パウー掌編集

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オッドアイの少年の話(R15/NL/未完)

お題「いい手」

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 俺は心底困っていた。

 予想はしていたものの、結構精神的にくるものだ。
 例の先輩対策で、俺と雅人、宏美がつるむようになって、周りからひそひそと噂されるようになった。
 あいにく俺は友達も殆どいなくて、直接聞きに来る人間はいない。

 しかし、雅人も宏美もそこそこ俺以外の友人はいる。
 雅人は立案者だから大丈夫としても、宏美も意外とけろりとしている。
 おかしな話だ。

「まさか、清司君がこんな風になるとはね」
「全くだ。いい手だと思ったんだけどな」

 二人にこんなこと言われる体たらくだ。
 全くもって理不尽極まりない。

「面と向かって言われるよりも、チラ見されながらひそひそされるのは結構辛いんだよ」
「ああ……」

 生暖かい目で雅人が見る。

「俺は直接言われてるからなぁ。適当にあしらってるけど」
「え、どんな風に?」
「お前、宏美とセックスしたのか? ってな」
「やーん、男の子ってば直接的!」

 何でそんな楽しそうなのお前ら。
 あれか?ひょっとして、俺童貞だから?
 でもお前らも経験無いよね?

「で、なんて答えたの?」

 宏美は興味津々で食いついている。
 そんな問いに、雅人はノリノリだ。

「そんな野暮な事、聞くなよ」

 そのイケメンボイスっぽく言うのやめろ。
 そして、テーブルをバンバン叩いて喜ぶ宏美。

「雅人君、格好いい、格好いいよ!」

 親指立てて大ウケである。
 女の子よくわかんない。
 目に涙をためるほど笑い転げた宏美は、はーはーと息を吐きながら、言う。

「まぁ、私も聞かれたけどさ」
「ほほう。女子のそういう話は興味あるな」

 今度は雅人が食いついた。

「『雅人君と付き合ってるの?』って普通に聞いてきたよ」
「清司の話は?」
「出てこなかったわね」

 ちょっとがっかりだ。

「あ、そういえば私のほうも、エッチしたのかって遠回しに聞いてくる子はいたかな?」
「ほほう。で、そちらはなんと?」
「婉曲的にきいてきたからねぇ。ニコニコしながら、上から目線で『どうかしら?』っていったら、勝手に解釈したみたい」

 女の子怖い。怖いよ!

「悪女っぽい! いいね!」

 親指立ててグッドのポーズを決める雅人。いちいちわざとらしいイケメンっぽくするのやめろと。

「まぁ、でも結構みんな見てるもんねぇ」
「そうだな。順調に進んでるな。まぁ、清司は想定外だが」

 元々、俺と雅人の両方またはどちらかと宏美はエッチまでしている関係というのをあからさまにするのが目的だった。
 それで、先輩の興味を減らすのが目的なので、効果はバッチリ出ているし、喜ばしい事ではある。
 で、想定外は俺だ。

「お前らなんでそんな風に普通にしてられるの?」
「なんでっていわれてもなぁ」
「だって最初にそういう話してたじゃない。こういう悪巧み、私は好きよ?」

 ああ、そうか、そうだったな。
 宏美は数少ない、「人間に見えるヤツ」だった。
 雅人の女版と思った事はあったが、まさかそのノリまで一緒だとは思わなかったよ。

「あー、でも、どうしよう。本当は清司君とも付き合ってる二股女みたいなイメージで進めてたよね」
「そうだなぁ。清司がこれだけヘタレてると流石に難しいか」
「ううむ、すまねぇ」

 ここは素直に謝るしかない。

「でも、本当にいい手だったのかなぁ。俺とじゃ流石になぁ」

 ぼそっと本音がこぼれる。
 そうなのだ。俺相手には

「なんでお前ごときが瀬川さんと?」

 みたいな感じで陰口をたたかれてるのだ。
 根暗眼帯男とか、雅人のおまけみたいに言われてるからな。
 正直辛い。

「もー。清司君暗いよ!」

 そういって、宏美が俺の背中を叩いてくる。

「それに、誰とでもいいってわけじゃないし。私は清司君のこと好きだから。そんな事言われたって気にしなくて良いんだよ」
「そっか」

 まぁ、二人が楽しそうにしてるんであればいいか。

「それでだ。先輩はそろそろ行動してくるんじゃねぇかなぁ。と思ってる」
「あれ? 興味無くなるんじゃないの?」
「考えられるのは2パターンあるんだ。興味が無くなってスルーするパターン。もう一つは学校にチクる」
「はぁ?」

 俺は変な声を出す。

「あー、なるほどねぇ」

 でも宏美はすぐに解ったようだ。

「不純異性交遊の事実確認に先生を使うのね。クズだわぁ」

 なるほど。そういう話か。

「ま、もしその話になったら、あっちの方が問題あるんで、むしろそうなることを願ってるよ」

 そういう雅人の顔は酷く悪人面だ。
 うん、さっきみたいなわざとらしいイケメンよりずっといい。

「ま、清司ももうちょっとの辛抱だ。ガマンしてくれ」
「解ったよ」
「じゃ、先輩の出方待ちと方針が決まった所でゲームしよう!」

 宏美がスマホを取り出す。
 いつも通りの俺らに戻るのだった。
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