アクト!!!!〜異能を持たない人間でも、嘘と知略だけで人外種族と対等に渡り合おうと思います〜

ディメンションキャット

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第二章 『トリプルナイン』

CHAPTER.42 『最善手ほど読みやすいものは無い』

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まばゆい時間跳躍特有の光に包まれながら、プロ子は惣一が言っていた必勝法を整理する。



今日、SESの教会で急遽行われた作戦会議、そこで惣一は時軸さえあれば必ず勝てる方法がある、と言ってエレーヌをまっすぐ見た。

「エレーヌ、出来るだけたくさんの配信用のカメラを用意できる?」
「え、カメラ?うーん、一応五、六台はあるけど……」

戸惑いながら答えるエレーヌに惣一は満足そうにうなずいた。

「よし、じゃあ説明すんで。まずは、この紙を見てみて」

惣一はポケットから一枚の紙を取り出して、全員に見えるように机の中心に置いた。それは、いつかプロ子と惣一が掘りに行ったタイムカプセルから取ってきたものだ。

「え、ちょっと惣一!これ取って来ちゃダメじゃん!」
「まぁ、そう言わずに読んでみ」

取ってきてしまったものは仕方がない、そうプロ子も諦めて紙に目を通してゆく。

「ふむ、99年9ヶ月後に起こった通信室占拠事件って、あの男が私らにヒントをくれた時のことを書いてるみたいだね」
「え……ちょっと待って、ここ!」

マノンがそう言って指した箇所、それを見て誰もが目を疑った。
そこには、犯人はアンドロイドの可能性が非常に高い、とでかでかと書かれていたのだ。
誰もが首を傾げて惣一を見る。これは一体どういうことなのか、その答えを知りたくて。

「そう、犯人はエルフじゃなくてアンドロイド。いや、もっと言うと犯人はプロ子や」
「はっ!?」
「ま、プロ子言うても現時間のプロ子ではないと思う。順序だてて説明するで、多少長くなるけど」

惣一は目を丸くして驚きの声を上げたプロ子をおもしろそうに見ながら、話し始めた。



まず、三か月前のあの未来からの三つの質問タイム。あの時から僕は、何か怪しいと思ってた。それは、過剰にわざとらしく僕を警戒する口ぶりとか、あとは、ナキガオも誉も気づいてたと思うけど、質問が始まるまでの会話にあった嘘。
具体的に言うと、次の二つの言葉やな。

「これは三ヶ月後のプロ子だ。三ヶ月後、お前たちは俺と会う」
「余りにも詰まらなかったんだよ、お前たちの抵抗が。だからこれはサービスだ」

でも、僕はその時はあんまり気にしてなかった。質問に対する答えに嘘は無いみたいやし、敵が嘘をつくのは当然やと思ったからな。
でも、『武器屋』と『笛の男』の捕獲作戦の時に実際に敵のボスと会って、なんかおかしいと思った。この男は、戦いを楽しむためだけにあんなことをする男じゃない、って。
それに、プロ子と見に行ったタイムカプセルを見ても、エルフが五十年後よりも先の未来に行った記録もない。まぁ、その時にこの紙を見つけたわけやねんけど。
で、その紙を見つける前に既に、僕は『未来視』に対する対抗策を思いついててん。『未来視』で敵がリスクを回避することが出来るならば、未来から攻撃すれば良いんやないかって。
具体的に言うと、まず、プロ子が適当な未来に移動する。そして、そのあいだ僕らは『未来視』の男の一挙手一投足をリアルタイムの配信で記録し続ける。
すると、プロ子が移動した未来でもインターネット上に細かく男が何分にどう動いたかの動画を確認できる。プロ子はそれを見て、ピンポイントの時間、場所に再び過去へ移動して、死角から不可避の一撃を放つ。
これで、『未来視』完全回避の必勝の手が完成ってわけや。


