“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第36話 アーティファクト?と正気度と

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 部屋の温度が急激に下がった気がする……どこからともなく聞こえて来た女の叫び声に皆、目を見開いて冷や汗を流している
 蹴り抜いた影の触手は霧散したが光の渦はまだ変わらず空中に存在している
 一体これはなんなんだ!?改めてよく見ると、光の渦と目が合った……
 
 台風の目なんかの中心部って意味の目じゃない……文字通りの目、一個の眼球が渦の中心部で俺達を見ている!?
 血走った白目に光点のないギョロっとした黒目だけが渦の中心に在る、なんなんだこの化け物!?

 気味の悪さに硬直していると白目の部分が黒目に浸食されていき、再び影の触手を形成して伸びてこようとする

 「皆!耳を塞いで、口を半開きにしろっ!!」

 腰のガンベルトから左手で銃剣を抜き、構える!
 狭い室内で発砲しては鼓膜を痛める危険がある
右手でドワーフ先生を抱えているが、反応出来ていない……仕方ない!そのまま俺の胸と右手で先生の耳を塞ぐ

 オミとエルナは素早いものだ、ユウメはアンリの耳を塞ぐが目線でOKと言ってくる。そのまま、発砲!

 破裂音が反響するが、光の渦に吸い込まれる!構わず4連射!
 触手は霧散するが、相変わらず光の渦は健在だ。心なしか、少し小さくなっている様だが効果が薄い……だったら!!
 そのまま一歩踏み込んで、眼球目掛けて銃剣を突き刺す!

 「GIIiiiiiYHAAAaaaaaーーーーーー!!!」

 今度は野太い獣の様な咆哮が聞こえるが、気にしている余裕はない
撃鉄魔力回路に充填開始……充填率120%……零距離チャージドショット……シュート!!

 トリガーを引き絞ると同時に発射するが、光の渦の中の銃口からは音はしない。代わりに……
 光の渦が、バラバラと割れたガラスの様に砕け散って光の粒となって消えていった……

 銃剣も無事で、そこには最初から何もなかったかの様に元通りの空間……
 夢で済ませたい気分だが、冷えた温度が元に戻っていく解放感で、より実際の出来事だったと認識してしまう

 「あの、あの……もう終わったのでしょうか……//////」

 俺の手の中にいるドワーフ先生が、か細い確認の声を上げている……
 急に抱き寄せられて、ズレた眼鏡の下に見えるパッチリした二重の大きな目には涙が浮かんでいる

 「ああ、済まない。驚かせてしまって……もう大丈夫だと思う」

 眼鏡を外すと美少女なのだろう、アラサーなのに美女とは絶対言えない見た目だが

 ……なんか背後のユウメさんからのプレッシャーで、また俺だけ気温が下がっていると思うんですが。これはな……ちゃうねん……状況判断やねん……

 

 ラブコメってる場合じゃねぇ!本当に何だったんだよ!?何なんだったんだよあの化け物!?
凡人メンタルの俺の正気度をごっそり減らした化け物だったがやはり皆には見えていなかったらしい

 銃から放たれた理力だけが空間に消えていき、刺さった銃剣は刺さっていた部分から消えていたと言っている……何、そのホラー現象……いや、俺が見てた光景も大分ホラーだったが……
 どっちにしろ、これで決まった!アヴェスタはクロだ!真っ黒だ!お守りアイテムじゃなくて呪いのアイテムだろこれ!?

 母親の形見だから、アンリが悲しむからと後回しにしてきた俺だがこればっかりはもう駄目だ!
 理屈は分からんが、解析した人物にあの目から出た触手が伸びていって最後は堕天するんじゃないのか!?最後まで試す気には到底なれなかったし、黙って見てる状況じゃなかったから言い切る事は出来ないがそう思っていいだろう

 何だってアンリの母親はこんな物騒な物を子供に持たせたんだよ!?魔法の才能があるアンリへの魔導書?それとも高価な物で価格が守ってくれる?それだったらさっさと換金して別の物にしといてよ!

