく唇を噛み締める事しかできなかった。
水で濡らしたタオルで丁寧に身体を拭う。
背中は勿論、身体中血塗れだ。
背中の傷は俺が抉り喰んだせいで醜く広がり、悲惨な様を呈していた。
哀れだと思うのに、同時にその傷跡を愛おしく感じている自分が忌々しい。
止血の処置をして、たっぷり薬を塗りガーゼを当てる。
余程ノアは街医者に気に入られたんだろう。
バカみたいに沢山の薬やら軟膏やらガーゼを持たされていた。
有ろう事かノアをキレイと称した街医者だけど、薬に罪はないから遠慮なく使う。
処置の間にも熱は上がり続け、カタカタと震え始めた。
額は燃えるように熱いのに、触れた指先は氷のように冷たい。
俺は慌てて自分の天幕用の布を引っ張り出し、そこに薄手の毛布を掛けて簡易のベッドを作った。
そっとノアを抱え、傷に負担とならないように腹這いに寝かせる。
俺はひたすら傷の手当てを繰り返し、その夜を過ごした。
明け方。
か細い、ヒューヒューと笛のような呼吸の音を漏らしながら、ノアが薄っすらと瞳を開けた。
熱のせいか、その瞳は潤みとろんと溶けていて、瞼は開いていても何も見ていないのが伺えた。
「ノア……これ飲んで」
カサつくノアの唇に熱冷ましの丸薬を押し付ける。
意識が僅かでも戻った今の内に薬を飲ませないと、下がるものも下がらない。
なのにノアは全てを拒絶するように僅かに首を振ると、再び瞼を閉じてしまった。
俺の声が聞こえただろうに……。
それなのに拒絶するのか…?
いや、だからこそ拒絶するのだろうか………。
絶望が襲う。
番に拒否られることが、こんなにも苦しいなんて。
「………っ。ノア、頼むよ……」
思わず口から出た言葉は情けないほど慄える。
だけどノアは反応しない。
その姿は生を諦める様でもあって、俺は血相を変えて叫んだ。
「俺から離れて行くくらいなら殺してしまおうと思ったけど!やっぱり無理だっ!頼むよ、置いて逝かないでくれ…」
ぴくんっと瞼が微かに反応したけど、答える声はない。
「許さないからな。離れるなんて、絶対に許さない!」
ノアの肩に腕を回し持ち上げる。熱い息を吐く唇をこじ開けて、薬を押し込んだ。
水袋に口をつけて水を含むと、そっとノアに唇を合わせ流し込む。
コクリ、と喉が上下に動き水を嚥下したのが分かった。
何度か繰り返し、水を飲ませる。
「……っはぁ……」
ため息のように息を吐出したノアは、疲れたのか再びウトウトと眠りの縁に引きずり込まれていった。
ノアを抱えたまま、その顔を見つめる。
ぽつりと、ノアの頬に雫が滴った。
なんて醜悪で、なんて無様なんだろう。
何故、番を純粋に愛することができないんだ……。
ノアに知られたくない。
こんな打算に塗れて、自己中心的な愛しか注げないなんて。
でも。それでも受け入れて欲しいんだ……。
涙は止まる事なく流れ落ち、俺は祈るようにそっと口付けた。
程なくして、薬が効いたのかの呼吸も穏やかになってきた。依然顔色は悪くて意識も戻らないけど、移動するなら今の内か……と考えて、荷物を纏める。
二人分の荷物は担げないため、後から取りに来ようと目立たないように隠す。
できるだけ揺らさないようにノアを抱き上げると、街へ戻るべく足早に街道を歩き始めた。
俺はそっとノアを床に横たえた。
段々熱が上がってるのか、漏らす息がゼイゼイと苦しげだ。
あんなに喰ってしまおうと思っていたのに……。
結局、俺にはノアを殺す事はできないみたいだ………。
眉間を寄せてノアを見る。
俺が傷付けて、俺が苦しめたノア。
そっと額にかかる髪を払い、その顔を見る。
そうか。
殺せないのか…。
俺は俯き瞳を閉じた。そしてキツくキツく唇を噛み締める事しかできなかった。
水で濡らしたタオルで丁寧に身体を拭う。
背中は勿論、身体中血塗れだ。
背中の傷は俺が抉り喰んだせいで醜く広がり、悲惨な様を呈していた。
哀れだと思うのに、同時にその傷跡を愛おしく感じている自分が忌々しい。
止血の処置をして、たっぷり薬を塗りガーゼを当てる。
余程ノアは街医者に気に入られたんだろう。
バカみたいに沢山の薬やら軟膏やらガーゼを持たされていた。
有ろう事かノアをキレイと称した街医者だけど、薬に罪はないから遠慮なく使う。
処置の間にも熱は上がり続け、カタカタと震え始めた。
額は燃えるように熱いのに、触れた指先は氷のように冷たい。
俺は慌てて自分の天幕用の布を引っ張り出し、そこに薄手の毛布を掛けて簡易のベッドを作った。
そっとノアを抱え、傷に負担とならないように腹這いに寝かせる。
俺はひたすら傷の手当てを繰り返し、その夜を過ごした。
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か細い、ヒューヒューと笛のような呼吸の音を漏らしながら、ノアが薄っすらと瞳を開けた。
熱のせいか、その瞳は潤みとろんと溶けていて、瞼は開いていても何も見ていないのが伺えた。
「ノア……これ飲んで」
カサつくノアの唇に熱冷ましの丸薬を押し付ける。
意識が僅かでも戻った今の内に薬を飲ませないと、下がるものも下がらない。
なのにノアは全てを拒絶するように僅かに首を振ると、再び瞼を閉じてしまった。
俺の声が聞こえただろうに……。
それなのに拒絶するのか…?
いや、だからこそ拒絶するのだろうか………。
絶望が襲う。
番に拒否られることが、こんなにも苦しいなんて。
「………っ。ノア、頼むよ……」
思わず口から出た言葉は情けないほど慄える。
だけどノアは反応しない。
その姿は生を諦める様でもあって、俺は血相を変えて叫んだ。
「俺から離れて行くくらいなら殺してしまおうと思ったけど!やっぱり無理だっ!頼むよ、置いて逝かないでくれ…」
ぴくんっと瞼が微かに反応したけど、答える声はない。
「許さないからな。離れるなんて、絶対に許さない!」
ノアの肩に腕を回し持ち上げる。熱い息を吐く唇をこじ開けて、薬を押し込んだ。
水袋に口をつけて水を含むと、そっとノアに唇を合わせ流し込む。
コクリ、と喉が上下に動き水を嚥下したのが分かった。
何度か繰り返し、水を飲ませる。
「……っはぁ……」
ため息のように息を吐出したノアは、疲れたのか再びウトウトと眠りの縁に引きずり込まれていった。
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ぽつりと、ノアの頬に雫が滴った。
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こんな打算に塗れて、自己中心的な愛しか注げないなんて。
でも。それでも受け入れて欲しいんだ……。
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程なくして、薬が効いたのかの呼吸も穏やかになってきた。依然顔色は悪くて意識も戻らないけど、移動するなら今の内か……と考えて、荷物を纏める。
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