“絶対悪”の暗黒龍

alunam

文字の大きさ
72 / 87

第64話 ドレスアップと居たのかよと……

しおりを挟む



 表彰されたり、ダンジョンコアを献上する儀だったり、女王への謁見だったりする当日、俺達は世界樹内部の頂上部……最深部ともいえる、世界樹天空ダンジョンに来ている。


 暗くじめじめした、モンスターの蔓延る空間であるダンジョンと言うよりそこは、王宮と呼ぶ方が正しいと思う。内部は荘厳で明るく、高貴なる場所に相応しい調度品の数々が置かれている。

 世界樹天空王宮……いつの時代から君臨し続けるかも分からないハイエルフの女王の居城。ダンジョンマスターである彼女が最初に作った地下ダンジョンによって繁栄を享受したハイエルフ達の信仰を集め、新たに神たる女王の住まう場所として造られた神殿とも呼べる場所、選ばれた者しか入れない世界樹内部において更に一部の者しか立ち入れない神域……そこに俺達は入っている。

 
 そんな場所に相応しい格好だってそれなりに様になっていると思うが、こんな時の主役はパーティーリーダーであっても男の俺ではない。
 俺は一張羅である、大姉さんに挨拶した時のオミのハンドメイドスーツである。いつもよりちょっとだけキッチリした格好ってだけだ

 その点、女性陣の格好はいつもの活動的な普段着の魅力も良いとは思うが、それでは出すことの出来ない華やかで煌びやかな雰囲気を醸し出している。
 美人がイブニングドレスを着るとそれだけで芸術品だね!皆の普段とは違う一面が引き出されて、見ているだけで心が踊る。

 アンリはいつものミスリルローブでもドレスコードを満たしてるとは思うけど、折角の晴れ舞台にいつもと同じ格好をさせる等、俺や……ましてやオミがさせるはがない。
 幼いアンリに良く似合うポップな薄桃色のカクテルドレス、フリルの付いたスカートは愛らしく、ショートボブの髪に今日はコサージュがついてより可愛い!この妖精みたいに可愛い子、うちの娘なんですよ!うちの娘なんですよ!
 この異世界に映像記録装置が無いのが非常に残念この上ないね!

 エルナもいつもの子猫を思わせる幼い印象は今日は為りを潜めている。肩と背中の空いた大胆な青いドレスは彼女の褐色の肌に良く似合う。銀髪の前髪を今日はアップにして結い上げた今日のエルナは、少しだけ大人の魅力を醸し出している。
 多分贔屓目無しに見れば、美少女ではなく美女の仲間入りを果たしているとは思うが、どうしてもまだエルナを幼く見てしまいがちな親や兄の視線だからだろう。でも醸し出された色気の分だけエルナを女性として見てしまっている自分がいるのも、また事実だ。

 オミは大胆に肩や背中を見せているエルナとは対照的に、ドレス自体は肩を出して首元で留めるタイプの赤いドレスだが、その上からショールを纏って淑やかな印象となっている。いつもの清楚系お嬢様の見た目に、高貴な雰囲気が上乗せされていて、俺達の中ではこの厳かな雰囲気に一番馴染んでいるのではないだろうか?
 俺達の衣装の作成は全部オミなのだが、エルナのドレスとの違いをエルナから指摘されると「あなたの様にスタイルのいい娘は露出が高くても映えるのです、私の様に肩幅の広い者は隠さなくてはいけないのです!」と力説していたが、俺から見たらオミも女の子で十分華奢な方なのだが……事、オシャレに関しては我々でオミに意見出来る者はいない。
 信頼と言う意味でも俺達はされるがままだし、エルナも不満があるから言ってる訳じゃない。オミがこうした方が良いと言うなら、本当にそうした方がいいのである。
 ただ、ちょっとだけ大胆な姿のオミも見てみたかったって俺の心残りがあるだけなのである……   

