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第 六 話
しおりを挟む私のステータスにある表示レベル数が、先程までシステム上の上限であった、100を軽快に超えていく。
自分自身で上限解除をしたのだから、大凡の見当は付いていたが、
しかし、今度のレベルアップ音は全く無く、徐々に150レベルに迫り上がっていた。
無音で上がる数値表示がなんだか、ガソリンスタンドでの給油時のメータのそれと同じ様に思えた。
事の重大性は増してきたが、この無音がまるで嵐の前の静けさそのもので、
先程とは全く別の恐怖心でしかなかった。
レベルは200で一旦止まると、再び『 上限解除 』のダイアログが表示されていた。
リドさんがパーティーステータスにある私の異常なレベルに気が付き反応した。
「 おっさん! レベルが200になってるぞ! 」
「 はい、2度目の上限解除の表示が出ていて、今、正直戸惑っています 」
リアさんも有り得ないレベル領域に目を輝かせていた。
「 おつさん、あの最恐で最悪の高レベルモンスターに立ち向かって勝利したのだから、きっと神様のご褒美なんだと思いますよ! 」
「 そうだぜ! おっさん! 遠慮せずレベルを上げちまえよ! 」
私は二人の後押しもあってか、恐怖心を余所目に2度目の上限解除のボタンをすんなり押していた。
上限解除された瞬間、私の視野モニターのデザインがガラリと変わった。
私はデザイン関係の仕事をしてきた訳では無いので、絵心やセンスが全く無いのですが、
例えるなら、よく、ヒーローが最終回寸前で、ラスボスの強敵を前に絶体絶命と言うその時に
メタモルフォーゼをし、強敵を上回る新能力を手中にする場面の様に感じていた。
上限を解除された私のレベルは一気に276まで上がり、そして止まっていた。
最後に記されたログには赤色で ~ Welcome tothe real world ~ と、
種族は『 神の子 』とされ、職業は『 オーバーロード -Overlord-【大君主】』となっていた。
「 おっさん! それが最終的なレベルか? 」
「 はい、リドさん。その様です 」
「 こいつは嘘みたいなレベルの高さだよな。今ならあのドラゴントゥースウォーリア相手でも、素手で倒せるんじゃ無いか? 」
「 ははは、リドさん。試してみたい気持ちはありますが、このVRMMOゲーム自体まだ、素人同然ですので、普通にクエストを楽しみたいと思っていますよ。それにまだ、先程の戦闘の恐怖は拭えていませんよ 」
「 だよな。このログアウトが出来ない異常な危機感のある今は、なるべく情報収集して状況を把握したい所だしな 」
リドさんはギルドチャットに切り替えて、ギルド仲間の生存を確認し始めた。
それにしても、流石、最先端技術で作られたVRMMOの高画質映像だ。リアさんの涙の痕がまだ残っていた。
「 ん? おつさん? 」
「 リアさんの頬に…その…涙の痕が… 」
「 あ…。み、見ないでください 」
リアさんはマジマジと見入ってしまった私から、恥ずかしさの余り背を向けてしまった。
「 すみません 」
「 いえ…。ただ、あの時は、おつさんが本当に死んで居なくなってしまう様でしたから… 」
「 すみません… 」
確かに敵からのダメージは視覚効果と振動の筈だったが、今回のログイン以降のダメージにはそれが一切無く、先程の戦闘でも腕を刀でかすめた切り傷もリアルな痛みを伴っていた。
それに地形ダメージも呼吸に負荷が掛かって苦しかったのを私は思い出していた。
気を失っていた時も現実世界のベッドから目覚める事もなく、ただ闇の中を彷徨っていた私は、
あの時、体力をゼロにして命を落としていたら、実際の所、本当に死んでいたんじゃ無いかと思えてならなかった。
そんな難しい顔をしていたのか、話題を変えようとリアさんはカミングアウトをする。
「 おつさん、実は命を救っていただいたの、これで2度目なんですよ 」
「 え?? リアさん、それはまた大袈裟な 」
「 大袈裟じゃありませんよ。わたしはあの時の恩返しをしたくて、おつさんの居るあの会社に入社したんです 」
「 そう、なんですか? でも、私は過去にそんな大それた事をした記憶が無い… 」
いや、私はある時、事故をした際、それ以前の記憶を全て無くしている。
もしかしたら、消えた記憶の中にリアさんとの接点があったかも知れないが、
人の命を救える程の器は私には無いと思っていた。
「 おつさん、信じては貰えないかも知れませんが、『 異世界 』で1度、私は命を救っていただいています 」
「 えっ?? なに?異世界? 」
「 はい。わたしは異世界で勇者に命を狙われ、そして、わたしを庇って瀕死の深手を負ってしまった、おつさんを死の淵から救い出す為、苦肉の策で2人異世界転移をしました 」
「 私はその勇者にやられて異世界転移を?? 」
「 そうです。その『 異世界 』から見ての異世界があの『 現実世界 』であるブレーン企画会社に勤める私、小野田未幸であり、おつさん、上司である畑山冬獅郎さんなのです 」
「 私は…現実世界に来た事によって命を繋ぎ止めた…のか? 」
私はリアさんからの現実離れしたカミングアウトが満更嘘では無いと思えていた。それは、小学生3年の頃に遊んでいたRPGの記憶も今思えば、そんな昔の技術で今現在遊んでいるVRMMOの様なリアルなモノは無理だと思った。
その記憶は『 異世界 』での幼少期に実際に経験していたものかも知れない。
何故なら現実世界での事故以前の記憶はハッキリしていなかったからだ。
現実世界での記憶は失った訳でなく、それ以前に存在すらしていなかったと言う事だ。
たまたま『 現実世界 』の幼少期の記憶が甦ったと錯覚したのだ。
私は自分自身何者なのか、そして、このVRMMOの世界に閉じ込められた事の理由が、他にある気がしてならなかった。
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