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第2章 回復薬(1)

#15 新しい回復薬

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 濃縮した回復薬がこれまでに無い価格破壊を起こせるかもしれないということで様々な検証を行ったのだが、実はスキルレベルが高くないと作れないことが分かった。コスタにつくってもらっても濃度を高めることが出来なかったのだ。
 スキルレベルが低い人が工夫しても作れないし、スキルレベルが高くなるぐらい回復薬を作ってきた人であればこれまでの作り方を変えようとはしないので、今までこの製法が見つかっていなかったのだろう。
 さらに濃縮した回復薬のエキスは乾燥させても効能を失わないことがわかり、粉末タイプの回復薬という今までに無いものが出来上がった。

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 粉末タイプの回復薬を見せるために、アダムスに作業場に来てもらった。

「アダムスさん見てください。これが新しい回復薬です!」

「これが回復薬ですか……これまでと随分と違いますね。本当に効能はあるのですか?」

「ええ、もちろんです。コスタに確かめてもらったので間違いありません」

「そうですか。それでソーラスはどこに?」

「それは……」

「また外出ですか……。腕は確かなのに彼女にも困ったものですね」

 そこにソーラスが帰ってくる。

「あらぁ? アダムスさんが来るなんて珍しい。どったの?」

「ちょっとソーラスさん、酔ってるんですか? いやなにハヤトさんが新しい回復薬を作ったというから見せてもらいに来たんだよ。君も確かめてみてくれ」

「むむむ、これが回復薬ですかぁ?」

 じっと粉上の回復薬を見つめていたソーラスだったが、いきなり服用する。

「ちょ、それ普通の回復薬10本分の量ですよ!?」

 あわててハヤトが止めようとするも全てを飲んでしまう。

「ふぁー。あれ? 二日酔いの体が嘘のように軽いですよ!」

「ちょっと回復薬を酔いざましに使わないでくださいよ、勿体無い。でも普通の回復薬でそんな効果ありましたか?」

「いやないよ。これは確かに私の回復薬より凄いかも……」

「しかも聖水の使用量を減らせるから、普通の回復薬と同じ効き目を得るために掛かる費用は低くすむんですよ!」

 今後はソーラスにメインでつくって貰うことになるので作製方法を教えた。

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「そっかぁ、そんな単純な方法で出来るんだね。駆け出しの頃は色々と試したけど、出来ないものと思ってたから今では試さなくなっちってたからね」

「でもこれは製品として売れますよね?」

「そうだね。でも粉である必要はないから、ここに色々加えて丸薬にしちゃおうか」

「いいですねそれ!」

 新しい発見に心を踊らせたのか、回復薬でやる気まで出てきたのかは分からないが、やる気に満ち溢れたソーラスと製品として売りやすい形に仕上げていった。
 すると丸薬タイプにすることで、薬草の苦味が包まれて服用時に感じなくなるというオマケ効果まで分かった。

「これで完成ですね!」

「ええこれは間違いなく売れるわよ。……ありがとう」

「ええ!? なんでいきなり感謝してくるんですか?」

「いやなんだか若い頃はにいろいろと試して失敗してきた自分が報われた気がしてね。うん、本当にありがとう」

 また抱き締められて息が出来なくなるので腕をタップするが、そんな日常を楽しみながら薬師としての最後の1日を終えた。

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 新しい丸薬タイプの回復薬は値段の安さと効き目の良さから、瞬く間に世間に広まっていったのだが、生産体制を整えるために人を雇う必用があったので、ラーカス商会の赤字を直ぐに解消するまでには至らなかった。
 そして言わずもがな、コスタはスリスリ地獄から解放されるどころか今まで以上にスリスリさせられているらしい。それでも給料は上がったりで、なんだかんだソーラスと上手くやっているみたいだ。

 余談だが、粉上の回復薬を一気に摂取するとある方面でも凄い効き目があるらしく、夜の町で爆発的な人気が出たそうだ。


 こうしてハヤトの薬師としての仕事は成功に終わったのだが、魔道具製作に戻れるほど商会に余裕はまだない。なのでまた新たな仕事につくことになるのであった。

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表―――――――――――――――――――
名前:[サトウハヤト]
ランク:[G]
称号:[初心者冒険者]
所属:[リンクス]
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裏―――――――――――――――――――
ステータス
状態:[異常無し]
能力:[体力E][魔力―]
スキル:[職人の心得EX][解体B][加工B][錬金B][薬草鑑定E]
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