“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第51話 聖火祭と決着と

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 時計がないので正確な時間は分からないが、日の出と昼の中間位なので朝の9時頃かな?
 巡礼の集団の様な人達が朝から松明を灯してやって来た、あれが聖火なのだろう。普通の松明とは一線を隔す白い杖の様な物に灯されているあたり、本当にオリンピックの聖火を思い出す


 到着した聖火は神父様が受け取り、村外れに組まれたキャンプファイアーの親玉……櫓の様に高く積まれた木枠に着火された後、祈りが捧げられる

 祈りの儀が終わるとユウメの出番である、オミ製作の白い衣装に身を包んだユウメは神秘的だ
 日本の巫女装束が上下ともに白くなった様な恰好だ、炎が魔法剣とユウメの金の長髪をさらに輝かせながら剣舞が始まった

 燃え盛る火と、日の光に照らされるユウメの剣舞は見ている者達に息をするのを忘れさせる程に張りつめていて、神々しい程に魅せられてしまう
 やがて剣を納刀しユウメが一礼した所で観客全員から拍手と歓声が沸き上がった、祭りの開始の合図でもある

 長年爺様が勤め、大姉さんに代わり、大姉さんが病気となってからはユウメがやる事になって数年程らしいのだが、堂に入ってて見事な物だった
 村で一番の実力者が毎年剣舞をするのは、強さを奉納して今年一年健康でいられますようにって事らしい

 「去年よりも確実に上手く舞えたと思いますが如何だったでしょうか?」

 ユウメが出番を終えて俺達の所に戻って来た……ので

 「惚れなおしたよ」

 「ふぁ///!?あ、ありがとう//////」

 正直な感想を述べておいた、アンリもエルナも絶賛しているが

 「う~ん……夜の部で私のハードルが凄く上がってます……」

 「大丈夫だろオミなら、今から心配してたら夜までもたないぞ」

 オミだけはプレッシャーからか表情が暗い、確かにさっきの剣舞と比べられると思うと俺ならブッチ切って逃げ出しているな

 「とりあえずエルナの自信作でも食べて夜に備えるとしようぜ!ユウメの慰労とオミの激励がてら、お客第一号と二号は二人になって貰うか!」

 「ですね!畏れながらも、親方様と考案した傑作だと自負しております。是非、ご賞味下さい姉様方!」


 祭りの主役二人とは別に、裏方兼盛り上げ役の俺達の出番はこれからだ!
 早速俺達は、許可されたスペースへと運んだ屋台で準備を始める……と、言っても初期の仕込みは既に終わっている
 エルナが盛り付けたフルーツに、アンリがヨーグルトソースをかけていく、それを俺が休憩スペースのユウメとオミに運んでいく

 煌々と火が焚かれていると、穏やかなこの世界の気候でも暑い
だったらカキ氷だろ?って思ったけど、氷魔石で出来た氷を食するのは一般的ではなく、水魔石から出た水を凍らせるのが望ましいそうで……
 
 2手・3手と面倒な手順を踏むよりも、冷やしたフルーツを出した方が早いって事になった
 それにエルナが一手間加えて、単純なカキ氷よりも作り甲斐があると張り切って出来た一品の…フルーツヨーグルトやフルーツポンチと呼ばれるコレは本当に旨い!
 試食でも組み合わせを色々試したが、エルナの選んだフルーツとヨーグルトソースの相性は抜群で、エルナのほふぅ~からの耳震度4を観測した逸品である!

 炎の熱が伝わって来る暑さも相まって爽やかな涼と喉越しが、さらに味を引き立てる事請け合いだ!
 フルーツを口に運び終えた二人の表情を見て確信していいだろう、女子とスイーツの組み合わせなら更に高評価に期待してもいいはずだしな
 
 
 目立つ美人二人が、目立つテラス席で美味しそうに食べる風景は絵になる。早速、広告塔を見た新たな客達が屋台にやって来た
 ちなみに地元振興へのボランティアなのでタダだ、十分に金を取っていいレベルだと思うが賑わうならロハスである
 ……と、思ってたけど大人気過ぎて行列が出来てきた……俺も戻るとしよう
 




 いや、作った作った頑張った……総勢80人程度の全村人に対して100食分用意していたのだが昼には無くなってしまった
 子供から大人まで大人気の行列を捌くのは戦争だな!俺とエルナは試食で散々食ったのでいいとして、アンリの分を残して閉店になった
 途中からユウメやオミも手伝ってくれたが、序盤黙々とお手伝いしてくれたアンリの労働後の癒しにご満悦の姿を見ると自然と頬が緩む

 今は師匠の爺様と婆様と大姉さんも加わり囲まれて、一緒に食べている

 「これは美味しいですねぇ、素材の味を活かしつつ更なる探究を忘れない見事な一品ですよ」

 「お婆様にお褒め頂き光栄です!これも全て御指導頂いた賜物です!」

 相変わらず聖母の様な微笑みの婆様の言葉にエルナが誇らしげである……そして一方

 「全く……育て方を間違ったかねぇ……剣しか能が無いのがバレて愛想尽かされても知らないよ?」

 「う、うるさいわね!//////最近は錬金術スキルも上がって必要なレシピは分かる様になってきてるんだから!」

 「はっ!決められたレシピ通りにしか作れないなんて、自分からひよっ子と宣言してる様なもんさ!剣の腕だけじゃなく、料理の腕も磨いたらどうなんだい!?」

 「うう……頑張ります……」 

 大姉さんのユウメへのダメだしが繰り広げられている……ちなみに、大姉さんもユウメを引き取って以来婆様指導の元、料理の腕も凄腕だそうな
 
 「婆さんの料理の腕は戦略級じゃからな!どんな新兵でもすぐに精鋭に変えてくれるじゃろ、ガッハッハッハ!」

 爺様曰く、300対20万とかいう馬鹿げた状況を覆せたのは婆様のお蔭らしい。砦を大軍に囲まれた限りある兵糧の中で見事に元・宮廷料理人だった婆様は切り盛りしてみせたらしい
 絶望的な状況の中で士気を保つのは、どんな歴戦の名将でも難しい。それを死力を尽くさせつつも、死にたくないと思わせる日々の料理のお蔭で乗り切れたから勝ったってさ……
 どんだけ凄いのやら……一度食べてみたいね!




