辺境の村のお婆さんが実はめちゃくちゃ強いことに俺だけが気付いた件

後藤権左ェ門

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1.辺境の村へ

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「辺境の村に遠征なんて、だりぃよなー」

 現在、騎士団の小隊15人で、辺境の村へと馬に乗り移動中。
 同期であるエリックが暇を持て余したのか、そんな愚痴を言ってきた。

「エリック、これも重要な任務だぞ。辺境があるからこそ、街に魔物が押し寄せてこないんだ」
「わーかってるよ。ダグラスは真面目だなぁ。お前は女の子にモテるために騎士団に入ったんじゃないのか? 俺はモテるために入ったぞ。それなのに辺境じゃ、女の子にアピールできないじゃん」
「いや、俺はこの国の人々を守るために騎士になったよ」

 子供の頃に助けてもらった騎士に憧れて、俺もこんな風に人々を守りたいと思ったのが騎士になったきっかけだ。

「嘘だろ……? 今どきそんな高尚な理由で、騎士になるやつがいるか?」

 いや、いるだろ。現にここにいるし。

「しかも、今回の任務は山に現れたイノシシの群れの討伐だろ? 俺達が出張るような任務じゃないっしょ」
「ただのイノシシじゃない、ワイルドボアの群れだ」

 ワイルドボアはイノシシ型の魔物で、単体の危険度はDだ。
 しかし、今回のように群れとなると規模によってはC~Bになることもある。
 辺境の村だと壊滅の恐れすらある、緊急性の高い案件だ。

「イノシシだろうとワイルドボアだろうと、俺らにとっちゃあんまり変わんねーだろ。さっさと終わらせて街に帰って、女の子と遊ぼうぜ。ダグラス、お前も一緒に来るだろ?」
「俺は――」
「おい、そこの2人! 移動も任務の内だぞ! どこで誰が見ているかわからんのだ。騎士としてビシッとしたところを女性……ゴホンッ、市民の皆様に示さなくてはならん!」
「「はっ! 申し訳ありません!」」

 まったく……エリックのせいで隊長に叱られてしまった。

「……な? 多分、隊長もモテたくて騎士になった口だ」

 全然反省してないな、こいつ。



 ザシュッ!
 ブモォォォォ!!
 ドサッ

「こいつが最後のワイルドボアか」
「やっぱり、俺らにかかったら楽勝だったな」

 確かに楽勝だった。……いや、楽勝過ぎた。
 報告にあったよりも明らかに数が少ない。
 元々の報告が間違っていたのか、それともワイルドボアの数が減るようなイレギュラーが起きているのか……

「何を辛気臭い顔してんだよ! 俺の方が活躍したから嫉妬してんのか?」
「そんな訳ないだろ。エリックは何かおかしいとは感じないのか?」
「うーん……俺が活躍するのはいつものことだし、それにダグラスが嫉妬するのもいつものことだよな。特におかしいことはないんじゃないか?」
「……そうか。エリックがそう言うんなら危険は無さそうだな」

 エリックはいい加減なやつに見えるが、野生の勘のようなものが鋭い。
 ワイルドボアよりも危険な魔物がいたら、察知して警戒するはず。

「そんじゃ、さっさと倒したワイルドボアの処理して、報告に戻るとしますか」
「あぁ、そうだな……」

 言いしれないもやもやが心の片隅にまだ残っているが、確認のしようもないため、エリックに従うことにした。



「騎士の皆様、本当に有り難いことですじゃ。この村も若いもんが少なくなってしもて、中々魔物を討伐するのも難しくなってしまってのぉ」

 この辺境の村の村長であるお爺さんだ。
 他の村民の方々を見回してみても、確かに高齢の方が多いようだ。
 若い人達はもっと栄えている隣町などに、出稼ぎに行ってしまったのだろう。
 
「いえ、市民の皆様を守るのは騎士の務め。当然のことであります。我ら青の騎士団は市民と共に!」
「「「市民と共に!」」」

 騎士団全員で、右拳を胸に当て礼をとる。
 任務を成功させ全員で礼をとるこの時が、騎士にとって最も誇りを感じる瞬間だ。
 憧れていた騎士団に入って初めての任務を成功させた時は、感動して涙が出そうになったものだ。

「いやー、流石は騎士様じゃ。今日はもう日も暮れそうじゃし、泊まっていってくだされ。と言ってもわしの家に全員は入れんから、何軒かに分かれてもらわにゃならんのじゃが」
「大変ありがたいお申し出、感謝いたします。お言葉に甘えさせていただきます」

 今日はこの村にお世話になるようだな。
 野営だと安心して休めないから、とても有り難い。

「それでは、ダグラスとエリックはあちらのお宅に世話になってくれ。お前たちは同期で仲も良いし、いざという時の実力もある。それでいいか?」
「私は問題ありません」
「欲を言えば女の子と一緒が良かったっすけど、ダグラスで我慢することにします」

 いや、この隊には女性がいないから、その希望が叶うことはないだろ。
 そもそも遊びの旅行じゃないんだから、我慢とかそういう問題でもない。
 騎士団の同期じゃなかったら、エリックとは関わり合いにならなかっただろうなぁ。
 それが今や隊で一番信頼できる相棒になるとは。
 縁というものは不思議なものだ。

「それでは各自、指定されたお宅で休むように。ご迷惑をおかけするんじゃないぞ。それと明朝早く出発するから、寝過ごすことのないように」
「「「はっ!」」」

 さて、我々はどのお宅にお世話になるのだろうか。
 贅沢は言わないが、できれば優しいお方の家にお世話になりたいものだ。
 以前お世話になったお宅の奥さんは騎士嫌いで、まともに働けとか税金泥棒とか散々な言われようだった。

「それではお二人はあちらの奥の家にお願いしますじゃ」
「承知しました」

 俺はエリックを連れて、遠くに見える家へと足を向けた。

「……やっぱりダグラスも、お世話になる家に若い娘がいるか考えてるんだろ?」

 こいつはお気楽で羨ましい限りだ。

「そうだな、いると良いな」
「なんだよ、つれねーな。そうだ、つれると言えば、連れション行かねーか?」
「行かない。お世話になるお宅で挨拶してから、一人で行ってこい」

 何が悲しくてエリックと小便しに行かなくてはいけないのか。
 俺はどちらかというと、人が近くにいると中々出ないタイプなのだ。
 もちろん任務中はそんなこと言ってられないから外でも周りに人が居てもするが、それ以外の時は一人で安心してしたい。

「わかったよ。でも、マジで膀胱もケツも破裂しそうだから、俺は用を足してくる! お前は先に行って、挨拶済ませといてくれ!」

 エリックはそう言うと厠へと走っていった。
 お世話になる方への挨拶という、一番緊張する役割を押し付けるなよ、と思いはしたが生理現象を止める訳にもいかない。
 とりあえず先に行って、何か手伝えることはないか確認しよう。
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