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第二章
紫陽花1
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降り立った吉祥寺駅南口は郊外の様相を呈していながらも、十分に都会だった。俺やゲンキくんが住む島よりも当たり前だがずっとずっと都会で、またそういった場所から離れていた俺にとってはくらくらするほどの都会。
勝手知ったるゲンキくんを少しだけ追う形で、だがかろうじて横並びの位置は逸せず歩く。紫陽花が見頃を迎えた梅雨時だが、今朝まで降っていたという雨は、運よく午後の今は上がっている。
吉祥寺通りをゲンキくんに続いて南下し、左手に折れると井の頭公園の入り口に到達した。
「ここからちょっとだけ車椅子押しますね」
「うん。お願いします」
見るからにきつい勾配。俺はハンドリムから両手を離して、素直にゲンキくんに頼る。だが勾配がきつい以外には、よく整備された気持ちのよい公園だ。
ほどなくして池が見えてくる。そして俺が単独でも歩きやすい遊歩道になった。再びゲンキくんが俺の横に並ぶ。
「ここが井の頭池。ボートとかもあるんですよ」
「……俺、乗れないよね」
とっくにあきらめていたはずなのに。だが、いざ池を目にしてボートと言われると興味がわくのが人情だ。
「僕がおんぶしましょうか?」
「いや、いいよ。紫陽花を撮りに来たんだし」
やはり俺には写真だ。さっきからちらほらと見かける紫陽花が見事で、早く撮りたくてうずうずしている。
そんな俺に、ゲンキくんはふっと笑う。
「ここのボートに乗ったら失恋するから、乗らなくて正解です」
「じゃあ乗らない方がいいな。ゲンキくんとの縁を大事にしたいし」
「真也さん、嬉しいこと言ってくれますね!」
バシッと肩をたたかれた。スキンシップを嬉しく感じた俺は、仕返しにゲンキくんの尻をたたいておいた。
「ここからは、真也さんの好きなところに行ってください」
「えっ?」
「僕はもう、見たいところ見終わったから」
それならばと紫陽花の撮影スポットをゲンキくんに教えてもらい、遊歩道を進む。
降り立った吉祥寺駅南口は郊外の様相を呈していながらも、十分に都会だった。俺やゲンキくんが住む島よりも当たり前だがずっとずっと都会で、またそういった場所から離れていた俺にとってはくらくらするほどの都会。
勝手知ったるゲンキくんを少しだけ追う形で、だがかろうじて横並びの位置は逸せず歩く。紫陽花が見頃を迎えた梅雨時だが、今朝まで降っていたという雨は、運よく午後の今は上がっている。
吉祥寺通りをゲンキくんに続いて南下し、左手に折れると井の頭公園の入り口に到達した。
「ここからちょっとだけ車椅子押しますね」
「うん。お願いします」
見るからにきつい勾配。俺はハンドリムから両手を離して、素直にゲンキくんに頼る。だが勾配がきつい以外には、よく整備された気持ちのよい公園だ。
ほどなくして池が見えてくる。そして俺が単独でも歩きやすい遊歩道になった。再びゲンキくんが俺の横に並ぶ。
「ここが井の頭池。ボートとかもあるんですよ」
「……俺、乗れないよね」
とっくにあきらめていたはずなのに。だが、いざ池を目にしてボートと言われると興味がわくのが人情だ。
「僕がおんぶしましょうか?」
「いや、いいよ。紫陽花を撮りに来たんだし」
やはり俺には写真だ。さっきからちらほらと見かける紫陽花が見事で、早く撮りたくてうずうずしている。
そんな俺に、ゲンキくんはふっと笑う。
「ここのボートに乗ったら失恋するから、乗らなくて正解です」
「じゃあ乗らない方がいいな。ゲンキくんとの縁を大事にしたいし」
「真也さん、嬉しいこと言ってくれますね!」
バシッと肩をたたかれた。スキンシップを嬉しく感じた俺は、仕返しにゲンキくんの尻をたたいておいた。
「ここからは、真也さんの好きなところに行ってください」
「えっ?」
「僕はもう、見たいところ見終わったから」
それならばと紫陽花の撮影スポットをゲンキくんに教えてもらい、遊歩道を進む。
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