 そんなオミが「普段、ユウメさんの服を作る機会が無いので張り切って仕立てました!」とやり切った感で満面の笑みを浮かべていた緑のドレス……を着たユウメが今、俺の隣に立っている。
 副官ハイエルフさんが着ていた緑は濃い色をしていたが、こちらはライトグリーンの明るい色である。ユウメも今日は金の長髪を結い上げて、オミデザインの俺が作成したミスリルティアラをつけているのだが……凄いね、一国の姫と言われたら俺はすぐ信じるよ。
 ただ、本人が待合室を出る直前まで着慣れない物を着ているぎこちなさを出していたので、自分で作成したものを着こなしているオミに一歩譲っていたのだが……

 流石は、王国から直に依頼もある凄腕剣士のユウメである。この荘厳な空気の中でも悠然と、優雅に立っている様になると気品と言うか特別なオーラみたいなものが溢れている……
 先日、二人きりになって我慢出来なくなって押し倒してしまった俺だが、今では恐れ多くて隣に立つのにもちょっと気後れしそうになるね……美人過ぎる嫁を貰った旦那の苦労と言うか惚気と言うか……惚れ直したなんてもんじゃないね!




 そんな美女達に囲まれて案内の兵士の後ろを進む先には、これまた荘厳で大きな扉の前に衛兵がいた。どことなく、湖畔のダンジョン最終ボス部屋前の扉に似ているがこの部屋に女王がいる訳ではない。
 もはや万の年を超えて君臨し続ける女王は、世俗の些末な事象で動く存在ではない。女王がきまぐれを起こさない限り、例え近侍のハイエルフであろうと御目に掛かる事もない。
 唯、本当に一握りの側近が報告をして、反応があった場合のみ姿を現し、その頻度たるや100年や200年の単位ではないと言うから壮大な話である……それは、ダンジョン討伐が偉大な功績であろうと変わらない。
 女王の反応が無ければ献上の儀は、代理の側近に献上し、女王不在の御簾の向こうに運ばれるだけの作業である。

 俺も会いたいのは女王ではなく、最高位解析スキル持ちの人物なので、さっさと終わるならそっちの方がいいのでありがたい。
 太古の昔より生きている現人神ってのにも少し興味があるが、興味本位なだけだしな……ひょっとしたら、そんだけ長生きならアヴェスタの事にも詳しいかもと思うが、表に出てこない信仰対象とのコンタクトを考える程切羽つまっちゃいないしな。

 副官さんから事前に言われたのは女王不在なので、代理の人の持った盆にダンジョンコアを献上するだけのお仕事である。そしたら、俺達は表彰され、褒美に最高位解析スキル持ちの紹介状と世界樹の心材を受け取って終わりだ。

 時間にして一時間程度だろう。その為にオミは夜鍋して、俺は彫金作業に徹夜を繰り返したけど好きでやっている事とは言え、自分達の事ながら本当に物好きだよなと思う。
 そんな格式ばった形式通りの流れ作業を行っている最中に突然声は響いた……

 『懐かしき匂いがすると感じたら……どうやら古い知人が訪ねてきおったか……』

 広大な謁見の間にどこからかスピーカーの様に感情の籠らない声が行き渡った。頭上から?壁から?聞こえて来た方向性がわからない。
 ただ言える事はざわつく周囲の近衛達が口々に「女王陛下!?」と言っている事だ。

 声の主は若いのか年を取っているのかも分からない、それほどまでに感情は無く、相手の姿を想像させない……決して目に見えぬからでは無い、それ以上の神秘が声にはあった。
 だが、やがて御簾の向こう側に気配が生まれた。いつからそこにいたのだろうか?本当にイキナリ存在を発揮しだした。

 周囲のハイエルフ達は平身低頭で土下座せんばかりの勢いで跪いている……俺達に向けていた下賤の者を見る偉そうだった態度が見る影もない。
 俺達も習って跪くべきなのかもしれないが、ここには副官さんも将軍もいないので聞ける相手がいない。近侍や近衛兵の奴等は俺達を見てもいない。
 俺達以外が平伏している中、構わず声が続けられる

 「久しいな、暗黒龍……何万年振りかの?」

 
 今度は御簾の向こうから生身の声が俺達に向けられた……相変わらず声には一切の感情が見えない……
 って、知人って俺の事だったの!?




============================

お気に入り登録ありがとうございます!GW中には完結させる所存ですが、詰め込みたい事をこれでもかと投入して間延びしております……もう少々お付き合いの程
よろしくお願い致します
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...