惣一の完璧とも言える秘策を聞き、誰もが感心して拍手を送る。

「すごいやろ?うちの惣一は天才なんですわ」
「誉は僕のなんやねん」

なぜか誇らしげにする誉に惣一は一瞬笑ったが、再び真剣な表情に戻る。

「でも、この策には一つ問題があった」



それは、もし僕らがボスを倒してしまったら。っていう話。
もちろん敵は倒したほうが良い、でもボスを倒すということは3ヶ月前にあったあの通信が存在しなくなるということじゃないのか?そうなれば、僕がこの作戦を思いついたという事実さえ消えるのか?不確定的な要素が多すぎた。
で、もし、僕らにあの通信が無ければどうなっていたのか。僕は試しに考えてみることにした。
まず間違いなく、僕らは敵の本拠地に入った瞬間にほぼ全滅するやろう。『未来視』対策をしなければ、たぶん一瞬で負ける。
でも、僕なら敗北に直面した時、この一手を打つかもしれへんって言うのがあった。
その状況で打てる最善手を、僕は絶対に打つから。
それは、プロ子を未来に逃がして過去の自分たちに敵の情報を流すっていうやり方。でも、どうやって通信をすればいいのか。そこで、僕は『上』を直接襲うっていうやり方を思いついた。
多分、真正面から通信しても疑い深い僕とか誉は信用せえへん。ならば、敵のフリをすれば良いと。
簡潔に敵のヤバさを伝えつつ、後からアレ、プロ子か?って思わせられるように。通信してきた相手がプロ子では?って次の自分が気付いたら、同じように過去の自分に忠告するというやり方を思いつくはずやからな。
つまり、過去の自分に敵の情報を流しつつ、その時は敵やと思われて後からプロ子ってバレることで次の自分も同じように過去の自分に敵の情報を流すことを思いつくようにするってことや。そのループを完成させるのが目的。
さらに、僕なら敵から一方的に情報を渡されても信用せえへん。
だから、質問形式にすることにした。それもリアリティのある3つだけ。
3つの質問、誉とナキガオと二ネットが質問するのは容易に想像できる。それにどんな質問をするのかも予想はつく。
ならば、プロ子を逃がす前、敗北した状態で敵が油断してる時に聞くしかない。そして、その返答をプロ子は音声として記録して未来に脱出。未来への脱出は、未来視で見られていても全力でプロ子を守れば容易い。



「ていうのが、一回目やと思う。一回目って言うのは、未来からのヒントがなかった場合の話」

惣一が一気に喋った内容、みな理解するのに苦労して数分間の沈黙が流れた。
そして、初めに理解したナキガオが手を挙げた。

「では、通信で見えていたボロボロのプロ子は何なんでしょうか?声帯が取られていたやつです」
「あれはやな。その時間のプロ子やと思う。多分、今回の作戦でも、プロ子が99年9ヶ月跳んだら、既に通信室は占拠されてると思うで。それは、未来のプロ子がお膳立てしてくれるってこと。多分、声帯とかはただの演出やろうな。猫のお面も、未来のプロ子が通信室を襲ってた時、プロ子ってバレたらその未来から過去に指示してプロ子の製造を中止するかもしれへんから、それ対策の変装やろう」

惣一の説明に誰もが唸るようにして考える。その様子を見て、誉は苦笑いした。

「ま、取り敢えず時軸を奪還せんとなんにもならへん。そっちの作戦も考えんで。まずは……」



眩しかった光が徐々に暗くなっていく。
プロ子は時間跳躍が終わることを察して、覚悟を決めた。

私はあの日見たことを繰り返せば良いだけ。そして、配信のアーカイブを見て、言われた通り三分間経過後の過去、死角に帰るだけ。

プロ子は緊張を隠すように必死に自分に言い聞かせ、通信室に足を踏み入れた。





プロ子が、まばゆい光に包まれて姿を消したのを見たあと。
グラン以外の全員がホッと一息つく、まるで戦いがすでに終わったかのように。その空気にグランは苛立ちを覚えた。
グランは、取り敢えず『未来視』を発動させた……が。

