“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第37話 希望の光と吸血鬼君主と

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 先生に案内されて学術ギルド『アカデミー』に来た俺達、専門的な手続きは全部丸投げして大まかな条件付けは決定済だ

 まずは最高解析スキル持ち限定の依頼として、通常依頼を出す
当然、こちらは駄目で元々の出すだけ出してみる賑やかしである
 報酬は先生に聞いて、十分量の額を記載している。俺達なら払える額だが、存在するかしないか国に秘匿される程のスキル持ちがホイホイ来るとは思えない
 来たら儲け程度の認識だ


 もうひとつの方が本命、国への正式要請である
これは先生自身がアカデミーメンバーでも上位会員として在籍していたので出来た事だ
 相手が国である分、受理からの審査等長くなるが問題ない
学術都市にもダンジョンがあり生活費に困る事はないし、にいさんに換金して貰った魔石貯金は十分余裕がある
 その間に俺が先生と解析スキルのスキル上げに励む時間にもなれば、どの程度の時間が掛かるかは分からないが一歩でも前進するはずだ
 
 今は俺とアンリ以外の女性陣が国へ提出する大量の書類群を作成・提出中である……俺は毎度の名前フィルターによる戦力外通告でやる事がない
 ……ので現状を整理してみた

 まず問題であるアヴェスタ
高価なこいつを狙って来る賊等への対処の為に、せめて価値を何段も劣る唯の魔導書にする方法である、解析を終えての情報公開
 これによって役目を終え、力を失うアヴェスタは、書かれている文字を真言マナとして使用するしか使い道がなくなる
 俺達の目指すべき第一目標である……アンリの手元に形見が残り、莫大に高価な品から、ある程度高価なレベルになる事によって危険が大幅に減る

 欠点は、一番の難点とも言える堕天の危険性である
賊や物取りの類など比じゃない程の脅威……魔族を産み出す危険がある事だ
 次に、解析者の不在……もし高位スキルでも駄目なら最高位スキルしか術はない、今現状そんな人物に当てもない

 対処は俺が立ち会う事で堕天の原因であるだろう事象を撃退する事、次の問題は俺か先生が高位、出来れば最高位スキルを習得する事
 前者はともかく、後者はいつになるか分からない。出来れば早急に最高位スキル持ちが現れてくれるに越した事は無いが、駄目な方のパターンでも得意スキルは上昇の早い俺なら望みはあると思いたい。知らずに使っていて中位迄いくなら期待もしているが過信しない様にしないとな
 

 次点で、第二目標はアヴェスタの処分・破棄
金銭問題ではないので、さっさと処分したいが破壊不可の加護のあるアヴェスタ……唯の力押しでは駄目な様である
 
 残念ながら今のアンリではアヴェスタを処分出来る程の攻撃魔法はない、破棄の意志表示をさせても本心からは望めないだろう事も想定出来る
それでも俺としては、解析が駄目でも処分か破棄どちらかの方法さえ分かれば即実行するつもりだ

 欠点はアンリが悲しむ、俺もそんなアンリを見るのは悲しい
が、背に腹は代えられない。感情ではともかく、アンリも納得してくれている
 これも先生に並行して調べて貰う様にお願いしている


 最後に二つ目と被るが、アヴェスタの処分・破棄方法の一つアヴェスタの譲渡だ
国に寄付して管理して貰うのも一つの手だが、これは思う事があって自分達からやろうとは思わない
 渡してみた物のアンリの手元に戻って来る可能性があるからだ

 要は最初に魔族になった司祭にアヴェスタを奪われた時に、そのまま放置しておけば分かったのかもしれないが……奪われたり譲渡してみても、アーティファクトの加護の効果で所持者であるアンリの手元に戻って来るかもしれない
 実際、俺達が取り返して今アンリの手元にある様に……
奇妙な因果が働く事で戻って来る様では、あの時、あのまま、あの元司祭を見逃したとして、魔族だけが増えて問題が解決しない危険がある

 正式な譲渡手段が解れば、アンリから俺へと渡して貰い俺が管理・保管する
一番最初に俺が考えた事でもあるが、それなら第二目標で俺が破壊する。アンリには悪いが、少しの危険の芽であろうと俺は刈り取るつもりだ
 こう盗賊なんぞ出る世の中なので、心配してもし足りないが子供には例え魔導書と言えど、余り高価な物を持たせるのは不安である
 その為の自衛手段である、アンリの強化でもあったがこれも過信は禁物だ。アヴェスタの問題が片付き次第、アンリには普通の子供らしい生活を送ってほしい

 それこそが俺の望む結果であり、過程は思いつく限りはこの3つか?
大分俺個人は、処分する方向に傾いているな……それだけ余裕がないんだろうな、自分の事ではなく自分の大切な者を守る事へのジレンマか…… 
 
