4 / 4
第一章・俺も没落するけど心配するな
4.嫌われている男、悪役の令嬢をプロデュース 前編
しおりを挟む
運命に喧嘩を売る嫌われ者の囁き。
そいつを俺が言ってしまう、少し前に溯る。
結局、いつも通りの乙女ゲームイベントに巻き込まれる俺は……いつだって傍観者だ。やれやれと溜め息をつきながら、時間だけが過ぎていくのを但、只管に待つ。日々、繰り返される寸劇は見飽きた程だが、それ故に違いや変化があると、すぐに勘づいてしまう。
「婚約者が居る方に、無遠慮にも図々しく近付く神経の無さに呆れかえりますわね……それを注意もしない友情の欠片も無い連中にも、それに気付かない本人も問題ですわね……」
相変わらずなレージョの、全方位に向けてトゲを含んだ物言いが刺さりにいく。言ってる事は至極真っ当な話だが……正論言ってれば世の中上手く回るようだったら、世界はもう少し馬鹿正直に歴史を紡ぐってもんだ。
特に、恋の病なんて年頃特有の熱病に浮かされた……こっちがむず痒くなる位に真っ直ぐな連中にはな。
「レージョ・アステリオン公爵令嬢。確かに私達は親の決めた婚約者同士だが……」
「そうですよ、アステリオン嬢。勝手に決められた婚約などではなく、真に想い合う二人を邪魔するような真似はお止しなさい。」
「レージョさん。言いたいことは分かるけど、もうちょっと言い方を選んだ方が……」
「そんな……無神経だなんて酷い!」
いやいやお前等、やってる事も言ってる事も好き放題だな!封建制の下で、上位者である親の決めた事に逆らっといて言うことがそれかよ!まだ、事なかれ主義のセナの言うことの方がマシだわ!ローインに至っては、図星突かれて逆ギレしてる様にしか聞こえない……
まだ民主主義の考えで育った俺の方が、封建制度ってこんなもんだよなー位にしか思ってなかった俺の方が!お前等よりも、この文化に適応してると実感出来るわ!恋愛至上主義とか、頭ん中にスイーツ(笑)でも詰まってんのかお前等!?って、ここ恋愛ゲームの世界だったわ。恋愛するのが至上目的だもんな……
恋愛における無理を通せば道理が引っ込む様に出来た世界で、生まれと立場に誇りと責任を持つレージョの貴族らしい意見は、常に劣勢へと変わっていく。
但でさえ女一人に対して、相手は男三人と女一人。いつしか糾弾していた側が、される側になっていく程度には、口数の違いが口論における不利になるのを否めない。無茶苦茶な意見であっても、道理を引っ込める事が出来る場合なんかは、特にな……更に、無理の中にちょっとした道理のスパイスが含まれれば、それは決定的なトドメになった。
「レージョ・アステリオン、私は王子として常により良い選択をせねばならない。常に頂点に立ち、常に民へと威光を示す、一番上の立場に居なくてはいけない。それは‥…自分の妃となる者であってもだ」
「ッ!?」
「より優れている者同士がよりよい種を残す。それが我々、高貴なる者達に架せられた十字架だ。だから私は、レージョではなく、ローインを選んだ。何故なら私は王族で、彼女は君よりも優秀だからだ」
その時までは、イジメたイジメてないのくだらない水掛け論をやっていたと思ったら、決別の言葉は唐突に放たれた。
『浮気男の言い訳』に含まれた『王子としての考え』を聞いたレージョが、絶句する程の物言い。圧倒的に有利な上位者の立場から宣言された、下位の者は下位だから‥…お前は劣っているから駄目なんだと断言された言葉。
安全な立場から、多数に助けられて言い出した言葉で……孤独にも己の尊厳を守ろうと奮闘する者を踏みにじった。これが虐めじゃなければ、何なんだろうな‥…
だが、『仕方ない』『諦めなくてはいけない』。何故なら、相手は王族。封建制社会の頂点。
ヒエラルキーのトップに立つ者を支えるのが、下に位置する者達の勤めだ。踏みにじられても文句は言えない。言うにはリスクが高すぎる構造をした世界。
そこでミハエルはトップに居て、レージョはその下の位置にいる。この二人は、この世界に置いて限り無く頂点に近い位置に君臨している血族だ。だが今、この二人だけの世界では、ミハエルが上、レージョが下でしかない。
そのミハエルから断言されたレージョ。自分よりも下に居たはずの侯爵令嬢ローイン・プリスゲンよりも劣っていると、公衆の面前で断言されたレージョ。
己が誇りを守るための戦いは、より汚される結果となって幕を閉じた。
仮にも婚約者だった女に対して、余りにも無慈悲な言葉。それを聞いたレージョが走り去って行くのを、ただ傍観している俺。
そんなレージョを気にもとめず、選ばれたローインはミハエルと二人だけの世界に酔っている。それを祝福する周囲のお花畑な取り巻き連中を、ただ傍観するだけの俺。
これがただの、ローインがミハエル・シュナイダーのルートで確定したイベントに入った証だと知っている俺は‥…
『レージョの方が嫁確定キターーーー!』
って、喜んでたんだ。『おいおい、レージョの涙はどうしたんだ』って?‥…だって、レージョがこの位で泣くような珠かよ!背中に般若のオーラを纏って去っていったのを確認したよ。声なんか掛ける雰囲気でも、追っ掛ける勇気も持てないよ!
