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#0 プロローグ
しおりを挟む魔王ディアボロは人間の愚かさに辟易をしていた。
それは自らの利益しか考えず、幾度と無く侵略を繰り返し争いを続ける人族にだ。
かつて雄大な自然を誇った土地は開墾され、今では緑が無い土地になっている。
「アモンよ。どうすれば人族の暴挙を止められると思う?」
ディアボロは配下のアモンに質問をする。
「愚かな人族など、反抗してきた時点で滅ぼしてしまえば宜しいのでは?」
「いや、それは余りにも極端過ぎるだろう。他に案はないのか?」
「そうですか。私的には名案だと思うのですが……そうですね……では人族の姫を人質として魔王城に迎えるというのは如何ですかな?」
「人質だと?」
「ええ、人族も姫という人質がいれば手出しが難しくなりましょうて」
アモンの提案にディアボロは思案する。
「だが逆に人族より更なる反発が起こる可能性もあるのでは?」
「そうなってしまえば、見せしめに人質を処刑すれば良いのです。口で理解出来ぬ者共に、こちらが譲歩し続けるべきではありませんぞ」
「そうか……少し考えてみよう……」
どちらかと言えば、穏健派であるディアボロに対して臣下のアモンは過激派である。
しかし古来より由緒正しき魔族の中には、魔法が使える魔族こそが至高であり、魔法を使えぬ人族は劣等民族であるという考えが根付いている
──後日。
アモンの進めもあって人族の王城を魔法で除き見るディアボロ。
「なっ……」
そこには腰ほどまでに長い髪をたなびかせながらも凜とした佇まいで、他とは明らかに違う雰囲気を纏った女性がいた。
そう、それこそが人族の王女なのである。
「アモン!」
ディアボロは慌てて王座にアモンを呼び出す。
「どうかされましたか、魔王様?」
「私は御主の提案を実行しようと思う」
「はい?」
「だから人族の王女を我が魔王城に連れてくるのだ!」
アモンはまさか穏健派である魔王ディアボロが、そのような事を言い出すとは思わずに驚きの声を上げる。
しかし遂に人族との融和政策から転換なされるのか、と思い喜び賛同する。
「そうですか、魔王様。それでしたら、不肖ながら私目がその役目を──」
アモンが自らが敵陣に乗り込み人族の姫を捕らえてくると進言しようとする。
しかし、魔王はその進言を遮るように。
「それはならん! 私が直接出向かなくてはならないのだ!!」
敵陣に大将をむざむざと送り込む危険を犯す必要などないので、アモンは慌てて止めに掛かる。
「なりません、魔王様! そのような危険を犯すなど御身にもしものことがあったならば、取り返しのつかないことになります!!」
「……なんだ、アモン。御主は我が人族に遅れを取るとでも申すのか?」
ディアボロはここは譲れぬと、凄みアモンに迫る。
「いえ、そのようなことは決して……」
「では、決まりだな。私は直ぐに向かう。御主らは姫を丁重に迎え入れる準備をするのだ!」
「はは!」
こうして魔王ディアボロは心に秘めたる思いを抱えながら、人族の姫を拐うべく行動に移すのであった。
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