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第38話 男の意地と雷妖精と戦火の兆しと
しおりを挟む立ち塞がるはヴァンパイアロード、同じイケメンのにいさんが爽やか系だとするならコイツはクール系だ
中性的な顔立ちと声、切れ長の目が眼鏡でもしてクィっと指先で上げようものなら、そういったのが好きな女子達は黄色い声援を起こすだろう
フリルのついたドレスシャツにタキシードの様なデザインスーツを着て
その上にマントというキザな恰好も、水色の髪、透き通るような色素の薄い肌のモデル体型、伸長は俺よりは低い位だが、着られているのではなく、着こなしている風に見える
中身が早とちり勘違い野郎でなければ文句なしだ、こいつはにいさんと違って残念イケメンと名付けよう
「失礼ですが、ヴァンパイアロードで在らせられるのなら……あなたは公爵閣下で御座いますか?」
「ほう……私を知っているのか、そこの無礼な輩とは違う様だ」
スキンヘッドの質問に答える残念イケメン……貴族風ではなく本物だった様だ、しかもやり取りを聞くに王族公爵。王弟とか王位継承権を持っている階級の方々の、順位は知らないが本物の王子様みたいだ
これから国の機関に依頼しようって時に、国の権力者と揉めるのは不味いよな……
「それは失礼しました、イキナリ声を掛けられ知らぬ事とは言え無礼を。珍しい種族だったもので、つい……」
「ふん!確かに思い違いをしたのはこちらが先の様だな。私への無礼はそれを持って不問としよう!」
偉そうだが平民相手に頭を下げる様では貴族はやっていけない、相殺してやるだけありがたいと思えとした態度だがそのまま斬りかかってこないだけマシな方だろう
正直あまり関わりたくないタイプの性格の様だから、取り入ってアヴェスタの申請の件を融通して貰える様な利用価値がある様に見えない
目的の為には手段を選ばないつもりの俺だが、向き不向き迄はさすがに超えない方がいいだろう
この正義漢に取引を持ち出したら、さらに激昂しそうだしな……
今は正攻法あるのみだ、駄目なら賄賂でも力尽くでも出来る範囲で行使するけどな!
どんどんやさぐれ龍になっていってるけど、気にしたら負けかなってそろそろ諦めてる
最悪、燃やしてしまえって思っていたら駄目だった事で余裕が無くなってるんだろうな……燃えても無事な本ってのは想定の範囲外だったし……
「アンコウさん、申請の手続きは終わりましたよ。これで先生に後日、連絡が来るまで待機になります」
ハゲマッチョ族の二人と話したり、ヴァンパイア公爵に絡まれたりとで戻ってこない俺達を呼びにユウメがやってきた
皆に任せきりだった作業は終わったらしい、次は俺が解析スキルを上げる番だ
先生には一緒に指導して貰いながら、さらに作業が続くので本当に頭が下がる
解析出来たら先生名義で権利も全部譲渡して、破壊する場合はどれだけでも色を付けて報酬を払おうと思う。お金に困らないのはチート様様だねホント!
「おお、これはお美しい!私はΔ±ζと申します……よろしければお嬢さんお名前をお聞かせ願えませんか?」
ぶち殺すぞ化物、よろしいならば戦争だ。吸血鬼君主と魔王暗黒龍、どちらが上かハッキリと分からせてやる。ウチの家族に手を出す奴は全身全霊を持って塵一片残さず原子分解してくれるわ!
「むっ!?失礼ですが、その魔法剣。もしやあなたはあの高名な“雷獣剣聖”でいらっしゃいますか?それにしてはお若い様な……」
「雷獣剣聖は私の母です、この剣は預かっているだけです」
「ではあなたが“雷妖精”★§Θ¶ψ殿でありましたか!失礼致した、改めて私は=*)公爵家の当主Δ±ζと申します。御高名はお母様と共に、ここ隣国ベネッシュまで届いていますよ」
「その名は捨てました、今はユウメと名乗っています。公爵様が存じておられるのは母の知名度あってこそ、私など母の付録でしかありません」
「御謙遜を……いや、あなたがこの国を訪れていたとは神の采配に感謝せねばなりません。よろしければお時間を頂けませんか?是非、聞いて頂きたい事が……」
「申し訳ありませんが……」「申し訳ありませんが公爵様、妻に任せきりだった所用が済んだばかりでして、まだやらねばならぬ事もある身。失礼ではありますが、次の機会という事で願えませんでしょうか?」
次なんか無いけどな!
アンリを左手で抱き抱え、空いた右手でユウメの肩を抱き寄せる。大姉さんとユウメの二つ名なのかな?を知っている公爵の様だが、今は置いておこう
大事なのは誰の嫁か分からせてやる事と、人妻をナンパしてんじゃねぇ!って事だ
公爵の立場としても、戦術級剣士に何か言いたい事がある様だが黙って見てるつもりはない
例えこれで俺達が、国に申請している事がバレたとして妨害にあっても遠慮なく叩き潰すだけだ
万や10万の兵相手でも負ける気はしない、国相手でも 遜る必要がない辺り俺も相当傲慢だとは思うが……黙って嫁を差し出すなんざ真っ平御免だね!