 「アンコウちゃん……おトイレいきたい」

 「あ?ああ!すまないアンリ、考え事に集中してたわ。すぐ行こう」



 ある程度考えが纏まった所で、アンリの声で我に返る。一番近くにいた、ユウメに声を掛けてトイレに移動する
 アンリも我慢していたのか小走りである

 「アンリ、気を付けてな」

 「うん……きゃっ!」

 丁度トイレから出て来た男にぶつかるアンリ、俺が入れる様に男トイレに行く様に言ったが間の悪い……
 しかも、その男がアカデミーと言われるインテリの集まりに似つかわしくないスキンヘッドの大男と、その連れであろうモヒカンの二人組と来たもんだ……どこの世紀末から来たんでしょうかね!?
 これはギルドのテンプレ展開である、チンピラとのいざこざイベントか!?と、まずはアンリに駆け寄ろうとする……が

 「ああ、大丈夫かい?お嬢ちゃん、足元を見ていなかったよ。立てるかい?」

 「はい……ごめんなさい……」

 「ははっ、ケガが無いなら良かった。偉いねぇ!」

 「毛が無いのはお前だろwww」

 「やっかましーわwwwおっと、ここに立ってたら邪魔になるよ」

 「だな、早く研究室に戻らないとな」

 ……どの面下げて、人を見た目で判断していたのか……超いい人達だったよ!どうやら、ここの関係者でインテリでもあるようだ
 そうだよな!やっぱ人は見た目じゃないよな!激しくお前が言うなとツッコミが来そうだが、子供の不始末は親の責任なので謝罪するが気にしないで下さいと返された
 さすがインテリだ!ジェントルメンだったよ!冒険者ギルドとは違うのだよ!冒険者ギルドとは!

 話してみると上の階の研究員でトイレが使えなかったので下に降りて来たそうだ、そろそろ研究の成果が出るかもという所で二人とも嬉しいのか俺にも研究説明してくる
 言いたくて仕方ないのだろう、手応えのある時は誰かに自慢したくてしょうがないのは俺も分かる
 しかし、涙無しでは語れない事であった……

 「これで俺達、ハゲマッチョ族も頭髪を生やす事が出来るかもしれないんですよ!」

 「俺も生来、頭頂部にしか髪が生えなくてこんな頭ですが……一族の奴等に希望の光を見せてやれるかも……ああ、光ってるのは元からですけどね!」

 どうやら彼等は毛生え薬の研究員である様だ……
確かに解析スキルを使って二人を見てみると『ハゲマッチョ』『ハゲマッチョハーフ』と出て来た……なんちゅー種族名だよ!?
 普通に道歩いてて、ハゲマッチョにハゲマッチョって浮かび上がって来たら噴き出すわ!なんて危険なスキルなんだ解析スキル!?
 
 「我々のクラン『カミハズットモ』の長年の悲願が達成されるかもしれない時ですから、足元が浮ついていたんでしょうね。気を引き締めないと駄目だって事が分かったんですからお嬢さんに怪我がないなら何よりです!」

 「怪我せず毛が生える様、応援してて下さい!人間族の男なら、いずれ使用する事になるかもしれないでしょうし」

 肯定したくはないが、何が起こるか分からない!彼等の研究が上手く行くことを願ってやまないよ……本当に輝いている男達だぜ!!
 
 「アンコウちゃん、おわった~」

 「おお、それじゃ戻るか。それでは失礼します、貴重な研究のお話をありがとうございました」

 別れの挨拶をして男3人顔を合わせた所で

 「待ちたまえ!そこの3人組!幼気な少女に何をするつもりだ!?」 

 声のした方をみると水色の髪をした貴族風のイケメンがこちらを指さしている……イタイケに二人が凄い反応してたけど無視だ
 周囲には俺達以外、人はいないので俺達で間違いないだろう

 「あー、何を勘違いしているか知らんがこの子は俺の娘だ。彼等も善良な人達だよ」

 しかし、イケメンはよく見ると人間には見えない……解析スキルを使ってみると『吸血鬼君主ヴァンパイアロード』と出て来た

 「ヴァンパイアロード!?なんだかラスボスみたいな種族だな!?」

 「ほう?解析スキル持ちとは学者には見えんが、この施設の関係者ではある様だな……だが、ラスボスの意味は分からんが私を侮辱して無事で済むとは思わん事だ!」

 勘違いが勘違いを呼ぶ貴族風ヴァンパイアは手袋を投げつけてきそうな勢いで捲し立てる
 ギルドイベントのフラグは、まだ終わってはいなかった様だ……





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