レージョと俺が手を組む事になるのは……この次の日である、学園の休日での出来事となる。
そいつを俺が言ってしまう、少し前に溯る。
結局、いつも通りの乙女ゲームイベントに巻き込まれる俺は……いつだって傍観者だ。やれやれと溜め息をつきながら、時間だけが過ぎていくのを但、只管に待つ。日々、繰り返される寸劇は見飽きた程だが、それ故に違いや変化があると、すぐに勘づいてしまう。
「婚約者が居る方に、無遠慮にも図々しく近付く神経の無さに呆れかえりますわね……それを注意もしない友情の欠片も無い連中にも、それに気付かない本人も問題ですわね……」
相変わらずなレージョの、全方位に向けてトゲを含んだ物言いが刺さりにいく。言ってる事は至極真っ当な話だが……正論言ってれば世の中上手く回るようだったら、世界はもう少し馬鹿正直に歴史を紡ぐってもんだ。
特に、恋の病なんて年頃特有の熱病に浮かされた……こっちがむず痒くなる位に真っ直ぐな連中にはな。
「レージョ・アステリオン公爵令嬢。確かに私達は親の決めた婚約者同士だが……」
「そうですよ、アステリオン嬢。勝手に決められた婚約などではなく、真に想い合う二人を邪魔するような真似はお止しなさい。」
「レージョさん。言いたいことは分かるけど、もうちょっと言い方を選んだ方が……」
「そんな……無神経だなんて酷い!」
いやいやお前等、やってる事も言ってる事も好き放題だな!封建制の下で、上位者である親の決めた事に逆らっといて言うことがそれかよ!まだ、事なかれ主義のセナの言うことの方がマシだわ!ローインに至っては、図星突かれて逆ギレしてる様にしか聞こえない……
まだ民主主義の考えで育った俺の方が、封建制度ってこんなもんだよなー位にしか思ってなかった俺の方が!お前等よりも、この文化に適応してると実感出来るわ!恋愛至上主義とか、頭ん中にスイーツ(笑)でも詰まってんのかお前等!?って、ここ恋愛ゲームの世界だったわ。恋愛するのが至上目的だもんな……
恋愛における無理を通せば道理が引っ込む様に出来た世界で、生まれと立場に誇りと責任を持つレージョの貴族らしい意見は、常に劣勢へと変わっていく。
但でさえ女一人に対して、相手は男三人と女一人。いつしか糾弾していた側が、される側になっていく程度には、口数の違いが口論における不利になるのを否めない。無茶苦茶な意見であっても、道理を引っ込める事が出来る場合なんかは、特にな……更に、無理の中にちょっとした道理のスパイスが含まれれば、それは決定的なトドメになった。
「レージョ・アステリオン、私は王子として常により良い選択をせねばならない。常に頂点に立ち、常に民へと威光を示す、一番上の立場に居なくてはいけない。それは‥…自分の妃となる者であってもだ」
「ッ!?」
「より優れている者同士がよりよい種を残す。それが我々、高貴なる者達に架せられた十字架だ。だから私は、レージョではなく、ローインを選んだ。何故なら私は王族で、彼女は君よりも優秀だからだ」
その時までは、イジメたイジメてないのくだらない水掛け論をやっていたと思ったら、決別の言葉は唐突に放たれた。
『浮気男の言い訳』に含まれた『王子としての考え』を聞いたレージョが、絶句する程の物言い。圧倒的に有利な上位者の立場から宣言された、下位の者は下位だから‥…お前は劣っているから駄目なんだと断言された言葉。
安全な立場から、多数に助けられて言い出した言葉で……孤独にも己の尊厳を守ろうと奮闘する者を踏みにじった。これが虐めじゃなければ、何なんだろうな‥…
だが、『仕方ない』『諦めなくてはいけない』。何故なら、相手は王族。封建制社会の頂点。
ヒエラルキーのトップに立つ者を支えるのが、下に位置する者達の勤めだ。踏みにじられても文句は言えない。言うにはリスクが高すぎる構造をした世界。
そこでミハエルはトップに居て、レージョはその下の位置にいる。この二人は、この世界に置いて限り無く頂点に近い位置に君臨している血族だ。だが今、この二人だけの世界では、ミハエルが上、レージョが下でしかない。
そのミハエルから断言されたレージョ。自分よりも下に居たはずの侯爵令嬢ローイン・プリスゲンよりも劣っていると、公衆の面前で断言されたレージョ。
己が誇りを守るための戦いは、より汚される結果となって幕を閉じた。
仮にも婚約者だった女に対して、余りにも無慈悲な言葉。それを聞いたレージョが走り去って行くのを、ただ傍観している俺。
そんなレージョを気にもとめず、選ばれたローインはミハエルと二人だけの世界に酔っている。それを祝福する周囲のお花畑な取り巻き連中を、ただ傍観するだけの俺。
これがただの、ローインがミハエル・シュナイダーのルートで確定したイベントに入った証だと知っている俺は‥…
『レージョの方が嫁確定キターーーー!』
って、喜んでたんだ。『おいおい、レージョの涙はどうしたんだ』って?‥…だって、レージョがこの位で泣くような珠かよ!背中に般若のオーラを纏って去っていったのを確認したよ。声なんか掛ける雰囲気でも、追っ掛ける勇気も持てないよ!
レージョと俺が手を組む事になるのは……この次の日である、学園の休日での出来事となる。
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
この悪役令嬢には悪さは無理です!みんなで保護しましょう!
naturalsoft
恋愛
フレイムハート公爵家令嬢、シオン・クロス・フレイムハートは父に似て目付きが鋭くつり目で、金髪のサラサラヘアーのその見た目は、いかにもプライドの高そうな高飛車な令嬢だが、本当は気が弱く、すぐ涙目でアワアワする令嬢。
そのギャップ萌えでみんなを悶えさせるお話。
シオンの受難は続く。
ちょっと暇潰しに書いたのでサラッと読んで頂ければと思います。
あんまり悪役令嬢は関係ないです。見た目のみ想像して頂けたらと思います。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
続きを期待しております。