“絶対悪”の暗黒龍

alunam

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第65話 女王と願いと

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 「久しいな、暗黒龍……何万年振りかの?」

 どうやら俺に話しかけられているのは分かるが、何万年前の事とか人違いならぬ龍違いです……俺が堕天して暗黒龍を乗っ取ってどの位かは分からないけど、年単位ではないはずだし

 でも相手はこの国で最高の権力者だ、絶対にご機嫌を損ねる事だけはしてはいけない。何て言うのが正解なんだ?
 久しぶり~元気してた?……絶対駄目だな……
女王さまにおかれましては、万の幾年流れようと麗しく……まだ御簾と言うか馬鹿デカイカーテンで全然見えねぇ
 正直に、すいません覚えてません。あなたの知ってる暗黒龍とは別龍です……おのれ騙したな!とかなったら目も当てらんねぇよ……どうしよう……

 迷ってる内に時間だけが過ぎて行く……しかし、変化は起きていた。仕切られたカーテンの向こうの人影がどんどん大きくなっていき……ついには5メートルはあるだろう天幕の様なカーテンが開かれた
 
 そこに立っていたのは……人間だった!女の子と言っていいだろう……黒髪黒目で身長は160センチちょっと、前髪の揃った腰まである長髪、服はギリシア女神が着ているようなキトンと呼ばれる白い一枚布をドレスの様に纏っている。
 着ている物こそ洋風だが、顔立ちは大和撫子そのもの。間違い無く日本人の見た目だ……唯、年が外見から判断出来ない。顔立ちからは東洋人特有の幼く見える雰囲気を出しているが、纏っている空気は威厳ある老練……老獪なとも言える空気だ。
 見た目で判断するのが難しい……美人というより美少女と思うが、見る角度・感じる雰囲気によっては少女か老婆という両極端な印象を受ける。もはや人外の魅力……じっと見ていると頭がおかしくなりそうだ。

 「何を混乱しておる?いや……そうか……これは奇妙な、あの災厄に乗り移る存在とは……」

 なんか全てお見通しみたいに一人で納得してる……けど、大体合ってそうだから否定する必要もないみたいだ。話が早くて助かる……

 「はい……お話の途中で、失礼ですがお許しを女王陛下。あなた様の知っている以前のドラゴンとは別の存在……それが自分になりますので……私はあなたとは初対面になります」

 「左様か……確かに反応は彼奴だが、随分と小さい……別の何かになっておる様じゃの……」

 うーむ、女の子に小さいと言われるとちょっとショックだ……多分、人化の術で弱くなっている事を言っているのだろうが……ひょっとしたらもっと別の何かを知っているのか?心当たりは思い付くが……

 「はい、別人と思われて下さい。ですので、折角お見えになられても私は答える術を持ちません。申し訳ありませんが……」

 「気にするでない、別に昔話をする間柄では無かったでな……しかし残念だ……」

 「残念とは……?」

 「何、期待しておった一つの可能性がやって来たかと思ったら肩透かしを食らっただけじゃ……それとも其方が叶えてくれるかえ?」

 「え?ええ、私に出来る事なら……何なりと……」

 「左様か、では頼む。妾を殺せ」

 「……はっ?」

 しまった、随分と間の抜けた返事を返してしまった……しかし、そんな事は関係ない位に場内が一気に殺気立つ!
 跪いている場のハイエルフ全員が一斉に俺へと斬りかからんばかりの目つきを向けている……誤解だろ、俺は何もしてねーぞ!




 「聞こえなかったのかえ?妾をころ……」

 「いえ!聞こえてはいます!聞こえてはいますが、望まれている事が理解しかねています!」

 「ふむ、左様か……妾は生きるのに飽いている、だから殺せ」

 「質問しても?何故私に……?」

 「他に頼める者がおらぬのじゃ、妾を殺せる者なぞ大神か魔神かしかおらぬ。そのどちらも屠り喰らう、暗黒龍なら間違いないじゃろう……」

 「それでも御命令賜りかねます……貴女亡き国をどうされるおつもりで?」

 「関係あるまい、妾が居ようが居まいが国は変わらぬ。現世に興味も無い……きまぐれで現れる象徴が消えた所で誰が困ると言うのかえ?」

 「畏れながら女王陛下!」「臣たる我等は、貴女様の元に集い貴女様に仕える事こそが我等ハイエルフ族の使命!」「象徴無くして何を支えに生きていけば良いと申されるのでしょうか!?」