 後はオミ以外やる事もないので、他の出店や屋台を楽しみつつ一度家に戻ったりしながら皆で夜まで遊んだ。爺様と手を繋いで歩くアンリの後姿は祭りを心から楽しんでいる様で何よりだ!
 再び夜の舞台となった聖火台の周辺に人だかりが出来ている

 やがて神父様とシスターに連れられたオミがやって来た。衣装が今朝ユウメが来ていたのと同じ白い巫女服になって手には鈴を持っている
 聖火台の前に立つオミが夜の火に照らされると、そこだけ空間がどこか別の世界へ切り取られているかの様だ

 静かに鈴の音が響きだし、神楽の舞が始まるとより浮世と常世の境目が曖昧になっていく……
 ユウメが昼の光で魅入らせるなら、オミは夜の輝きで誘う……安らかなる世界へと
 ユウメが息をするのを忘れさせる空間なら、オミは微睡まどろんで一瞬なのか永遠なのか分からなくなる幽世かくりよを生み出している

 鈴の音が鳴りやんでオミが一礼を終えた時、全員が現世に戻って来た。遅れてやって来る拍手と歓声
 凄いな……神を降ろす巫女の力の一端を垣間見た気がする……同じ奉納の舞でもユウメとオミでは完全に別物なのでどちらがいいとかは言えないが……唯、どっちも凄いとしか言えない俺の残念な語彙力は分かる……



 「どうでしたか、アンコウ様?惚れ直しました?」

 「見惚れ過ぎて消えてしまわないか心配な程にな」

 戻って来たオミが開口一番聞いて来るので、これまた正直な感想を述べておいた……自分から振っといてテレるなよ!こっちまで赤面してくるわ//////
 照れるオミも珍しいが、ジョークの一つも出てくる辺り会心の出来だったのだろう。神父様達から来年も是非とのオファーが来ているのも当然である

 これで祭りのイベントは終わった……が、ここからが本番でもある。後は子供は寝たり大人は宴会だったり、これからも夜は続いていく
 特に、聖火祭のもうひとつの意味はにいさんに教えて貰っていた通り俺には重要事項だ

 聖火祭……永遠に燃え続ける炎の祭典。絶える事のない炎の前で、男から女へ想いを込めた花を贈り、愛の言葉を告げる儀式を行う日
 そう!要は恋人たちが永遠の愛を誓い合うイベントなのだ!にいさんもこれで奥さんに告ったらしい
 この村の人なら誰でも知ってる行事なので……

 「それじゃあアンリちゃん、今日はお婆ちゃんの家で一緒に寝ましょうね~」

 「は~いっ!おとまりのじゅんびはバッチリだよ!」

 「申し訳ございません、私までお邪魔してしまって……」

 「気にしてるんじゃないよ!あんたも私の娘だ、遠慮される方が寂しいってもんさ!」

 「私はこれから神父様やシスター様達に御礼を兼ねた酒宴に誘われていますので、終わり次第お邪魔させて頂きますね」

 アンリが大姉さんの家で寝るので、エルナもアンリの傍を離れる事はない
オミは多分、村の酒豪全員を潰して回るだろうから午前様になるだろう……俺とユウメだけが聖火台近くに残され、これでもかって位に皆が気を遣ってくれている……これで決めなきゃ男じゃないよな……

 「なぁ……ユウメ……」

 「………はい」

 それはユウメもだろう、この状況で気付かない奴がいたら何かの病気だ。もう逃げる事も噛む事も無い……覚悟は決まっている様だ
 だったら少し恥ずかしいが、伝統に則って形式通りに片膝を突いてマジックバックから花束を取り出す
 ユウメ以外の皆が選んでくれた、センスのない俺から見ても華やかなブーケを両手でユウメへ捧げる

 「永遠の炎に、永遠の愛を誓います。一生貴女を愛し続ける事を」

 返事がNOだった場合の手順など知りもしないし聞いてもいない、知っているのはYESの手順だけである……

 「永遠の炎に、永遠の想いを誓います。一生貴方の隣にいる事を」
 
 ユウメに手を取られてからの誓いのキス……その後、二人で花束を聖火へと焚べる……花束は永遠の炎の一部となり、想いも永遠になるって儀式だそうだ



 二人寄り添って眺める炎は確かにロマンチックだ、俺達は家に戻り二人だけの朝を迎えた…… 


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 気付くのが遅れました……オールカンストの方にもお気に入り登録頂きました様で、この場で御礼申し上げます。ありがとうございます!

 よろしければ引き続き、こちらの方もお気に入り登録やご意見・ご感想・アドバイスをお願い致します!

追記:お気に入り登録20人という数字を見て喜び狂っております!ありがとうございますありがとうございます!
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