“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第50話 ダンジョンでアンリと

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 のんびりと馬車の旅を終えて、家に辿り着いた俺達。なんだかんだで戦争だの、研究だの、魔族討伐だので忙しかったので少し骨休めの最中だ

 各自思い思いに行動をしていたのだが、一日休んだら皆でダンジョンに行こうって事に決定した。皆、元気だなぁ……
 まぁそれも、伯爵級デーモンの力を感じて自分達の戦力不足を感じた様なのだ

 大姉さんも国の依頼を終わらせ時間があるらしく、一緒に同行してくれる事になった
 多分俺は解析スキル上げでもやって、見てるだけになるだろう。最優先事項は、最高位解析スキルだと思うしな
 俺も進化の力をもっと鍛えないとと思うが、今回は彼女達の修行の邪魔をしないでおこう



 
 前回区切りが良かったので50層で攻略を終えていた俺達
ここからは一流パーティの領域である51層からスタートして順調に進んで行くかと思われたが……

 55層で遂にと言うか、やっとと言うべきかアンリに壁が訪れた……その名も一つ目象<ギリメカラ>、攻撃魔法反射を持つ魔法士の天敵である
 その分、物理攻撃には滅法弱いのだが幼女のアンリに物理攻撃の術はない
 だったら黙って見てるだけしかないのだが……それは此処、嫌がらせに懸けては俺に定評のある東のダンジョン!また嫌らしい罠が用意してあった……
 
 その名も一つ目象・亜種<デミギリメカラ>、物理反射で魔法に滅法弱い通常種の逆である。そして見た目は全く一緒っていう、嫌がらせっぷりだ!
 ここからは見た目に左右される事なく判断出来る実力者の領域って事だろう。一流の領域ってのは伊達ではない様だ

 「もーもー!」

 「アンリちゃん、落ち着いて。相手の気配を感じるんだ……ダンジョンモンスターにも個別の反応がある、デミにはデミの反応がね。それを覚えて普通のギリメカラには手を出さないだけさ」

 まだ気配察知が苦手な様であるアンリ、非常にご立腹である。大姉さんの指導の言葉も理解は出来ても実践出来ない苛立ちがあるようだ
魔法が跳ね返って来ても攻撃力に対して過剰防御力装備のアンリなので無効化しているが、本人にとっては思い通りにならない事象で、象相手にもーもー鳴く牛になっている
 こう言ってはなんだが、子供らしくていいと思う。一流冒険者の領域で漸く立ち止まる辺り、とんでもない才能だと分かっているが……いつも聞き分けの良いアンリが癇癪起こすのも又、カワイイんだから仕方ない!


 俺は気配察知でも解析スキルでも判断可能になったが、アンリには念のため解析スキルを覚えさせるのは避けているので、気配察知で判断して貰う事にしている
 大姉さんにもアヴェスタの研究結果は説明済なので気配察知に絞って指導してくれている

 ちなみにアヴェスタは現在俺がマジックバックの中に持っている、アンリから5km離さない限りは大丈夫ってのが俺達の見解だ
 村の中なら端から端でも範囲内なので、普段の生活をするだけなら問題ない。俺がアンリから離れる事は然う然う無いしな、生活費稼ぎもダンジョンで一緒だし


 結局、アンリは気配察知、俺が解析スキル上げをするって事で先に進む
俺の腕に抱き抱えられ悔しそうにするアンリの可愛い事可愛い事……イカンイカン!俺が観察するのはアンリじゃなくてダンジョンモンスターだ!



 ユウメ・オミ・エルナ・大姉さんは流石で、惑わされる事なくガンガン進んで行く
途中でエルナが

 「わかりました、お嬢様!通常種は瞳の瞳孔が黒ですが、デミは茶です!」

 ……うん、50メートル先にいる敵の瞳が見えるのはお前だけだエルナ……
 しかし、そんなエルナだが近接戦闘がいつの間にやら様になっている。目標さえ間違えなければ大体一撃なのでショートソードで戦っているのだが中々のものだ

 ギリメカラは斬撃で切り伏せ、デミには風を纏わせた剣による鎌鼬で攻撃する。体重移動も細身の彼女らしく軽やかで風に舞うシルフの様だ……が、偶に斬った後の血で足を取られたりしている

 「遠距離じゃ分からない事だが、敵を近くで倒すと返り血なんかで視界が奪われたり足元が悪くなったりする。それを対策するのも上達への一歩だよ」

 「はいっ!皆さんを見ていると自分の未熟がよく分かります」

 確かにユウメだと雷の斥力で、斬っても魔法剣に血がついて切れ味が落ちるなんて事も、返り血を浴びるなんて事もない
 オミはメイスだし、浄化魔法で返り血を浴びた傍から巻き戻しを見ているかの様に漂白されていく
 大姉さんはカタナをもう完全に使いこなしている様で、敵を斬り飛ばした後に暫くしてから血液が流れている……ので問題にすらなってない

