“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第41話 戦後処理と友人と

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 「漸く、一息つけそうだよ。まさか本当に2週間足らずで会談の場になるとはね……事後処理の方が長期間にならない様、今度はこっちが力を見せないとね」

 「大体、作戦級指揮官の真似をしたら上手く転がっただけだ。おまけにウチの家族は優秀でな!」

 「確かにね、ユウメ殿はさらに雷妖精の名に箔が付き、オミ殿は『深紅の聖女』、エルナ殿は『銀光の射手』、アンリ殿は『黒龍の神子』か……あんな小さな子が神龍クラスの力を持った幻獣と心通わす召喚士だったとはね……私は道化だった様だ」

 そう、家族皆に二つ名がついたのだ
反乱終息後、負傷者を敵味方問わず全員治療していったオミは聖女として
 今回、射撃手として他の追随を許さない程の戦果を挙げたエルナ
活躍云々は置いといて、戦場で強烈なインパクトを両軍共に残したアンリ

 全員が名は体を表すカッコイイ二つ名が、戦中・戦後に広まっていき、彼女達の美貌も相まってその実力が噂されるのにそう時間は掛からなかった……俺?……うん、俺にもついたよ……二つ名ね……『子連れバンパイア』

 確かに、名は体を表してるけどね……作戦指揮を執っている間はずっとアンリを傍に置いていた目つきの悪い吸血鬼の見た目の俺だしね
 他にももうちょい何かあるだろ!と思ってたけど、俺自体は作戦指揮以外に目立つことはしてなかったのに気付いた……
 決戦の幕を下ろしたのは俺の一撃だが、あれはドラゴンの俺であって、アンリの手柄になっている。勿論、それに不満もない……でもさ、もっとこう……厨二臭いカッコイイ名が欲しいと思うじゃない?『魔弾』とか『黒い彗星のアンコウ』とか!

 しかも俺の二つ名のオマケ扱いだったアンリが黒龍の神子になったので、子連れバンパイアの知名度は全部そっくりそのまま黒龍の神子へと持っていかれてしまった……セーフ!そのまま忘れ去って下さい皆さん!バンパイア部分が狼だったら喜んで名乗ったんだけどな!

 「しかし、こちらは余り芳しくないんだ。あの清廉潔白な武人気質の伯爵が何故、民衆を危険に晒す反乱なんて真似をしたのか……蜂起してからも疑問だったのだが、今回大人しく縛についても主張は一貫しているんだ『悪魔に唆された、私の意志ではない』とね」

 「そりゃまた……武人とは思えない言葉だな、最後になって心変わりしたんじゃ?あの時だって、結局最後は全軍で襲って来てた訳だし」

 「それは武人の意地とも言えなくはないさ、我々の被害はゼロと言っていい程だ。せめて一矢報いない事には死んでも死にきれないと思うだろうしね、それに証言した後は別だよ。弁明後に心残りが無くなった伯爵が自害しようとしたのを止めるのは苦労したよ……」

 「生き恥を晒しても伝えたい事だったと……確かに罪の軽減なんぞを狙っての自己弁護でない以上、妄想癖で片付けるには引っかかるな」

 おまけに悪魔に唆された、か……俺達の研究要請内容に関連ある言葉が出て来て、妙な勘ぐりが出てくる

 「その通りだ、領民からも人気のある彼への助命嘆願が届いている。そんな人物が自ら反乱を起こすとは事の済んだ今でも思えない、彼を見たら尚更だね。伯爵個人の罪は問わねばならんが、伯爵家取り潰しにはならない様こっちでも動くつもりさ」

 被害が出たのは伯爵家だけで迅速に処理出来た事が不幸中の幸いだった様で、処刑ではなく隠居・幽閉……いずれは解放される処分で済ませるそうである
 公爵自身も何度か独断先行を咎められたが、自治権の範疇で周囲を黙らせているみたいだ。物は言い様である

 
 俺達の要請は公爵からの鶴の一声であっさりと申請が通った。現在先生がプロジェクトリーダーになって人材の選定に当たって貰っている
 オミも巫女の知識を生かして研究に協力し、アンリ以外がアヴェスタを持つと危ないのでその護衛にユウメとエルナが就いている
 そして俺は公爵と反乱の顛末を話しながら、周囲の建物よりも高い公爵家の別宅の窓から外を眺めては道行く人々を観察中だ

