アクト!!!!〜異能を持たない人間でも、嘘と知略だけで人外種族と対等に渡り合おうと思います〜

ディメンションキャット

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第一章 『隠された出会い』

CHAPTER.11 『賢い人は徹底的に楽天家である』

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「お、上手いことやったみたいやな……って、ぇぇええええ!?」

 廊下の奥から歩いてきたデブをみて誉は絶叫した。

「ど、どうしたんですか!? そ、そんなに驚いて」

 だが、それもそのはずだ。廊下の奥からこっちに歩いてくるデブが、全くデブじゃ無くなっていたのだから。ほとんど、誉とデブの体型は違いがないほどにデブは痩せていた。

「え? えぇ~……めっちゃ痩せてるやん……」

 デブは計画通りにエメを無力化したのだが、その喜びよりも誉の頭の中はデブが痩せていたことに驚きで頭がいっぱいだった。

「あ! あ、牢屋に結構使っちゃって……」

 申し訳なさそうに謝ろうとしたデブの言葉を誉は慌てて遮る。

「いやいや、ええねんで? 聞いてたことやし、あまりの差にびっくりしただけやし。そもそも、その体重減少含めての計画やったからさ。で、分化体の擬態解除時間って、きっかり一時間やんな?」
「は、はい」
「おっけー、おっけー。じゃ頼むわ」

 誉の言葉を聞いて、デブはエメの姿に擬態した。

「うーん、もうちょい目ぇ虚ろな感じで」
「こう……ですか?」
「お、ええやん。ホールにおったヤツらそっくりやな。じゃ、出発すんで」
「あ、あの、それで、どこに他の魔女居るんですかね……」

 デブの当然の問いに誉はチッチッチッと指を振った。

「俺がそこら辺抜かりあると思うか? 大丈夫、大丈夫。デブが戦ってる間に種は撒いといたから」
「種……?」
「エメが玄関ホールに洗脳した信者らを配置してたやん? で、異常があったら信者が直ぐにエメに知らせるようになってた」
「……?」

 自分もその場に居たのにどうして説明するのか分からない、と思ってデブは首を傾げる。

「まぁ要するに、エメは異常発見係みたいな感じやと思うんやけれども? でも、エメが出来るのってせいぜい侵入者の洗脳ぐらいやねん、だって魂魔法の使い手やねんから。それにずっと教会におる訳でもない。じゃあ、今みたいにエメが動けない時に異常事態が起こった時、信者はどこに行く?」

 デブは直ぐにその答えに思い当たった。

「……ほ、他の魔女にも自分を介さずに報告しに行くようになっている……とかですか?」
「そういうこと、普通はそういう風にする。だからさ」
「……え?」

 誉のにやり、と笑みを浮かべた。悪戯を仕掛けた悪ガキのような笑みを。

「放火、して来たわ」
「えっ、えぇ!? そ、そんなことしてっ」
「ええねんええねん。もうすぐ警報鳴ると思うからちょっと待ってな」

 ──ジリリリリリリリ!!!!

「っっ!?」

 デブが突然鳴りだした音に耳を塞ぐ。

「お、来たきた。よし、とりあえず元の玄関ホールまでは戻れると思うから、向かうで」
「あ、あの! さっき使えそうなものも手に入れたんですけど……」
「ん? まぁよー分からんけど、使えそうなら床にでも偽装させて持って来といて」


◇◇◇


「もうっ、なんなのよ!」

 水の魔女マノンは、苛立っていた。

 さっきまで彼女は、実験に没頭していたせいで散らかっていた部屋を一ヶ月ぶりに丸ごと洗浄している途中だったのだが、突然エメの遣いがドアを開けて、火災を知らせたことで、部屋の掃除を中断せざるを得なかった。

水魔法マージ ドゥ ルゥ退断水面ひきたちみなも』!」

 水壁が火の手や黒煙から彼女を護る。

 マノンが来た時には玄関ホールは地獄のような状態だった。洗脳されている信者たちは予め設定されていたのか、避難済みだったがソファや受付が燃え黒い煙がホールに充満していたのだ。それをマノンは水魔法で消化し、炭を流していく。

水魔法マージ ドゥ ルゥ砕波の蛇搦さいはのだじゃく』ッ!」

 勢い良く波が地から湧き出る。生き物のように波はうねり、あっという間に火の手を囲んだ。

「『絞め殺して』!」

 マノンの合図と共に、水で作られた蛇はとぐろの内側の火を一気に消した。

「なんでっ、私がっ、こんなことしなきゃいけないのよ!」

 火が消えた代わりに水浸しになった地面で彼女は地団駄を踏んだ。

「ていうかっ、普通火事とか起きる!?」

 怒り狂う彼女はその怒りに身を任せ、近くにあった焦げたソファを右足で蹴飛ばす。

「っ痛いっ! もうっ!」

 が、思いのほかソファが硬かったのかマノンはじーん、と痛む足を抑えて今度は泣きそうになっていた。

「ねぇ! エメ! 何立ってんのよ! ちょっとは心配しなさいよ!」
「……」

 消火が終わって直ぐ、ホールに入ってきたエメはマノンを一瞥もせずただ虚空を眺め続けていた。更にエメは、いやエメの姿をした者はマノンの問いにも何も答えない。

「エメってば! 聞いてるの!?」
「……」
「え……エメ!? ねぇ、大丈夫!?」

 ようやく、異変に気付いたマノンは慌ててエメを観察する。

「何この目……もしかして」
「もしかしなくても、そうだよ」

そう言って誉は姿を現した。

「だ、誰よ、アンタ!」
「誰だっていいじゃないですか。それよりも、お友達の心配をした方がいいのでは?」

 魔女が動揺しているのを他所に、誉は余裕の表情で煽る。

「ふん、エメをこんな風にしたのアンタでしょ」
「えぇ、僕です」

 誉は迷うことなく告白する。実際は、デブがエメに擬態しているだけなのだが、そんなことが分かるはずもない。

 魔女は、エメを誉が洗脳したと聞いて、何故かホッとしたような表情を見せた。

「良かった……これで躊躇無く殺せる。水魔法マージ ドゥ ルゥ! 『砕波さいはのっ』」
「おや、良いのですか?」

 おどけたように笑いながら誉は魔女の詠唱を中断させる。

「は? 良いに決まってんでしょ! 仲間を洗脳されてんのよ!?」
「そうです、だから良いんですか? と聞いてるんですよ。私は、エメさんを自由に出来るんですよ?」

 誉はエメと向かい合う。

「そうですね、例えば『』」

 デブは事前に決めていた通りにしゃがむ、それも出来るだけゆっくり、脚以外に力を入れないように。

「ほらどうです? 面白いでしょう、僕の命令した通りに動くんです」
「……何が目的なの」

 魔女は、ようやく話し合いに応じてくれる気になったのか、こめかみに血管は浮かばせながらも、攻撃の手を下げた。

「ようやく分かってくれましたか」
「ええ、アンタがせこい男ってことがね」

 魔女は誉を睨みつける。

「はは、耳が痛いですね。でも、僕はそこまで敵意がある訳じゃなんですけど」
「敵意が無い人は他人を洗脳したりしないと思うけど?」

 毒を吐き続ける彼女を無視して、誉は背中を向けて、ぴん、と指を立てた。

「……とりあえず、魔女全員揃えてください。あ、ここじゃない所でお願いします。僕も煙くさいのは勘弁ですから 」
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