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第64話 ドレスアップと居たのかよと……
しおりを挟む表彰されたり、ダンジョンコアを献上する儀だったり、女王への謁見だったりする当日、俺達は世界樹内部の頂上部……最深部ともいえる、世界樹天空ダンジョンに来ている。
暗くじめじめした、モンスターの蔓延る空間であるダンジョンと言うよりそこは、王宮と呼ぶ方が正しいと思う。内部は荘厳で明るく、高貴なる場所に相応しい調度品の数々が置かれている。
世界樹天空王宮……いつの時代から君臨し続けるかも分からないハイエルフの女王の居城。ダンジョンマスターである彼女が最初に作った地下ダンジョンによって繁栄を享受したハイエルフ達の信仰を集め、新たに神たる女王の住まう場所として造られた神殿とも呼べる場所、選ばれた者しか入れない世界樹内部において更に一部の者しか立ち入れない神域……そこに俺達は入っている。
そんな場所に相応しい格好だってそれなりに様になっていると思うが、こんな時の主役はパーティーリーダーであっても男の俺ではない。
俺は一張羅である、大姉さんに挨拶した時のオミのハンドメイドスーツである。いつもよりちょっとだけキッチリした格好ってだけだ
その点、女性陣の格好はいつもの活動的な普段着の魅力も良いとは思うが、それでは出すことの出来ない華やかで煌びやかな雰囲気を醸し出している。
美人がイブニングドレスを着るとそれだけで芸術品だね!皆の普段とは違う一面が引き出されて、見ているだけで心が踊る。
アンリはいつものミスリルローブでもドレスコードを満たしてるとは思うけど、折角の晴れ舞台にいつもと同じ格好をさせる等、俺や……ましてやオミがさせるはがない。
幼いアンリに良く似合うポップな薄桃色のカクテルドレス、フリルの付いたスカートは愛らしく、ショートボブの髪に今日はコサージュがついてより可愛い!この妖精みたいに可愛い子、うちの娘なんですよ!うちの娘なんですよ!
この異世界に映像記録装置が無いのが非常に残念この上ないね!
エルナもいつもの子猫を思わせる幼い印象は今日は為りを潜めている。肩と背中の空いた大胆な青いドレスは彼女の褐色の肌に良く似合う。銀髪の前髪を今日はアップにして結い上げた今日のエルナは、少しだけ大人の魅力を醸し出している。
多分贔屓目無しに見れば、美少女ではなく美女の仲間入りを果たしているとは思うが、どうしてもまだエルナを幼く見てしまいがちな親や兄の視線だからだろう。でも醸し出された色気の分だけエルナを女性として見てしまっている自分がいるのも、また事実だ。
オミは大胆に肩や背中を見せているエルナとは対照的に、ドレス自体は肩を出して首元で留めるタイプの赤いドレスだが、その上からショールを纏って淑やかな印象となっている。いつもの清楚系お嬢様の見た目に、高貴な雰囲気が上乗せされていて、俺達の中ではこの厳かな雰囲気に一番馴染んでいるのではないだろうか?
俺達の衣装の作成は全部オミなのだが、エルナのドレスとの違いをエルナから指摘されると「あなたの様にスタイルのいい娘は露出が高くても映えるのです、私の様に肩幅の広い者は隠さなくてはいけないのです!」と力説していたが、俺から見たらオミも女の子で十分華奢な方なのだが……事、オシャレに関しては我々でオミに意見出来る者はいない。
信頼と言う意味でも俺達はされるがままだし、エルナも不満があるから言ってる訳じゃない。オミがこうした方が良いと言うなら、本当にそうした方がいいのである。
ただ、ちょっとだけ大胆な姿のオミも見てみたかったって俺の心残りがあるだけなのである……
そんなオミが「普段、ユウメさんの服を作る機会が無いので張り切って仕立てました!」とやり切った感で満面の笑みを浮かべていた緑のドレス……を着たユウメが今、俺の隣に立っている。
副官ハイエルフさんが着ていた緑は濃い色をしていたが、こちらはライトグリーンの明るい色である。ユウメも今日は金の長髪を結い上げて、オミデザインの俺が作成したミスリルティアラをつけているのだが……凄いね、一国の姫と言われたら俺はすぐ信じるよ。
ただ、本人が待合室を出る直前まで着慣れない物を着ているぎこちなさを出していたので、自分で作成したものを着こなしているオミに一歩譲っていたのだが……
流石は、王国から直に依頼もある凄腕剣士のユウメである。この荘厳な空気の中でも悠然と、優雅に立っている様になると気品と言うか特別なオーラみたいなものが溢れている……
先日、二人きりになって我慢出来なくなって押し倒してしまった俺だが、今では恐れ多くて隣に立つのにもちょっと気後れしそうになるね……美人過ぎる嫁を貰った旦那の苦労と言うか惚気と言うか……惚れ直したなんてもんじゃないね!
