【完結】騎士団でいつの間にか外堀埋められ陥落した話+その後の話

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陥落したその後の話

3.水端

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 仕えてくれてから期間は短いが主従関係は良好で、俺に対する気遣いも完璧だ。働きぶりから垣間見える性格は、明るく何事も前向きなヘレナと、穏やかではあるがなかなかに厳しいエルザ。
 夕食ののち、少しの休憩を挟んで湯浴みになったが、ヘレナとエルザにはこれまでにない入念さで磨かれた。カサついた俺の肌は水を弾くまでに潤い、レオンの好みだという香油を塗りたくられ、顔まで丁寧に仕上げてくれた。令嬢でもないのに、と内心で零していたことは内緒だ。

 そして──

 侍女たちはわかっていたのだろうか。丹念に磨き上げた結果、どうなるかということを。

「いい匂い……美味しそうで、食べたくなる」

 耳の裏へ顔を寄せたレオンに、スンッと匂いを嗅がれる。香油のことだとわかっているのに、俺自身になぞらえた気がして気持ちが揺れる。尖らせた舌先で首筋を舐められ、やわらかい場所を痛いくらいキツく吸われた。

「……い、っ」

 身を捩っても逃げることはできない。寝台の上へ腰掛けたレオンに誘われて、彼の膝上にいた。左腕の中に囲われてしまえば抜け出すことは不可能だ。

「肌がいつもより艷やかだし、ずっと触っていたいなぁ……もっとアルのこと味わっていい?」

 わざわざ俺の了承など得ないでほしい。理性が働くうちはとてもじゃないが諾など言えない。声にするのは躊躇われ、どう返せばいいのかわからず、レオンの首へ回して俺も求めていることを伝えた。
 レオンから香る石鹸と彼自身の匂いがふわりと鼻孔をくすぐる。今では落ち着くことのできる好きな匂い。深く吸えば身体の中へ拡がっていく。
『レオン……』と彼の名を口にしたことが合図みたいに、俺の身体は寝台へゆっくり押し倒された。

「ふっ、んん、……っ」

 反応をうかがうように幾度も唇を啄まれ、触れるだけだったキスが次第に深くなる。隙間から侵入してきたレオンの舌は我が物顔で動き始めた。
 口蓋を舐め、舌を絡めてくる。同じように返しているつもりがレオンの舌は巧みで、俺の意識はどんどん奪われていった。

「ん……んん、っ……っ」

 くちゅりと音がした。身体でも下肢でもなく、口腔という狭いところを撫でられているだけなのに感じてしまう。あちらこちらを探りながら俺の反応を試しているようだった。

 自然に溜まっていく唾液を飲み下し、息苦しさに少しできた隙間から空気を吸おうとする。自分でしたことなのに離れた分の距離が寂しくて、れろっと舌先が震えた。

「アル」
「はっ、ふ、……っん」

 ぎゅっと腕に力を込めレオンを引き寄せる。息すらままならなくなるというのに、それでも一層くっついて伝わる体温に安心した。
 何がしたいのか、自分自身に呆れながらこのまま溺れてもいいと、どこか本気で思っている。いつでも冷静な判断をできる自負があったのに、存外、レオンに対して安直に求める自分が嫌いじゃなかった。

「ふっ、はぁ…っ」

 蹂躙から解放された頃には閉じていた瞼が重く、どうにか半分持ち上げる。浮いているようで鈍くなった思考のまま、間近にあるレオンを見上げた。

「甘くて美味しいよ……アル」

 レオンは陶然たる面持ちなのに、瞳にはどこか獰猛な気配を携えていた。俺ばかりが酔いしれているわけじゃない。欲が滲み出ていた。ちゃんとレオンにも火が灯っている。それなら。

「俺をあげる、から……もっと溺れて」
「そんなこと言ったら、どうなるかわかってる?」

 そうは言っても酷いことなんてされたことがない。翌日、怠くはなるが乱暴に扱われたことなんてなかった。あまり思い出したくはない痴態を晒したとて、深く求められたことに嫌悪はない。

「レオンなら、いい……俺を、好きにすればいい……」

 だから早く、燻り始めた熱をどうにかしてほしかった。
 レオンに抱かれるまで特に役目のなかった胸の飾りは、触られると下半身へ響くようになってしまった。夜着の合わせはいつの間にかはだけ、そこから手が忍び込む。
 目許へ落とされた口付けで俺は再び瞳を閉じた。仮にも騎士だというのに警戒心のなさがおかしい。それでも、自分の身に与えられるすべてを甘受するためレオンに身を預けた。



 顔も首筋にも唇で触れられ、そこかしこにレオンの温もりが移される。同時に摘まれた胸の尖りを愛撫された。擦っては捏ねられ、くすぐったい刺激を繰り返される。
 俺の右側にレオン自身を支える左腕が置かれているから、利き手でしつこく胸を攻められた。

「あっ、や……っ」
「いや?」
「同じ、とこばっか、り……」
「ごめんね、こっちも?」

 レオンの声音は楽しんでいるそれで、謝る言葉とは裏腹にちっとも謝罪の気持ちなんかなさそうだ。弄られていなかった右胸の尖りを指の腹で擦られると、俺の肩は大げさなくらいビクッと跳ねた。

「反応していやらしい……もっとしてあげる」

 俺を見下ろしていたレオンが身体の位置をずらし、金色の髪を揺らした。その髪が近づいたかと思うとレオンの口腔に胸の先を含まれ、舌先で転がされた。

「う、ぁ、っ、……はっ、ぁ」

 尖らせた舌先でれろれろ弾かれ、円を描くような動きで周りを舐める。そうかと思えばじゅるっと強く吸われ、その緩急に翻弄されながら何度も嬲られた。

「尖ってきた……かわいいね、アル」

 胸元で言葉を発せられ、息すらが肌を撫でた。
 両側を同時に弄りまわされ、どうしようもない快感が下半身を震わせた。もぞもぞ下肢をすり合わせて誤魔化すが、先走りの液が滲んで衣類を濡らし不快感が募る。脱いでしまいたいが露わになれば顕著なそれを晒すことになる。

「……レオン、ぁ、んっ……」

 わかっているだろうに、レオンは直接触ることはせず、ただひたすら胸への愛撫を続けた。吸われ、舐められ、淫靡な音が途切れることなく耳まで届く。俺は与えられた刺激にのまれないよう、必死に意識を保った。
 肚の中に快感が溜まりじれったくなった頃、胸をぢゅうっと吸いながら反対側を痛いほどの強さで摘まれる。あまりに刺激が鋭すぎて、頭の芯が光ったような気がした。

「っ……んっ──ァっ!」

 高い嬌声が自分の発したものとは信じられなかった。と同時に、衣類の中で熱くなっていた分身が耐えきれずにドクッと吐き出した。まさか胸だけの愛撫で達したというのか?
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