軍団に師団規模の損害を出したとしても譲る気はない!相手側の犠牲が勘定数な辺り、余裕かまし過ぎだと思うが事実だ
譲れないモノは譲る必要のない強さ……傲慢や、意地とも言えるガキの様なプライドだけど男は幾つになっても男の子だからね!仕方ないね!
「何!?君が雷妖精殿の……!?」
さらにくっ付いて見せつけてやるが、さすがにこの状況ではユウメも逃げない。恥ずかしそうだが、黙って受け入れている……雨降って、地固まってるな!これ、もうそろそろいけんじゃね!?我慢解禁日は近い!!
……だけど今は目先の問題だよな
「ええ、夫です。そう言った訳で申し訳ありませんがこれにて失礼致します、御機嫌よう公爵様」
なんか貴族っぽいつもりの挨拶で去ろうとする俺達、さらばハゲマッチョ族の二人よ!君達に栄光あれ!
「ッ!?済まない……今までの非礼は詫びよう、だが今は由々しき問題を抱えていてな……諸君らに当たってしまった我が不覚を許して欲しい」
「……そこまで言われては、このまま立ち去る無礼を働く事は許されないでしょう。連れ合いがまだいますので呼んで来てもよろしいでしょうか?ここでお聞かせ願える事では無いようですので」
なんか強気に出たら、エライ譲歩してきたので話位は聞いてみよう。上手く行ったら恩を売ってスムーズに申請が通るかもしれん
まぁ平民に頭を下げても戦術剣士の助力が欲しいって事は相当な荒事且つ厄介事だろうがな……
事情を説明してオミ、エルナ、先生の3人を加えて部屋の前に案内される
「まずはすまないが、我々の議会の内容を聞いて貰えないか?一から説明するよりも、今どうなっているかが分かるはずだ。ここから傍聴席に入れる、2時間程になると思うがまた後で迎えに来る」
そう言うと公爵は奥の一番大きな扉へと入っていく、気配察知から反応がいくつか消えた辺り、見えない公爵の護衛が警戒を解いたのだろう
一人に見えて、他に6人の護衛がいたのはさすが公爵と言った所か
議会ってのはどこも似たような空気なのか、以前テレビで見てたような国会中継の縮小版……5人の市民層である下院と、7人の貴族階級から成る上院、それに国王代理で摂政の公爵様が円卓で会議しているのを傍聴席から見ている
内、上院一人は欠席なのだがコイツが問題の様だ
その問題である伯爵家が反乱を起こして対応の決定……それが今回の議題の様だ
正直ああする、どうするを聞いてる内に敵の規模と立地・状況は分かるが、誰かがああしようと言えば反対され、代替え案を出せば今度は逆が反対する……
本当にどこかで見たような光景だ、まだ人数が少ない分だけ纏まってる方だと言えるかもしれない
30分もしない内にアンリが寝そうになるのでオミが抱きかかえて議会場から出ていき、残った俺達は最後まで聞く事になるのだが……
敵は伯爵軍2万、天然の要害にある堅牢無比で有名な城を持ち、肥沃な土地の農地からは豊作で食料事情も良好だそうだ
連合国であるこの国、ベネッシュから脱退・独立すると声明を出し、独立不可侵の体制を確立するのが目的の様だ……要は独立国家の樹立が目的か?
この国の体制でもある議会制……民主主義と言えば聞こえはいいが、数の暴力で決まる世界と貴族の風習の残る貴族主義とでは反りが合わなかったのだろう
上院7名・下院5名の議会員で過半数、7人以上の賛成票を得て承認される政策の世界
しかし勿論、上院も下院も一枚岩ではない……そんな中で施行される法律は誰もが賛成し易い……悪く言えば無難な政策しか立案出来ない
票が割れた場合は国王の持つ票で決戦投票が行われるそうだが、若輩の国王の代わりに摂政としてヴァンパイア公爵がその席についていた……つまり、票が割れない限りはお飾りの席だ
なんでまだ、いてもいなくてもいいポジションなんだが、国の一大事で問題を起こしているのはそのメンバーの内の一人なのである
席についている全12名中のスタンスは、反乱討伐が上院3名・下院2名の計5名が強硬派、交渉懐柔が上院1名・下院3名の計4名が穏健派、独立を認めるが上院から2名だ……こいつらは潜在的にも反乱予備軍候補なんだが堂々としている辺り貴族の矜持って奴なんだろう
公爵のスタンスは明確に討伐・強硬派だが発言権はあってもまだ投票権がない……そして認められたとしても強硬派が6人だ
これでひたすらキテイスウガー、シチニンガーとかで永遠に決まらないのでずっと茶番を見ているまま、最後は唯一の上院穏健派で進行役でもあった侯爵の宣言で議会が終わった感じだ
やり取り自体はもっと高度な論争だったんだけど、要約するとこれで済むんだから余計性質が悪い
先生の説明が分かりやすい御陰で、俺でも理解出来た内容が以上である
結局何がしたかったのかは分からないが、公爵が何を見せたかったのか、何を俺達にさせたいのかは分かった……
人間同士の争いに首突っ込みたくはないんだけどなぁ……でも大恩を売るチャンスでもある……下手に広がって、学術都市まで戦火に巻き込まれてはアヴェスタ所じゃなくなるだろうからやるしかないんだろうなぁ……
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