 エルナには、切断武器には迷ったら風魔石という位らしく、ショートソードに風魔石を付けて渡してある
 魔力を通すと風魔石が切れ味と状態を維持してくれる、研ぎ要らずのメンテナンスフリーな優れ物になるそうだからだ

 俺も最初の頃は、今のエルナと同じようにスプラッタな返り血を浴びた状態になってはオミに浄化して貰っていたのでよく分かる
 やっぱりなるべく、蹴っ飛ばして距離取って銃撃が俺には向いてるな。今なら進化で操れる様になった闇に吸わせるとか選択肢も増えたので、その内エルナも闇魔法で吸収するか風魔法で飛ばすかどっちか使いやすい方を選ぶだろう



 「どうだアンリ?気配察知のコツは掴めて来たか?」

 「まだ……ギリメカラはわかるけど、デミとのちがいわからない……」

 おお、珍しい。いじけているアンリを見るのは初めてかもしれん……ちょっとこの子、可愛すぎませんかね?ってイカンイカンイカン!
 可愛がるだけじゃ教育になっていない、キチンと親として躾もしないと本当の意味での守るって事にはならないよな
 出来ない事を出来る様にするのは大変な事だ。それを手助けするのが親の役目ってもんだろうし、俺達なら多分……

 「よし、それじゃ俺がアンリの気配察知に俺の気配察知を乗せるからその感覚で感じ取ってみてくれ」

 そう、アンリと俺なら出来る裏技みたいなもんだ。離れた位置にいる俺をアンリは呼べる力があるのを宗教都市以来使っていないが持っている
 その手順でアンリの気配察知を俺が受け取り、解析しアンテナ兼ブースターになり補助をする

 残念ながら一方通行で、俺からアンリへは意志の送信が出来ないが、これなら俺の気配察知をアンリが使う事が出来る
 解析しながらの気配察知でかなり集中しないと出来ないから、皆が戦ってる中ぼっと突っ立ている事になるがそれは元からなので気にしたら負けである……


 「あっ!あっちとあっちのがデミで、あっちのがふつーのだ!」

 「おお正解だ!この調子で皆に何戦かして貰うから、自信が出来たら一人でやってみるんだぞ!」

 「はいっ!」
 
 どうやら上手く行った様だ、その後何戦かギリメカラの集団と戦ってみたが一人でも間違える事は無かった
 デミギリメカラ限定だが無双するアンリに漸く笑顔が戻る、やっぱりアンリは笑った顔が一番である!

 ……5歳で一流の冒険者じゃないと相手するのも難しい敵を笑顔で葬ってるけど俺の教育間違ってないよな……?



 その後は55層で時間を取られたのもあって、60層を終わらせた所で今日は終わりにした
 段々と敵も強くなってきているが、大姉さん曰く「漸く歯応えが出て来た」レベルなのでまだ進んでいいんだろう

 それとドロップアイテムもやっと真面になって来たのだが、雷のランスだったり、水の双剣だったりとウチに使い手がいないので換金行きである
 防具も出たけど、大体ウチは龍角防具なので、中々それを超える一品に出会えないのは残念である  
 全部換金して結構な額になったが、我が家の金の使い道は食費と素材購入とマジックバックを買う位だったのでもっと何かに使った方がいいのかもしれない
 この世界にまだ銀行に関連する施設がないので、日本の江戸時代の様に宵越しの金は持たない方がいいみたいだしな

 現代知識チートを使えるチャンスがここにあるけど、それをやると永遠に金勘定して顧客管理して他人から金を集めて他人に貸し付ける利鞘生活が始まると考えたらイマイチ食指が伸びないんだよなぁ……
 やるとしたらにいさんに話を持ちかけて、普段の実務は問題ないとして……そうなると俺がする事といえば払えない人達からお金を回収する事位であるからして……

 つまり異世界金融道や闇金アンコウくんが始まってしまって、他にもやられたらやり返す倍返しだ!生活が始まる訳で……ファンタジー成分が皆無になってしまうので正直やりたくない……
 俺のやるべき事は大金を稼ぐ事ではなく、アヴェスタの問題を解決する事だしな
 
 
 
 まだ日が高いうちに村に戻って来れた、北のダンジョンよりも近いってのが東のダンジョン唯一の利点だな!
 村の皆が一様に慌ただしく動いている……明日は村の一年に一度の祭りの日である、『聖火祭』の日だからだ

 宗教都市の大聖堂と呼ばれる所で絶えることなく燃え続ける聖火……それを運んでは各教会で受け取っていき一年の無病息災を願う行事だ
 聖火リレーみたいなもんか?スポーツの祭典じゃなくて、その日だけは羽目を外す縁日みたいなものらしいが

 一応、俺達もご近所付き合いがあるので色々協力している。会場の設置や屋台の作成なんかは俺の木工スキルが大いに貢献出来たと自負している
 昨日で大体俺の出番は終わったので、明日は家族で異世界初のお祭りを楽しむとしよう
 この村での宴会なら俺はぼっちじゃないからな……嫌、ぼっちじゃねーけどさ(震え声)
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