【完結】騎士団でいつの間にか外堀埋められ陥落した話+その後の話

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陥落したその後の話

6.接触

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「アルフォンス様、魔術師のカミルです。お見知りおきのほど、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしく。アルフォンスで構わない」
「ありがとうございます。では遠慮なく……『漆黒のシュヴェルト』に会えるなんて感激ですっ 繊月のごとき美しさは噂通りなんですね! さすが統括団長の至宝っ……ふごっ」

 勢いよく話し始めたカミルの口を後ろから塞いだのはユリウス魔術師団長だった。繊細な外見の雰囲気とは違い、カミルの扱いは粗雑だ。随分と仲のよい間柄と見える。

 カミルの勢いがものすごいあまり、早口でところどころ聞き取れない言葉があった。漆黒のシュヴェルトとは何のことだろうか。シュヴェルト……常に剣帯してはいるが、名のある貴重なものでもなく一般的な剣を使用している。黒色の剣というわけでもない。ただ体型に合わせ軽い仕様ではあった。

 統括団長がどうしたと言っていたが話の途中でユリウス魔術師団長に遮られてしまい、何を言いかけたのかよくわからなかった。婚姻に関することは秘める必要はないと思っているから、カミルが知っていたところで気にはならない。

「お前は、まったく……ここに来たのは顔合わせと確認のためだろう? アルフォンスの性質を見極め、しっかり精査しておけ」

 口を塞がれたまま窘められ、カミルがコクコクと頷いた。反省しているかは別として、大人しくなったことがわかると、呆れながらユリウス魔術師団長がカミルの口から手を離した。

「ふはー 苦しいよ、ユリウス」

 カミルは『酷いなぁ』と言いながら、抱えていた資料や本、術式に関わるのであろう様々な書物が机の上にどさりと置かれた。

「アルフォンス、こちらの選別は後でいいからカミルに付き合ってくれ。頼りなく見えるがそれでも優秀な魔術師だ」
「わかりました」

 コンラート隊長は書き途中になっていた書面へ記入を済ませると机上に広げていた資料をまとめ、作業を切り上げた。ユリウス魔術師団長と話しておきたいことがあるそうで、俺たちから距離を取るためなのか、会議室の奥へ移動してしまった。

 俺は言われたとおりカミルへ向き合い、目的が何かも知らされないまま言葉の先を待った。が、じっと凝視され、無言のまま見られている。瞬きすらしないものだから、気まずくなり俺から声をかけた。

「……俺は何をすれば?」
「あ……あのですね、第二騎士団にいたときの……えっと、報告書があったはず、なんです……うーん、先日コンラート隊長から届いた、書類を、見たんですが」

 カミルは我に返ったように、机上へ置いた資料の中から何かを探しつつ、一人ふむふむと頷いていた。その横顔はさきほどまで見せていた様子とは違う、いわゆる魔術師の顔になっていた。
 どうやらカミルは没頭すると周りが見えなくなるようだ。たしか研究者に多いのではなかったか。俺が隣にいることすら忘れているのかもしれない。コンラート隊長を疑うつもりはもちろんなかったが、優秀だと言っていたのは間違いではなさそうだ。

「カミル?」
「これの次にこれの話……ついでにこれも」
「カミルッ」
「……あ? ……ああ、はい! そうでした。あのですね、剣捌きも見事なようですが何といいますか、えーっと、力の出し惜しみ? みたいな感じがしまして」
「いや、全力で戦っているつもりなんだけど……」
「あっ、もちろん手を抜いてるなんて思ってませんよ! 何と表現すればいいのか……価値に気づかず眠ったままと言えば近いかなぁ」

 わかるようなわからないような、カミルが感覚的に受け止めたことを上手く言葉で表せないことは理解できる。討伐の報告書に目を通していたところ、俺の何かに違和感があったのだろう。

「おそらく魔力をうまく魔法として発現できていないせいだと思うんでアルフォンスに合った術式を構築して付与するためには足りていないものが何なのか探る必要があって僕に見させてほしいからちょっと魔力出してください」

 言葉が途切れることなく一息で説明された。そして菓子でも強請るような仕草で手のひらを上に『はい』と差し出される。意味がわからなくて俺は動けずにいた。
 魔力というものは他人へ渡せるものではない。自分の中で湧き上がるものだ。魔力を元に生み出したものが火や氷にはなる。それは魔法が行使された結果であって、魔力そのものではない。
 カミルが出せというのは魔力を観察する意味合いだろうと思う。それにしても魔力をよこせと言われたのは初めてだ。カミルの雑な物言いに思わず苦笑がもれた。

 俺は右手に小さく魔力を纏わせ、カミルが差し出した手の上へそっと重ねた。
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