 さぼっているのではない、解析スキルは未知のモノに触れ、観察する事によってスキルが上がると先生から教えて貰った。こうして高所から見知らぬ人々を観察しているだけで、精度や種族が浮かび上がって来る速さが上昇している

 こうして学術都市を眺めていると、様々な人種が入り乱れている。人種、獣人種、精霊種、エルフ種、竜人種…お、仲間かな?
 エルフ種は見かけてもハーフオークやハーフエルフなので、ハイオークやダークエルフなんかは珍しいみたいだ。竜人種はドラグニルか、伸長が2メートル超えているので遠くからでも一際目立つ

 解析スキル下位で種別、中位で種族名・物質名、上位でその人や物の名前、高位で人やモンスターならステータス・物品なら効果、最高位になると人物の隠された能力や才能・物品なら正しい完璧な使用方法や隠された効果が分かる様になると言う、地味だが強力なスキルになるそうだ

 現在修練の甲斐あって、俺も見えたり見えなかったりだが上位解析スキルまでは来てると思う……自信がないのは、名前が見えても文字化けしてるので上位スキルの恩恵が全く得られていないからだ。上位解析意味ねーな!

 でもこれは有り難いスキルである
人間で見ると脅威だけど、ドラゴンでだと雑魚に見える判断基準の曖昧な俺にとって明確にステータスという基準で表示してくれれば俺自身が判断し易い
 高位スキルの習得は頑張って早期に成しえたい所だ、今も頑張ってくれている皆の為に・俺の為にも
 


 「後はアヴェスタの解析だけなんだが……最高位解析スキル持ちがいないのは残念だな」

 「ああ、アヴェスタの解析なら国としても勿論協力は惜しまない。だが如何せん、国唯一の最高位スキル持ちは亡くなって国としても大いなる損失だよ。彼女の御爺様がいないのが悔やまれるね……」

 公爵には全て話してある、信頼を得る為には相手を信頼して自ら手の内を明かす事だと思うので、これからも協力が必要な以上、余計な詮索を産む様な事は排除しておいた方が良い
 それに興味深い話が聞けた

 「私の先祖……この国の建国者である人物は元は人間だったそうだ、だがアヴェスタを解析した代償にヴァンパイアになり……しかし、自我を喪失する事なくアヴェスタから得た知識を使ってこの学術都市。やがて国名になり首都でもあるベネッシュを興したと伝えられているんだ」

 「じゃあやはり、アヴェスタとフォールアウトの因果関係は昔からあるには在ったって事か」

 「国としては秘匿されている事だがそうだ、より強力な力を持ったアヴェスタ程そういったリスクが存在していると経験則から言われているね。人間を魔族に変える程の封印……一体、どれ程の秘術が書かれているのか……不粋とは言え心が踊るよ」

 建国の祖の伝承は堕天ではなく、英雄譚として語られている様だが魔族化しても意識を失わないってのは面白いな。意識を乗っ取られる事なく力を得た英雄誕生か、オマケにミシックアーツも付いて来る!ってか

 公爵の兄弟関係は人間だが、公爵は先祖返りで吸血鬼の色が濃くでたそうだ。普通に人間と変わらないが、献血変わりに人間の……出来れば乙女の血を月に一度は接種する必要があるらしい、やっぱ満月の夜なのかな?

 「高位スキル持ちなら我が国、我がアカデミーなら有数の保持者がいる。君が本当に堕天を食い止める事が出来るなら何らかの進展が得られるはずだ、勿論君が出来ると言う以上それを疑う事はない。国としても個人としても協力させて貰うよ!」

 「助かるよ、これからは無礼だとは思うが友人としてお互いに協力していこう。よろしくな、公爵様!」

 「気にしてくれるな、政治の世界に身を置いていると気軽に友と呼べる存在は貴重でね。友人に名を理解して貰えないのは寂しいので、今度私にも名を付けてくれ」

 「考えとくよ!どうせなら俺も名前で呼びたいしな!」

 やたら女の子の知り合いが増える俺だが、同性の友人が増えるのもたまにはいいもんだ
にいさんといい、コイツといいモテそうだしな!最近進展著しいヘタレ脱却中の嫁の事が相談出来る相手が増えるのは嬉しい
 男同士でしか言えない下ネタは低俗だが大事なコミュニケーションなのである、女には分からない事なのさ!お貴族様に通じるかは分からないけど……
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