「は?」

思わず、間抜けな声が出てしまう。

「五分後の自分の未来はどう?視えてるん?自分が捕まってんのが」

惣一がニヤニヤとカメラを向けながらグランへと問う。

「それとも何も視えへんのかな?真っ白やったり?」

惣一の言った通りグランが『未来視』で視た光景は、真っ白な何もない世界だった。
同じ景色をグランは寝る前に能力を使ったときに見たことがあった。
つまり、このままだと自分は五分以内に意識を失うほどのダメージを受けるということを理解してグランは恐怖した。
たいていの未来は、グランが未来を視たうえで、何か行動しようと考えるだけで容易く変わる。今回の襲撃前も、ライに二階を守らせようと心の中で決めたうえで視ると敗北の未来が。じゃあ、一階を守らせると?と考えて未来を視れば唯一、一時間の間に敗北の未来が見えなかったから、それを使って布陣を敷いたわけだ。
だが、今はそうでは無かった。
何をしても、何を考えても真っ白な未来は変わらない。グランは一層恐怖を覚えた。

「おいおい、今からお前が何をしようとも手遅れやで」

誉もグランにカメラを向けてそう言うながら、ポケットからスマホを取りだした。

「ま、いいや。お前は3分後に負けるんやけど、わざわざ3分取ったのは理由があんねん。はい、これっ」

誉からグランへ投げられたスマホは通話画面だった。

『グラン!グランか!?』

グランは相手の声が聞こえると直ぐにリラックスしたような表情になる。スピーカーだから、全員に話を聞かれてるが、そんなことは彼にとってどうでもよかった。

「ザック!無事だったか……」

肩の荷がおりたように柔らかい顔でグランはそう言った。

「俺たちは失敗しちまった、お前でも逃げr」
『いや、俺も捕まってる』
「お前が負けたのか!?大丈夫か!?怪我は?」

心配のあまり連続する質問にザックは少し笑った。

『大丈夫だ。俺はワザと捕まったんだ』
「え、」
『グラン、もうやめにしないか?正直、ここ最近のお前は見てられない』
「……っ」

ザックの言葉はグランの言葉を詰まらせた。

『復讐とか、そんな柄じゃないだろう?お前は……あんなに優しかったじゃないか』
「だが……ライは!?ローザだって!あいつらは?」
『みんなも同じ思いさ。この世界に来てすぐの頃は、復讐心に支配されて幾つもの過ちを犯してしまった。でも、時が経てば経つほどに自分の心が壊れる音がするんだ』

スマホ越しに聞こえるザックの声は震えている。そして、それを聞くグランの目にも涙が浮かんでいた。

「俺は……俺のせいで!みんな、家族も友達も、全員死んだ!」

唇を震わせながらグランは声を荒らげるが、そこには悲しみや後悔といった感情が明らかに含まれていた。

「俺なら全員を逃がせた……俺があの時、ちゃんと未来を見てたらライはあんな光景を目にしなくて済んだ……俺のせいなんだ。俺がやらなきゃダメなんだ、これは俺の運命なんだ」
『違う!……なんで分からないんだ!誰もお前を責めちゃいない。むしろお前がいてくれたおかげで俺たちは生きている。感謝してるんだ。もう、許されていいんだよ。お前が背負うことは無いんだ』

ザックの優しい、掠れそうな声がグランに膝をつかせる。

「俺は、俺は許されていいのか?」
『ああ、みんなで償おう……許されないことをしたんだ、一生をかけても足りないけれど』
「そう……だな」

もうそこに人間への復讐心に燃えるグランは居なかった。
ただ、強く優しい兄貴分の男が目を瞑っていた。

そして、3分が経った。

「ありがとう」

グランは目を瞑ったままそう言って、背後から洗われたプロ子の攻撃を受け入れた。

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