 出会った事のない人物の事を言っても始まらないか……
 
 「アンリ、ごめん……やっぱりこれは持ってちゃいけないものだ。お母さんとの思い出の品でも処分しなきゃ駄目だ、アンリに危険が迫るのを黙って見てる事は俺には出来ない!」

 「アンコウちゃん……」

 「心配するな!これが無くなっても、お父さんの俺がいる。お母さんのユウメがいる!思い出はまだこれから沢山出来るから!……だからすまないけど、その為にもアヴェスタは燃やす」

 「うん……わかった。おと……やっぱりアンコウちゃんで///」

 アンリが抱き着いて来る、俺もアンリを抱きしめる。言葉はもういらない……
 後はアンリを右手で抱き、左手でアヴェスタを持って外に出る
 
 ドワーフ先生は何か言いたそうだったが、あの状況から只事ではないのは嫌と言う程理解してしまったのだろう
 学者として、知識の探究者として未知の事が記されている魅力は俺には推し量れないだろうが、残念そうにしてても堕天しかけた事実が声を上げるのを留めている 


 俺は他に燃える物のない地面にアヴェスタを置き、左手で銃剣を抜いて炎属性のセレクタボタンを押す……
 子供から大切な物を取り上げ、処分しようとする。親として最低の行為だ……が、そうだとしても親だからこそ成さねばならない義務がある
 納得はしても我慢できない感情がこみ上げているアンリを抱いたままトリガーを引く
 発射されたヒート弾が着弾して炎を巻き上げる、大の男を火だるまにする火力だ……赤い本を、さらに赤い炎が包んでいく


 ……が、人間一人を消し炭に変える程の火力でも、炎が消えた先には撃つ前と変わらないアヴェスタがそこにあった
 マジかよ!?何か力で保護されてるのか?だったら残りの残弾エネルギー全部使ってチャージドショットだ!!

 炎魔玉石の光が限界を超えて充填される、無属性の白い光が炎の赤い光になった炎属性のチャージドショット。炸裂燃焼弾バーストフレアとなり、赤から黄、黄から白を超えて、青い炎となった業火がアヴェスタに襲い掛かり何度も爆ぜる!
 灰と硝煙を撒き散らし、風に煽られバラバラになったアヴェスタ………だが、そこから時間が逆に流れ出したかの様に逆再生の映像が流れだす!

 黒い灰となった紙は、元の白い紙、赤い表紙となって最初と寸分違わぬ状態に巻き戻り地面に置かれている……まだ悪夢から覚めてないのか!?

 「アーティファクト……破壊不可の加護……」

 ドワーフ先生がぼそっと呟いた
伝説の遺物じゃなくて、どう見ても呪われた品にしか見えないが破壊不可なのかよこれ!?

 「恐らくですが……アンリさんも理解してアンコウさんへ渡している以上、譲渡契約の制約もクリアしてるはず……それでも破棄されないなら、どこかに捨てたり埋めたりしても戻って来るはずです」

 なんなんだよそれ!?マジでなんなんだよこの本!?
 もうやめて!俺の正気度はもうゼロよ!!……なんて言ってる場合じゃねえな、マジで呪いのアイテムなら教会にでも駆け込めばいいのか?

 「ここまで強力なアヴェスタの話は祖父からも聞いた事がありません……学術ギルド『アカデミー』に持ち込んで、協力を仰いでみてはいかがでしょうか?及ばずながら私もメンバーですので依頼の発注なら出来ます」

 「上位スキル持ちの先生でも何も見えない上に、危険もある……大丈夫なのか?」

 「国管轄の最高機関の目に留まれば、高位解析スキル持ちが事に当たると思います。残念ながら最高位解析持ちだった祖父が亡くなったので、他に最高位解析スキルをお持ちの方がおられるのかは国の機密ですので分かりませんが」

 条件も付けれて、俺立ち会いの元での解析なら危険も減るだろうとの事だが、国に寄付するから何とでも処分してくれって感じだわ……それでまたアンリの手元に戻って来たら意味ねーもんなぁ……

 「申し訳ない、何から何まで……」

 「いいえ!むしろ自分の未熟さを痛感しました!祖父の助手として上位解析スキル持ちである事に満足して、自身の学者としての探究を怠っていた自分への戒めと……真理への扉を開くお手伝いが出来る事がうれしいです!」

 ホンマええ子やで、この子!俺はこんないい子を犠牲にしようとしてたんだな……親としても人としても最低だったわ
 出来る事は強さへの訓練だけじゃないな、自分が出来る事出来ない事の把握もまた大事な事を忘れていた
 言い訳出来る事じゃない、今回はたまたま無事に済んだだけだ……一番安全なのは俺が最高位解析スキルを覚える事か?どうやって上げるといいんだろ?
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