上 下
26 / 32

第19話 ギルドの策略?

しおりを挟む

 ポーション販売が再びギルドでしか行われていない現状から、不正が行われているのではないか確かめるためにギルドに向かった。
 けれども何処にも不正が行われている証拠はないし、ポーションの価格もこれまで通りだ。
 しかし何かしらの施策が取られなければ、独占的に販売することなど出来るはずがない。
 その真相を確かめるべく、とりあえず受付嬢に聞いてみることにした。

「おはようございます、ミーアさん」
「あら? エリスさん、どうかなされたのですか?」

 ポーションの買取をして貰わなくなったので、ギルドに来るのは久しぶりだ。
 軽く挨拶を済ませてから本題に移る。

「……何かギルドで、ポーション販売に関して変更を行ってはいませんか?」

 私がポーションと口に出すとミーアさんは、一瞬だけ顔が強ばった。
 しかし直ぐにいつもの笑顔を取り戻し答えてくれる。

「いえ、ギルドではいつも通りにポーションを販売しています。もしもエリスさんがポーション販売に苦戦しているようでしたら、ギルドではいつでも買取を行っていますよ」
「そう、ですか……いえ、変なことを尋ねてスミマセンでした。また機会がありましたらお願いしますね」

 社交辞令でそう口にするのだけれども自分で売ったら手元に五枚の銀貨が手に入るのに、ギルドに買取って貰ったら銀貨2枚にしかならない。
 その差額は余りにも大きいし、事業として続けていくためには死活問題でもある。
 何とか今まで通り自分たちで売れるようにしなければいけないのだけれども、ギルドが独占販売を出来ている理由が分からなければ対策のしようが無い。

「ラインハルト、一つ頼まれごとをしてくれる?」
「はい、何なりと」
「……他の薬師にもギルドに聞いても駄目なら、後はポーションを買っている冒険者に聞くべきだと思うの」

 薬師としてギルドに探りを入れても分からないのであれば、冒険者としてラインハルトがギルドに探りをいれることで何かが判明するかもしれない。

「分かった。それならば実際に依頼も受けてみるよ。その方がハッキリすると思うからね。少し時間が掛かると思うけどいいかい?」
「うん……でも、怪我だけはしないようにね。フェリ君も連れていっていいから」

 こうしてラインハルトが潜入調査をして結果が出るまで、私に手助け出来ることはない。

「……掃除でもしてよっか」
「はい、そうですね」

 丸々一日が経過し、時間を持て余して始めた掃除も磨いていない所が見当たらなくなった頃、ようやくラインハルトが調査を終えて戻ってきた。

「どうだったの?」
「やはり、ギルドが仕掛けていたみたいだ……」

 ラインハルトの調査結果によると、公の発表がなされているわけではないがギルドでポーションを買うことで初めて、正常な依頼を回してくれるようになってしまっているらしい。
 掲示されている依頼はどれも割りに合わない依頼ばかりで、受付で販売するようになったポーションを購入したら代わりに適した依頼を教えてもらえるそうだ。

「そんなことをしたら、ギルドでポーションを買うに決まってるじゃない!」

 冒険者にとって適した依頼を受注できないことは死活問題だ。
 購入が受注の条件なら多少の値段の違いなど関係なく、ギルドでポーションを買うに決まっている。

「ああ、その通りだ。だがギルドとして必ずしも違反行為をしている訳ではないから、そのことを取り締まることは出来ないかもしれない」
「えっ……どうしてなの?」
「元より全ての依頼が掲示されている訳ではないし、適切な依頼を冒険者に斡旋するのもギルドの仕事なんだ。ポーションを購入した冒険者にしか教えないのは良くないことだけど、それだけで取り締まることは難しいと思う」
「そんな……」

 それはギルドが本来果たさなければならない、公平に依頼を仲介するという役割を放棄し悪用した方法だ。
 たとえ規則違反でないとしても独占的な立場を利用したその方法を取られると、弱い立場の冒険者や薬師は泣き寝入りするしかなくなる。
 せっかく制度が変わったのに幾ら薬師がポーションを販売し続けても、消費者が選べないなら意味がない。

「エリスはどうしたい? このまま諦めるのかい?」

 私がただの薬師だとしたら、その選択肢以外は用意されていないだろう。
 けれども私は侯爵家の令嬢という別の顔がある。

「私は諦めたくない……ううん、諦めたら駄目だと思う。反則だと思われるかもしれないけどギルドがそれを厭わないんのなら、私も持っている力を使わせて貰うわ」
しおりを挟む

処理中です...