そんな美女達に囲まれて案内の兵士の後ろを進む先には、これまた荘厳で大きな扉の前に衛兵がいた。どことなく、湖畔のダンジョン最終ボス部屋前の扉に似ているがこの部屋に女王がいる訳ではない。
もはや万の年を超えて君臨し続ける女王は、世俗の些末な事象で動く存在ではない。女王がきまぐれを起こさない限り、例え近侍のハイエルフであろうと御目に掛かる事もない。
唯、本当に一握りの側近が報告をして、反応があった場合のみ姿を現し、その頻度たるや100年や200年の単位ではないと言うから壮大な話である……それは、ダンジョン討伐が偉大な功績であろうと変わらない。
女王の反応が無ければ献上の儀は、代理の側近に献上し、女王不在の御簾の向こうに運ばれるだけの作業である。
俺も会いたいのは女王ではなく、最高位解析スキル持ちの人物なので、さっさと終わるならそっちの方がいいのでありがたい。
太古の昔より生きている現人神ってのにも少し興味があるが、興味本位なだけだしな……ひょっとしたら、そんだけ長生きならアヴェスタの事にも詳しいかもと思うが、表に出てこない信仰対象とのコンタクトを考える程切羽つまっちゃいないしな。
副官さんから事前に言われたのは女王不在なので、代理の人の持った盆にダンジョンコアを献上するだけのお仕事である。そしたら、俺達は表彰され、褒美に最高位解析スキル持ちの紹介状と世界樹の心材を受け取って終わりだ。
時間にして一時間程度だろう。その為にオミは夜鍋して、俺は彫金作業に徹夜を繰り返したけど好きでやっている事とは言え、自分達の事ながら本当に物好きだよなと思う。
そんな格式ばった形式通りの流れ作業を行っている最中に突然声は響いた……
『懐かしき匂いがすると感じたら……どうやら古い知人が訪ねてきおったか……』
広大な謁見の間にどこからかスピーカーの様に感情の籠らない声が行き渡った。頭上から?壁から?聞こえて来た方向性がわからない。
ただ言える事はざわつく周囲の近衛達が口々に「女王陛下!?」と言っている事だ。
声の主は若いのか年を取っているのかも分からない、それほどまでに感情は無く、相手の姿を想像させない……決して目に見えぬからでは無い、それ以上の神秘が声にはあった。
だが、やがて御簾の向こう側に気配が生まれた。いつからそこにいたのだろうか?本当にイキナリ存在を発揮しだした。
周囲のハイエルフ達は平身低頭で土下座せんばかりの勢いで跪いている……俺達に向けていた下賤の者を見る偉そうだった態度が見る影もない。
俺達も習って跪くべきなのかもしれないが、ここには副官さんも将軍もいないので聞ける相手がいない。近侍や近衛兵の奴等は俺達を見てもいない。
俺達以外が平伏している中、構わず声が続けられる
「久しいな、暗黒龍……何万年振りかの?」
今度は御簾の向こうから生身の声が俺達に向けられた……相変わらず声には一切の感情が見えない……
って、知人って俺の事だったの!?
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