 女王の言葉に、周囲の重臣らしいハイエルフ達が口々に嘆願する。
最初は高慢な態度で、女王が現れてからは奴隷の様に傅き、今は捨てられた子犬の様な悲壮感で主たる女王に訴えている……ならば死ねと言われたら、本当に死にかねない位の覚悟での上奏である。

 「唯、生きるだけなら何処なりとも生きて逝ける……だが、妾は逝く事が叶わぬ……何を支えに生きていけばいいのか……それが分からぬからの願いじゃな……」

 自分を殺せと言った時も一切の感情が宿らなかった声に、わずかばかりの自嘲の色が付く……一体、どれ程までに生きると自ら死を願う程になるのだろうか……万の時を生きた事の無い俺には分からない。
 唯、一つ俺に分かる事があるとすれば……




 「なぁ……ひょっとしてアンタ、日本人か?」

 今聞く事ではないのかもしれない、でも聞かずにはいられない。この世界ではお目にかかる事の無かった髪と目の色、顔立ちに親近感を覚えていた。自嘲の念が出た時に少しだけ感じた、共感出来る想い……望郷の念……
 帰りたいのに帰れない想いは……以前ひとりぼっちだった俺も抱えていた想いだ……

 並ぶものの居ない孤独は……心を殺すには十分だ……更に永遠の時を重ねれば、それは永遠の牢獄でもある。
 全てを得た崇められし女王・女神であっても……むしろ神だからこその孤独は、馬鹿デカイ使う当てもない強靭な力を持ってしまった俺には少しだけ理解出来る。
 
 「そうか……何万年生きたか分からぬが……同郷の異邦人と出会うとは何があるか人生は分からぬのう……」

 「やっぱりか……だったら余計に殺したくない!被害も無いのに人殺しが出来る程……俺達の世界は荒んだ場所じゃなかったろ?」

 「妾は余計に其方に興味が湧いた。小さき貴様でも暗黒龍で転生者なら、妾を逝かす事が出来るかもしれんしのう?」



 ……この、のじゃロリBBA!小さいとかイクとかわざとかよ!?イヤ待て、落ち着け俺!同じ日本人なら話せば分かるはずだ……問答無用で殺し合う国じゃない程度には平和だっただろ?

 「俺には愛しい妻と娘がいるんでね!相手が欲しいなら他を当たって貰いたいんだが……死にたいってんなら、考え直してみちゃどうだ?まだやり残した事とかあるんじゃないか?」

 「ある訳がなかろう……己で終わらせられるならとうの昔に終わっておる……それとも……被害があれば殺すと言うなら、其処な女共を血祭にあげれば少しはその貧相な牙もヤル気になるかえ?」

 駄目だ、大よそ説得の類に成功した試しがねぇな俺!もっと気の利いた事を言うべきなんだろうけど、相手との価値観が違い過ぎて会話にならねぇ!一万年生きてから出直しなって位に相手の反応が段々と増大していく……
 この会話してるのに話が通じない感じ……言葉のドッジボールになるこの感じ……凄い身に覚えがある……

 「其処な女童を連れておるのも、珍妙な話じゃ……災厄が災厄を連れて何をしたいのじゃ?」

 「アンリの事を言ってるのか!?何か知ってるのか?だったら教えてくれ!俺に出来る事なら何でもする!!」

 「左様か……では、まずは貴様を試すとしようかのう。一度試さぬと無駄骨になるやもしれんからのう……頼むから先に果ててくれるなよ……」



 瞬間、感情も存在も希薄だった女王の反応が爆発的に膨れ上がった!
今まで出会ったどの反応とも比べ物にならない……デカすぎて測りきれない!

 「まずは前戯と参ろうか……妾を満足させてたもれや……」

 そう言った少女の能面の様だった無表情の顔に、ほんの少しの変化が見られる……笑っているのか、泣いているのか分からない様な変化……
 唯、一つ俺に分かる事がある……人間だった女王の種族が、いつもの身に覚えがあるクソッたれの反応に……種族に変わった……


 『公爵級悪魔人間』……クラス:デュークのデーモン!全力の俺と同じか、それ以上の存在に初めて出会った瞬間だった……
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