オッサン勇者

一色瑠䒾

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第 三 話

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 私は大凡50体ものドラゴントゥースウォーリアに囲まれていた。流石、レベル100以上のモンスターは進撃速度も異常で自分の無力さを痛感していました。
 唯一の対抗武器であるドラゴンスレイヤーは限られた熟練プレイヤーにしか手にしてはおらず、当然、レベル5の私には手にする資格さえありませんし、戦う術が全くありません。

 今日は日が悪かったと、ギルド仲間の戦士レッドアックスさんに教えていただいた、ログアウトクエスト離脱技を試してみる事にしました。この小技は単純で意図的に回線落ちして、VRMMOゲームサーバーへ自動セーブを強制的にさせずに、ログインした状態に巻き戻って始めるというものです。

 私は直ぐさまメニュー画面を開き、ログアウトの項目に目をやりました。

「 あれ?無い? 」

 私は齢50ですが、ログアウトの文字と位置くらいは覚えていますよ。開いたメニュー画面から、右下の端にあるソレが奇麗さっぱり無くなっていました。聞いた話では戦闘中やクエスト中でも可能だった筈です。

「 おっさん!大丈夫か? 」

 運悪くログインしてしまったのか、ギルド仲間の精霊使いリドさんが個人チャットしてきました。『 おっさん 』は私のキャラクター名です。

「 あぁ、リドさん!これは不味いですよ。ログアウトすら出来ません! 」
「 おっさんもか! 今ギルドメンバーの2人がドラゴントゥースウォーリアにやられてキャラ自体が消滅した!」
「 消滅?というと 」
「 キャラステータスの表示がデッドなんかじゃない!アカウント自体が抹消されているんだ!」
「 教会からの復活が出来ないと? 」
「 あぁ、文字通りの完全な死だ!おっさんはレベル10以下だったよな? 」
「 はい。そうです 」
「 なら、初心者救済処置が効いているはず。上位モンスターは見向きもしないはずだ! 攻撃せずにそして、動かずやり過ごせ!」
「 わかりました! 」

 たしかに私を囲んだドラゴントゥースウォーリアはそれ以上の行動を見せず、私の横を過ぎ去って行きました。

 私はメニュー画面から発生クエストの詳細を再び見た。

〈緊急クエスト〉
『 闇魔王軍襲来!勇者殲滅す 』
 ・ワールドマップ内の全勇者死亡でクエストクローズ(3257/4783)
 ・ドラゴントゥースウォーリアの討伐(011/200)

 勇者の数がかなり減っていました。リドさんの話が本当ならこの数分で3000を超える勇者が亡くなっている事になる。こんな時にギルドメンバーに頂いたレア武器さえレベル制限で使いこなす事が出来ないとは、何とも心苦しくこの役立たずな事か。現実世界で失態を犯した部下に浴びせた『 役立たず 』のワードが今のこの最弱な自分に重くのし掛かっていた。

 再び個人チャットが入った。黒魔術師ノアさんからだった。私は初エントリーで最初に知り合った彼女の支援のおかげで、操作方法からこの世界の知識を得、そして、尻込みしていたギルドの加入も容易に済み、ギルドの仲間と楽しく遊んで来れたのだった。

「 おつさん!今まで愉しかったです。ありがとう 」
「 ノアさん何をおっしゃる? 」
「 おつさん、私のMPとHPもあと僅か。どうか、レベル10以下の救済処置を大事に使ってください 」
「 そんな、私はまだ、ノアさんにお礼も何も出来ていないじゃないですか! 」

 私はメニュー画面から、ワールドマップを展開させた。私とノアさん、そしてリドさんらの場所と距離を把握した。マップに表示された2人のアイコンにマーキンングすると、アイテムリストからウエルカムキャンペーンで得た転移アイテム『 旅人のもとへ 』を使用した。羽根が頭上に上がると足元に集まる光が全身を包み込んだ。

「 いいんです。私はもう・・・既にそれ以上の事をおつさんにして頂きました 」
「 何を言って?私は何も・・・ 」
「 この役立たずの言葉には少々傷付きましたが・・・」
「 お、小野田さん・・・なのか? 」
「 はい・・・仕事で失敗した私にチャンスをくださり、私の案件を最後までさせていただきました。罵ったのは私に喝を入れてくださったのだと分かってましたし、私の知らない所でのご配慮、優しく見守ってくださっていたのも知ってます 」

 私は転移アイテムでリドさんの前に現れた。

「 おっさん!それ、貴重なアイテムだろ? 」
「 何言ってるんですか、こんな時だから使うんですよ! 」

 私はアイテムリストからレアアイテム『 天使の翼 』を使用した。私の背から大きな翼が生えると次第に体が宙に浮く。リドさんを抱え、なるべく高台へと避難させた。再びアイテムリストから転移アイテム『 旅人のもとへ 』を使用した。

「 おつさん、もう無理しなくていいんですよ。ゲームなんだから 」

 私はこのVRゲームを起動した時、あの時のいつもと違う色のロゴマークに只ならぬ危機感を感じていた。

「 ノアさん、私はまだこの世界で君と楽しみたいんだ! 」
「 おつさん・・・ 」

 私は転移アイテムでノアさんの前に現れた。が、ドラゴントゥースウォーリアは今にもツーハンデッドソードをノアさんに振り下ろす寸前だった。

「 ノアさん! 」

 私は思わずスピードダガーを投げつけていた。剣を振り下げる寸前のドラゴンズトゥースウォーリアに見事命中はしたがダメージは全く与えられない。逆に私への敵視状態がブルーからレッドに変わっていた。

「 そんな、おつさん! 」

 ドラゴンズトゥースウォーリアの軍勢は私に一目散に向かって来た。

 目の前まで迫り薙ぎ払った剣が私の腕を軽くかすめた。一瞬でHPが4分の3を削り取っていった。

 私は焦りながら、アイテムリストからウエルカムキャンペーンで得た初心者救済特殊アイテム『 全ステータス能力値一定時間10倍 』と更に『 大地の神の裁き 』をダメ元で使用した。

 アイテムのアイコンが消失すると、直ぐ極大魔法の効果が発動し、ワールドマップを包み込む程の巨大な魔法陣が現れた。地面が揺らぎ始め、そして地が盛り上がり裂ていく。出来たクレバスの隙間へふるいを掛けるように大地を揺さぶり、スカル等が次々と地獄へ還るように飲まれていった。

 私は切られた時のダメージの他、剣に付与された毒の連続ダメージで瀕死の状態でした。更に運悪く浅い水辺の上に倒れ込んでいました。たかが浅い水辺ですが地形ダメージと言うものがあるのです。この場合、酸欠で溺れていると判断されるのです。

 動けない私はメニュー画面から発生クエストの詳細を確認する。

〈緊急クエスト〉
『 闇魔王軍襲来!勇者殲滅す 』
 ・ワールドマップ内の全勇者死亡でクエストクローズ(4557/4783)
 ・ドラゴントゥースウォーリアの討伐(200/200)clear!

 ドラゴンズトゥースウォーリアから逃れたノアさんが走って来るのが薄っすらと見えましたが、私の視界はもう、真っ暗に近く痛覚も遮断されているようでした。駆け寄るノアさんの声も・・・私はたったレベル5でも親身になってくれた仲間を救えただけで、とても満足していました。

 現実世界で対人恐怖症だった小野田さんにちゃんとしたお礼と傷つけてしまった謝罪を・・しなくては・・・ね・・・。

「 もう・・少しだけ、皆んなと冒険がしたかったな・・・ 」

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